あせるシャルル
シャルルの部屋ではレスタークス暗殺の失敗の事後工作を図っていたが、
「軽率な事をされましたな。我らを責める良い口実になりますぞ」
シャルルに呼びだされたウインは苦虫をかみつぶしたような顔で苦言を呈す。
「兄上が何を言おうとしらをきればいい話だ。むしろ我らを嵌めるために自作自演をしたと主張すればよい。いや、その前にあの者たちがどこに囚われているか探し出し始末してしまえばよいのだ。三将軍のお前なら城のどこであろうと探せるであろう」
早口で答えるシャルルにはいつもの余裕はない。
シャルルは暗殺失敗の報告を受けてすぐさまエクセルに暗殺者達が囚われている場所を探させたのだが、わからなかったのだ。
次にウインを呼び寄せたのだが、暗殺計画自体を知らされていなかったウインはいい顔をしていない。
「まあまあ、ウイン殿。過ぎてしまったことは仕方ないことです。今は今後の対策をどうするかが肝心なのでは」
この暗殺計画に初めから関わっている(というよりも暗殺者は神聖近衛騎士団の団員から選ばれている事からわかるように首謀者の一人なのだが)エクセルが他人事のように言ってくるのでウインは怒りの矛先を変える。
「そもそも貴様はなぜ知っていながらお止めしなかったのだ!」
「そうは言われますがもし、仮にこの暗殺が成功していたらどうですか?犠牲も少なくよい作戦だったと思いませんか?結果だけを見て非難されるのはどうかとおもいますが」
激昂するウインにエクセルは減らず口をたたいてくる。
「・・・もう、よいわ!」
(手の付けられないバカだ!)
ウインはこれ以上このバカと話しても無駄とばかりにシャルルに向き直る。
「しかし、なぜ暗殺などをしようとされたのです。しかも、私に相談もなく」
「・・・あの捨て子から情報があったのだ。『レスタークスがろくな護衛も連れずに城下の祭りに繰り出すらしい』と。そして『この情報は戦争をしたがっているウインには言わない方がいい』と言われたのだよ」
シャルルは悔しそうに歯ぎしりをしている。ジュリアスの情報に踊らされていた自分が許せないようだ。
「見事にやられましたな。私に言ってくださっていれば確かに止めておりました。今後は何事もまずは私に相談してから事を起こすことを約束をしてくださいますな」
(ジュリアスに騙されていたといえ情けないことをされる)ウインはそう思ったが守役として今まで養育してきたシャルルがかわいいので、つい言葉が優しくなってしまう。
「約束すれば囚われた者がどこにいるのか探してくれるのか?」
ウインの怒りが収まったようだったのでシャルルはホッと一息ついている。
「それは別に約束をしなくても探しておきます。見つかるかどうかの保証はありませんが」
おそらくは見つからないだろう。ジュリアスの動きを見ていればかなりの準備をしているのがわかる。ウインが探ったところでわかるような所には隠していないだろう。
「み、見つからなければどうなる?」
見つからないと言われてシャルルはうたえる。ウインに頼めばなんとかなると思っていた。「自作自演と主張すればよい」などと強がりを言っていたが本音ではかなりまずいことになっているのを理解しているのだ。
しかし、そんなシャルルを慰めるようにウインは冷静に答える。
「落ち着いてください。おそらくレスタークス殿下は今回の事を公にする気はないでしょう。そのつもりなら既にそうしているでしょうからな」
暗殺事件から一週間たっている。これだけあれば証拠をそろえて糾弾するのは容易いだろう。していないのはする気がないのだ。
「暗殺者が誰の手の者かわかっていないのでは?今回の暗殺者として選んだ騎士たちは神聖近衛騎士団の中では身分の低い者たちですが、それだけに口の堅い者を選んでいますからね」
無視されている格好になっているエクセルが話に入ってくるが、ウインはあきれたようため息をつくと、
「誰の手の者かわかっていない?そんなことは問題ではないのだ。レスタークス殿下が暗殺者に狙われたという事実を公表されただけでも我らにとっては痛手なのだよ。少し考えればわかるだろう」
「・・・っく、しかし」
「エクセルそれくらいにしておけ。ウイン、今回の件が公になることはないのだな?」
何かを言いかけるエクセルを制してシャルルが確認する。
「まず大丈夫でしょう」
(しかし、なぜ公表しない?これもジュリアス殿の策なのか?なんにしても今後も注意しておくべきだ。それにシャルル殿下にも確認しておかなければならないことがある)
ウインの「大丈夫」の言葉にホッとしたような顔になるシャルルを見ながらウインは自分がこのためだけに来たわけではないことを思い出す。
「ところで以前シャルル殿下はジュリアス殿やラング卿が味方だと言われていましたが、今でもそう思われているのですかな?」
「・・・ジュリアスは敵だ。あやつは嘘の情報を持ってきて余を騙しおったのだからな」
シャルルの目に暗い怒りが宿る。
「では、ラング卿は敵ではないと?」
「敵ではないはずだ。弱きものには仕えないと言っていたのだ」
口の中でもごもごと呟くように言うシャルル。
ラングは若くしてリサリア王国最強の騎士と呼び声高く、剣の腕だけでなくその言動も質実剛健で真の騎士ならばこうあるべきと尊敬を集めている。
そんなラングに認められたいという気持ちがシャルルの中にあるのはウインにもわかるが、今は事実を告げる必要がある。
「はっきりいいますと、ラング卿は敵ですぞ。今回の暗殺を防いだのもラング卿ではありませんか。シャルル殿下、もはやレスタークス殿下を弱い者と侮るのはやめて頂きたい。今はまだまだ我らの方が勢力が上回っていますがそのような油断をしていると足元とすくわれまずぞ」
「・・・わかった。ウインよ。これからも頼むぞ」
「はい。このウインにできることはすべて致します」
シャルルは高慢だがウインに対しては素直なところがある。
そんな二人の様子をエクセルは面白くないといった顔で見るのだった。




