好色王子
ジュリアスはラングの部下たちと後始末をしていたはずなのだが、いつの間にか野次馬に来ていた町娘にちょっかいをかけている。
「君かわいいね。どこに住んでるの?今度一緒に・・・」
クロエはずんずん進んでいき、「ちょっと失礼!」と町娘をじゃけんに追い払うとジュリアスの前に立ちはだかる。
「ジュリアス、あなたが私を護衛に選んだそうだけど、どうして?」
クロエの思いつめたような様子にジュリアスは露骨に嫌そうな顔する。
(ラングのやつだな。余計なことを・・・)
ジュリアスはそう思うがごまかすのは難しいように思えた。
「建前と本音、どっちが聞きたい?」
「建前をきくためなら、わざわざこうしてあなたに会いにこないわね」
「そりゃそうだ」
ジュリアスは肩をすくめるが、クロエの全く変わらない真剣な表情に観念する。
(どうして僕の周りにはこう融通の利かないやつが多いかね・・・)
「・・・わかったからそんな顔しないでよ。君を護衛に選んだ理由は二つ。
まず君は近衛騎士団に入って日が浅い。今回の作戦ではレックスがお祭りに遊びに行くことを『あきれた目で見る護衛』である必要があったからね。今の近衛騎士団員はみなレックスを慕っているし、祭りに行くといっても民の様子を見ることを兼ねていることを理解しているからそれなりの態度をとってしまう。演技ができればいいけど、レックスへの忠誠心が強すぎてそういう事には向かないんだよね。彼ら。
もう一つはこういえば怒るかもしれないが、君が女だからだ。レックスを襲う刺客側からしたら護衛は少なく、かつ弱くみえた方がいいからね。君一人を護衛につけることでより襲撃しやすい状況を作ったんだよ」
「つまり私が近衛騎士団の中でも弱い方だと思ったのね」
クロエの言葉には少しとげがあるがジュリアスは慌てず答える。
「それはちょっと違うかな。僕の見たところクロエは近衛騎士団の中では真ん中より少し上くらいの強さだよ」
これは掛け値なしにジュリアスの本音だろう。
(それでも真ん中くらい・・・か)クロエは軽くショックを受ける。
「大事なのは弱そうに見えることと、レックスへの忠誠心が低いことだからね。実際に弱い必要はないんだ。僕やラングたちが陰ながら護衛しているとはいえ、むしろ強いくらいのほうが万が一の時に対応できるから都合がよかったんだ」
「万が一なんて起こさせる気はなかったくせに」
クロエの言葉に「バレた?さっすがはクロエ!綺麗なだけじゃなくて聡明さも兼ね備えてる!よかったら今晩ディナーでもしながら戦術談義でもしない?」とジュリアスはおどけた笑顔で手を差し出してくる。
(おチビ軍師はいつもふざけている・・・)
うんざりしているクロエの心の中を読み取ったのかジュリアスは付け加えてくる。
「あと、もう一つ理由があるかな。クロエ、君にレックスを知ってもらいたかったんだ。護衛になってみてわかっただろう。レックスの事が。どうだい?あんな国王がリサリア王国を率いたら面白いと思わないかな?」
自分も真面目な事を考えるんだよと言いたげなジュリアスに、
「・・・同じことをラングにも言われたわ。あなた達って本当にレスタークス殿下の事が好きなのね」
ラングといい、ジュリアスといい、これほどの人物がレスタークスを慕っているのがクロエには不思議でならない。
確かにレスタークスは世間で言われているほど愚かではないし、民たちからも慕われているようだった。だが、それだけではラングやジュリアスの忠誠をここまで得ることができるとは思えない。
「単純に人柄が好きという以上に僕達はそれぞれレックスに恩があるのさ・・・。
なんてね!悪いけど、話はここまでだね。これからあの連中を拷問しなくてはいけないからね♪真面目な僕は忙しいー!」
ジュリアスは遊びにいくような顔で去って行くがその目は冷たく光っていた。




