【プロローグ】
生きているとは、何をもってそう言えるのだろう。
肉体がある事。呼吸している事。明確な意思がある事……。
人々の定義する生命の基準に、一つでも当てはまっていれば、生きていることになるのか。
それとも全て揃っていなければ、生きていることにならないのか。
例えば単細胞生物。
彼らは思考する器官をもっていない。だが多くの人は言うだろう。
彼らは生きていると。
ならば、自分の意志で動けるまでになったAIはどうだろう。
電気信号によって思考を巡らせる彼らは、生きていると言えるのだろうか。
高度なAIだけではない。
本やゲームなどに出てくる登場人物。
クリエイターたちによって命を吹き込まれ、空想上の世界で生き生きと生活している者たちはどうだ。
毎日、どこまでも続くような深い森の中で、目が合っただけで襲ってくるモンスターと戦い続ける冒険者。
穏やかな日常の中で先輩と後輩から一度にラブレターをもらうモテ期到来な男子学生。
軍隊を投入した方が圧倒的に早いのに、王様の一存で無理やり旅立たされる勇者。
彼らも、それぞれの世界で生き生きと暮らしている。
だが、それは現実ではない。
プログラミングされたストーリーに従って動いているだけだ。
しかし、彼らを創った人ならこう言うだろう。
「彼らに命を吹き込んだ」
時折、作者自身ですら「彼をこう動かしたいのに動いてくれない」と嘆かれるほど自己主張するキャラクターさえいるのだ。
もしかしたら、彼らにも自由意志があるのかもしれないと思わされる一例である。
そう、彼らは本当に生きているかもしれないのだ。
でも、もし生み出されたもの全てに命があるとしたら、僕たちはどう接していけばいいのだろう。
もしも『クリエイター』として新たな『世界』を作り、新たな『命』を生み出したのなら……。