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アナザーストーリー:創筆と霊夢

創筆は気まぐれで、博麗神社に訪れていた。

「ここが博麗神社、ねぇ…」

辺りを見回しながら創筆は呟く。

神社の賽銭箱の前まで進むと賽銭を投げ入れ、慣れた様子で二礼二拍手一礼する。

参拝客を感じ取ったのか社務所から霊夢が出てきた。

手には大幣を持っていることから創筆が人間ではないことを察している様だった。

「妖怪がこんなところに何の用かしら?」

「少し参拝に、かな?」

霊夢はさらに警戒したらしく、陰陽玉を展開する。

それでも創筆は特に気にすることなく縁側に腰かける。

「まあまあ落ち着きなさいな。別に取って食うつもりはないんだから。」

「それでも妖怪は退治するまでよ!」

「それとも…」

そういうと創筆は袴の袖からおにぎりを取り出した。

「栄養失調寸前の巫女さんにはこっちの方が効くのかな?」

創筆は顔を霊夢に向け、片目を瞑る。

霊夢はそれを物欲しそうな顔で見ていた。

「ほらほら、お隣にどうぞ。」

創筆は横を叩いて霊夢に座るよう促す。

霊夢は大幣を手にしながらも創筆の隣に座った。

「人妖は嫌い?」

「いや、倒す義務があるだけ。」

「じゃあおにぎりをくれる人妖は?」

「…少し考えるかも。」

霊夢の答えに創筆は満足したようだ。

おにぎりを1つ霊夢に手渡すと更に袖からおにぎりを取り出した。

冷たい麦茶をお盆にのせて戻ってきた霊夢はおにぎりを頬張り始めた。

創筆も少しづつ齧りながら胃袋におにぎりを入れていく。

「平和ねぇ…」

創筆は麦茶を傾けながら呟く。

「そうね。」

「でも、巫女さんには死活問題かな?」

「えぇ。」

「あらら、じゃあ人里で暴れて来ようかしら。そうすればあなたにもお金は入るでしょう?」

霊夢は大幣を構えて創筆に向ける。

「まあまあ。ここで倒したらお金が入らないでしょ?」

「なんで倒される前提なのよ?」

「強いて言うなら弱いから?」

「疑問符ばっかりね。」

「そうかもしれないわね。」

そんな会話に霊夢も疲れたらしい。

大幣を縁側に置いてごろりと倒れこむ。

「そもそもここは神社をするには大変すぎるのよ。何かを祀っている訳でもないし、こんな山の中だし…」

「商売には向いていない立地条件ね。」

創筆はからからと笑いながら白米を一口に放り込む。

「ごちそうさまでした。」

そう独りで言って合掌すると創筆は霊夢と同様ごろりと背中を縁側に預けた。

横になったままで大きく体を伸ばすとその場に脱力する。

「こんな日にこそ異変っていうのは起きてほしい物ねぇ。平和すぎる分、博麗の巫女の報酬が高くつきそうだわ。」

「…あんた、珍しいわね。人妖なのに人間に味方するなんて。」

「そうかしら? まぁ気まぐれで生きてる人妖だからねぇ。次の日には異変を起こす側になったり?」

「そうなったら容赦なく退治してあげるわ。」

「そういうのを『恩を仇で返す』っていうのよ。」

「それ、どうしようもないじゃない。」

「その通り。どうしようもないの。だから、人妖の施しなんて受けない方が良いのよ。厄介すぎるわ。」

そういうと創筆は縁側から立ち上がった。

そしてくるりと振り返ると霊夢を見下ろす。

「こんな風に痺れ薬を盛られたらどうするつもりなのかしら?」

創筆に言われた霊夢は体が動かないことに初めて気づいた。

霊夢は驚愕で目を開く。

「うぅ…あぁ!?」

霊夢の口から出てくるのは舌が回らなくなったことによる嗚咽だ。

創筆はそんな霊夢の頭を横にすると微笑んだ。

「安心して、異変は起こさないわ。でもいい教訓になったでしょ? 頭は動かさない方がいいわ。自分の舌で窒息死したくなければね。」

「うぁ…!?」

「『図ったわね!?』かしら? それとも『どうしてこんなことを!?』かしら? 実は隙間の賢者に頼まれたのよ。『最近の霊夢は気を緩めすぎて人妖ですら信頼しかけている節がある』ってね。」

穏やかな声で話しかけていた創筆はここで口調を一変させた。

「改めて忠告してあげるわ、博麗 霊夢。

所詮…人妖っていうのは人間にとって害でしかないのよ。

あの魔法使いも、仙人も、所詮は人間を辞めた人妖のひとかけらに過ぎない。ただ、人間を敵に回したくないから仲良くしているだけ。せいぜい気を付けることね。」

そういうと創筆は博麗神社を後にした。

夕日が沈み始めた頃、霊夢は悔しさの中体を起こした。

(所詮は人妖。禁忌の存在なのかしら?)

霊夢は疑問を抱えていた。

「それでも紫には感謝しなくちゃね。人妖は許すわけにはいかない。それだけでも価値はあったわ。」

そういうと霊夢は大幣を掴むと修行を始めるべく環境を整え始めたのだった。

幻想郷の存在意義という物を改めて考えて執筆してみました。

「すべてを受け入れる」と歌っていますが結局のところは「妖怪の保存」が本質なんですよね…

妖怪の手の中で必死にもがくのが精々といったところでしょうか。

中には本当の親切心で接している妖怪もいるのかもしれませんが…

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