尋問①
城下町のはずれに目立ない建物がある。
一見、ただの倉庫に見えるがここは近衛騎士団が所有している物件の一つだ。
レスタークスは嫌がっていたのだが、ジュリアスが「いつか必要になるはずだから」と用意させておいたのだ。
そして今がその『必要』な時になっていた。
ここにはレスタークスを襲撃した6人の男が連れてこられている。
王宮の牢獄を使わずにここに連れてきたのは、レスタークスが公にするのを嫌がったのと口封じに殺されるのを防ぐためだ。
そのためこの場所に襲撃者たちが捕えらえていることを知っている人物はレスタークスを含めて限られていたので訪れる者は少ない。
その日、訪れたのは少し背の低い銀髪の少年、ジュリアスだ。
ジュリアスはクロエの追求から逃げるために「拷問しに行く」と言っていたが、実際に訪れたのはレスタークス襲撃事件から5日後の事だった。
「様子はどうかな?」
「変わりないですね。何も話しませんよ」
見張りの騎士はジュリアスに「お手上げですね」とポーズをとる。
「僕が変わろう。少し僕だけにしてくれないかな?」
「それは・・・。殿下から拷問はするなと言われていますので・・・」
レスタークスは尋問はしても拷問はするなと厳命しているのだ。
ジュリアスは首をすくめる。
「僕ってそんなに拷問が好きそうに見えるのかな?性癖はドMなんだけどなあ」
誰にもきかれていないのにさらっと自らの性癖を明かすジュリアスに騎士は若干引いている。
「いやいや、冗談だって。僕だって拷問なんかしないさ。ただ、ちょっと君たちとは違うやり方をするだけでね。そのためには僕と彼らだけにして欲しいんだ。君たちだって情報は手に入れたいだろう?」
騎士は少し悩んだようだったが、「わかりました。ただ、本当に拷問はしないでくださいよ」と許可して去っていく。レスタークスからは拷問をするなと言われているが、近衛騎士団の騎士としてはレスタークスの命を狙った者ならば拷問してでも吐かせたい気持ちがある。
自分はレスタークスの命令に逆らえないが、ジュリアスが情報を引き出してくれるならそれはそれでありがたいと思ったのだ。
(まったく、レックスらしいよね。拷問するなってさ)
ジュリアスは自分の命を狙った者にすら気にかけるレスタークスの甘さが歯がゆかったが、
(だからこそ僕っていう存在が必要になるんだけどね)
と決意を新たにすると、男たちが入れられている部屋のドアをあける。
そこには六人の男たちが両手両足に鎖をつけられており、さらに部屋の奥にその鎖がつながられているため行動範囲が限られている。
これならジュリアスが一人でいても襲い掛かることはさすがにできないだろう。
「やあやあ、ご苦労だったね」
ジュリアスは捕らえられた男たちに親し気に話しかけるが誰も答えない。
「大丈夫だよ。僕しかいないし、この部屋の防音は完ぺきだよ。君たちに拷問を加えてもその声が外に漏れないくらいだ。そんなことはしないけど・・・話しなよ」
ジュリアスが意味あり気に促すと、
「よくもおめおめと我らの前に姿を現せたな、ジュリアス」
襲撃犯の一人が捕らえられてから初めて口を開く。
それまでいかなる尋問にも何一つ話さなかったのにも関わらず、だ。
「何を怒っているのさ。僕はなにも悪いことなんてしていないじゃないか」
けろりとした顔でジュリアスはにやにや笑っている。
「貴様・・・!」
男たちは鎖がなければすぐにでも飛び掛かってきそうだった。




