エピソード78
その後平日の5日間をかけてカザハとユカナの冒険者ランクを8にあげた。
学校が終わってから食事が始まるまでと、夜寝る前までという少ない時間でそれぞれの用事が有ったりとなかなか全員がそろうことはなかったのだが、レベル的には全く問題ない程度の依頼をこなすだけで十分だったので特に苦労することは無かった。
苦労というよりは、ユカナの依頼は自分で採取や討伐した物だけというこだわりが無ければとっくにランクは上がっていたはずではあるのだが、カザハたちも世界観を楽しめるし、そこまで急いでいるわけではないからと言う事でそれに付き合った。ユカナはとても楽しそうに依頼をこなしていた。
そしてゴールデンウイークに入り、これから5日間は比較的時間がとりやすいと言う事で、久しぶりに集合時間を決めて食堂へと集まっていた。ちなみにいつも通りガクは料理を作っている。ただ以前と違うのはその作っている量が4人分ではなく6人分であるということだ。
ちなみに今日作っているのは前のイベントで手に入れた魚介を使って作られた海鮮焼きそばだ。輪切りにされたイカがゴロゴロと転がり、塩味に味付けされた光沢のある麺がキャベツ、ニンジンなどの彩り鮮やかな野菜と合わさり、ほかほかと美味しそうな湯気と香りをあげている。
以前料理を作っているところをシンテツに見つかり、家賃代わりに食事を作ることをガクは命令されていた。ガクとしてもタダで泊めてもらう事には抵抗があったのでそれくらいならと喜んでと了承したのだ。
ちなみにその時シンテツに「いつもこいつの料理ばっかで飽きてきたしな。」と言われたスミスががっくりと肩を落としていたがそんなことを気にするシンテツではなかった。
「それでおめえらは次どうするんだ?」
はふはふと美味しそうに海鮮焼きそばをシンテツが頬張る。スミスも最近は料理する手間が減ったのでより多くの時間を鍛冶の修行に使えると気をとり直し、今は美味しそうにフォークで焼きそばを食べていた。ビールに合いそうだと考えつつも午後からの鍛冶仕事を考えて飲まないように我慢しながら。
焼きそばを夢中で食べていたカザハとユカナとガタがシンテツの方を向く。
「新規の祝福の旅人もまた入ってくるし、とりあえず他の街のポータルを開けよう思っているわ。」
「そうだね~。拠点もあるし、師匠もいるからモノミルから離れるつもりはあんまりないけどポータルを開けておけばいつでも移動出来て便利だし。」
「僕としてはお2人が未だにモノミル以外の街に行ったことが無いというのが驚きでしたけどね。」
「同意。」
海鮮焼きそばを食べきって満足したエニシがさらっと会話に混ざってきていたが、エニシのマイペースっぷりはシンテツもスミスも数日過ごしただけだがわかっていたので特に何も言わない。そして当のエニシも当然のごとく全く気にしていなかった。
そして今エニシはガクの皿に残っているイカへと狙いを定めていた。それにガクも当然気づいているので取られないように微妙に皿を遠くへと持っていったりと、地味な攻防を続けている。
「まあどこに行こうが別にいいが、さぼって腕を落とすんじゃねえぞ、カザハ、ユカナ。」
「「はい!」」
「じゃあ行くぞ、スミス。」
「はい、師匠。」
食事を終え立ち上がったシンテツに急かされるように、スミスが残っていた焼きそばを慌てて口に詰め込み、ガクに美味しかったですよと言って去っていった。
しばらくして全員が食事を終え、空気が落ち着く。今日はガクからつまみ食いすることが出来ず、一部だけ落ち着くではなく落ち込んでいるような雰囲気を醸し出していたがいつものことと、3人はあっさりとスルーした。
「で、どういう順番にする?ルージ、ラテトラ、トリエン。3方向あるけど。」
「私は特に希望は無いわ。新しい素材を取ってこいとも言われてないし。」
「僕も特には・・・。姉さんは?」
「ルージ!海鮮焼きそばの恨み。」
エニシがやる気に満ちた表情で立ち上がる。その様子に思わずカザハとユカナがおお~、と声をあげ拍手をした。
「恨みって・・・もともと僕の分だからね。」
3人の盛り上がりを冷静に見ていたガクの呟きは誰にも届くことは無かった。
冒険者ギルドでしっかりとフィールドボスの討伐依頼を受けた上で、4人は港湾の街のルージへ向かって出発した。ギルドランクが7級へと上がる条件としてこの3つの都市へ行く時に出現するフィールドボスを倒す必要があると掲示板では推測されている。
後で依頼を受けても問題は無いのだが、依頼を受けてからボスに挑む方が冒険者っぽいというユカナの希望により形を重視して挑戦することになった。冒険者ギルドの受付のお姉さんの注意事項もしっかり聞く。
ルージへと続く道は変わり映えのしない草原フィールドだ。街道は輸入品を運ぶ商人の馬車が時折行きかうためしっかりと整備されており危険はあまりない。出てくるモンスターも一角ウサギや毒を持った蛇のモンスターのポイズンスネーク、上空から急降下攻撃をしてくるハイエナトビなど種類は増えてきているのだが、その動きはことごとく遅く、4人にとっては明らかにレベルに合っていないとわかるモンスターばかりだった。
早々に普通に戦っても意味が無いと気づいたカザハはエニシに【投擲】を教えつつ進むことにした。休憩のたびにユカナが携帯鍛冶セットで投榔用の武器を作っては補充しているので不足することもない。
「エニシは鉄球とかの方が良さそうね。」
「うん。」
カザハに教えられ段々と攻撃が当たるようになってきたエニシだったが、棒手裏剣や投げナイフのような当たる部分に制限があるような物はあまり得意ではなく、鉄球のようなどんな部分に当たろうが当たればダメージが与えられる物をもっぱら好んでいた。
カザハの私見では出来なくは無さそうなのだが、考えるのが面倒なのでエニシ自身のやる気が無いのではないかと思っていた。直接聞くほどの事ではないので聞きはしなかったが。
上空をくるくると回っているハイエナトビを警戒しながら、エニシがユカナ特製のとげ付き黒鉄球を一角ウサギやポイズンスネークにぶつけては回収していく。
投擲武器は投げた後も回収さえすれば耐久が尽きるまでは繰り返し使うことが出来るためであるが、AWOが現実に近いリアリティがあると言っても鉄球に血や肉片がこびりついていることが無いのは幸いだった。もしそんなことになれば【投擲】を使用する人口は一気に減っただろう。
「そういえばルージの道のフィールドボスって蟹なのよね?」
気配察知以外にやることのなくなってしまったカザハが後衛のユカナたちに合流する。ユカナやガクも一度魔法を唱えてしまうとしばらくは暇になってしまうためのんびりとしていた。
「えっと正確にはサワガニーですね。まあ蟹のボスなんですが。」
「横だけじゃなくて縦横無尽に動き回るから注意って言ってたね。まあ、ぼくたちのレベルなら楽勝そうだけど。」
「ふーん。」
楽しそうに黒鉄球をモンスターにぶつけているエニシを見ながらカザハが腕を組んで考え始める。そしてパンッ、と手を打った。
「よし、ボスは投擲だけで倒してみよう。」
シンテツに変な影響を受けたカザハにより、自由意思によるハンディキャップマッチが決定した。
◇----登場人物ステータス----◇
<登場人物1>(スキルレベルアップ)
名前:カザハ
種族:金狼族
職業:剣士
副職業:素材ハンター
称号:『剣聖の弟子』、『鍛冶師ギルドのお墨付き』、『世界を股にかける者』、『一匹狼』、『レアボスハンター』、『神のきまぐれ』、『坑道名人』、『ドワーフの友』、『ゴーレムスレイヤー』、『孤高のハンター』、『ハムハム』、『良き先輩の証』
従魔:サスケ
Lv30
HP 865/865 MP 175/175
STR 452 VIT 310
INT 148 MID 166
DEX 332 AGI 470
LUK 46
(スキル)
【剣術 Lv47】、【斬鉄】、【剣聖術 Lv27】、【投擲 Lv24】、【HP上昇 Lv11】、【STR上昇 Lv11】、【VIT上昇 Lv11】、【AGI上昇 Lv11】、【気配察知 Lv33】、【採掘 Lv42】、【解体 Lv31】、【釣り Lv6】、【採取 Lv23】
(装備)
武器 黒銀の小太刀(カザハ用)
頭 なし
腕 軍隊赤蟻の小手(カザハ用)
上半身 軍隊赤蟻の胸当て(カザハ用)
服 軍隊赤蟻の道着袴
下半身 軍隊赤蟻のすね当て(カザハ用)
足 軍隊赤蟻の靴(カザハ用)
アクセサリ 絆のミサンガ
アクセサリ なし
<登場人物2>(スキルレベルアップ)
名前:ユカナ
種族:銀狼族
職業:付与術師
副職業:鍛冶師
称号:『神級鍛冶師の弟子』、『鍛冶師ギルドのお墨付き』、『世界を股にかける者』、『神のきまぐれ』、『坑道名人』、『ドワーフ王の教え子』、『良き先輩の証』
Lv29
HP 547/547 MP 294/294
STR 194 VIT 157
INT 334 MID 218
DEX 517 AGI 346
LUK 108
(スキル)
【付与術 Lv32】、【採掘 Lv12】、【鍛冶 Lv41】、【杖術 Lv24】、【皮細工 Lv25】、【釣り Lv4】、【採取 Lv9】、【***】、【***】、【***】
(装備)
武器 黒鉄の杖
頭 なし
腕 軍隊赤蟻の小手(ユカナ用)
上半身 軍隊赤蟻の胸当て(ユカナ用)
服 森林狼のローブ(ユカナ用)
下半身 軍隊赤蟻のすね当て(ユカナ用)
足 軍隊赤蟻の靴(ユカナ用)
アクセサリ 絆のミサンガ
アクセサリ なし
<登場人物3>(スキルレベルアップ)
名前:エニシ
種族:エルフ族
職業:武闘家
副職業:美食家
称号:『挑戦者』、『良き後輩の証』
Lv24
HP 570/570 MP 329/329
STR 206 VIT 154
INT 302 MID 277
DEX 195 AGI 268
LUK 33
(スキル)
【格闘術 Lv29】、【投擲 Lv9】、【釣り Lv3】、【採取 Lv9】、【***】、【***】、【***】、【***】、【***】、【***】
(装備)
武器 黒鉄のグローブ(エニシ用)
頭 なし
腕 一角ウサギの小手
上半身 軍隊赤蟻の胸当て(エニシ用)
服 一角ウサギのローブ
下半身 軍隊赤蟻のすね当て(エニシ用)
足 軍隊赤蟻の靴(エニシ用)
アクセサリ 絆のミサンガ
アクセサリ なし
<登場人物4>(スキル判明)
名前:ガク
種族:エルフ族
職業:僧侶
副職業:料理人
称号:『博愛者』、『良き後輩の証』
Lv26
HP 474/474 MP 407/407
STR 137 VIT 124
INT 360 MID 336
DEX 198 AGI 203
LUK 36
(スキル)
【料理 Lv19】、【本 Lv23】、【回復魔法 Lv26】、【MP上昇 Lv7】、【MP回復上昇 Lv16】、【気配察知 Lv22】、【釣り Lv3】、【採取 Lv14】
(装備)
武器 聖職者の心得(初級編)
頭 なし
腕 一角ウサギの小手
上半身 軍隊赤蟻の胸当て(ガク用)
服 一角ウサギのローブ
下半身 軍隊赤蟻のすね当て(ガク用)
足 軍隊赤蟻の靴(ガク用)
アクセサリ 絆のミサンガ
アクセサリ なし
ボスに向かって黒鉄球を投げるエニシ。その姿を陰から見守る巨大な人影があった。ボスを倒したその時その男がやってきて言った。「おまえ、俺と一緒に甲子園を目指さねえか?」
後に伝説となる女子高生ピッチャーの歴史が今始まろうとしていた。
次回:三遊間で待っていて
お楽しみに。
あくまで予告です。実際の内容とは異なる場合があります。




