エピソード7
「23、そして24!」
カザハがすれ違いざまにアーミーアントの顔へと横なぎに剣を振るう。それだけでアーミーアントの体力ゲージが真っ赤になって消える。続けて正面から突っ込んでくる個体に突きを放ち、そして後ろへと下がる。アーミーアント自体はそこまで強くなかった。問題は・・・
「いつになったら途切れるのよ。」
倒しても倒しても女王の後ろにある穴から倒した分だけ出てくるその圧倒的な物量だった。ちなみに女王は開始時点から一歩も動いていない。と言うよりはそもそも近づけてもいないのだ。
「意外とセンスあるな。お前。小太刀の長さはもう少し長くてもいいかもしれんな。」
「今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ。」
カザハの後ろで採掘を終えたシンテツが座りながら分別していたがその表情は冴えない。黒鉄の量は多くなったが他の種類の鉱物は無かったからだ。シンテツにとってこのダンジョンがはずれだったことが確定してしまった。
やることが無くなってしまったので暇つぶしにカザハの戦闘を見ていたのだ。
「何か習ったのか?」
「おじいちゃんにちょっと剣道をね。これでも女子では強い方なのよっと。」
そう言いながらカザハがアーミーアントを切り捨てていく。
「そうか、その爺さんに会ってみてえもんだ。それよりそろそろだぞ。」
「えっ、何が?」
そう言いながら振るったカザハの剣がアーミーアントの体の途中でバキっと半分に折れる。折れた反動でカザハの体がおよぎ、その隙を逃さず、剣の半分が体に埋まったままのアーミーアントの前足がカザハを跳ね飛ばした。
「キャッ!!」
地面をごろごろと転がり、シンテツの目の前にあおむけの状態でカザハは止まった。
「お前、仮にも剣士なら自分の剣の状態ぐらい把握しておけよ。」
カザハに向かって先ほど回収した黒鉄の小太刀を放り投げながら立ち上がる。カザハは布でまかれたその小太刀を慌てて起き上がってキャッチした。
「戦闘中にそこまで気が回らないわよ。それといくら布で巻いてあるからってむき身の刀を投げないでよ!」
カザハが布を外し、先ほどのアーミーアントへと横なぎに一閃する。その小太刀はバターでも切るかのようにすっぱりとアーミーアントの頭部を両断した。そのあまりの抵抗の無さにカザハの表情が固まる。
「何これ!?」
「いや、小太刀だろ。」
カザハの方へと歩いてきたシンテツが、自分の方へ向かってきたアーミーアントを蹴り飛ばしながら呆れた顔をする。そしてカザハの切り倒したアーミーアントをしげしげと見る。
「やはりあと5センチ程度長くするかな。違和感とかあるか?」
「あまりに切れすぎて違和感と言えば違和感があるかも。」
「このクラスの敵程度ならな。まあおいおい慣れろ。それよりそろそろ飽きたからボスをぶっ殺しに行くぞ。」
アイテムボックスからシンテツが一本の剣を取り出す。刀身から柄まで全て茶色の杭のような円錐状の形をした剣だった。剣を普通とは逆に持ち、そのまま地面に向かって突き立てる。
「隆起せよ、ツチミネ。」
その瞬間その突き刺した地面から地震のような波が周囲へと広がり、その振動にカザハがおっとっとと体勢を崩す。何とか転ばずに済んだカザハが改めて周囲を見渡して言葉を失う。
剣を中心に今までなかったとがった槍のような土がアーミーアント達を突き刺しているのだ。ジタバタと足を動かしているが、それでもその土の槍が崩れるようなことは無い。今まで追加のアーミーアントが出て来ていた穴の手前までその槍は届いており、その穴を牢のように塞ぎ、これ以上出られなくしていた。
「何、これ?」
しばらく経ってからやっと出た言葉がそれだった。そして頭の理解は全く追いついていなかった。
「やはり雑魚でもボスか。ツチミネだけでは無理だったな。まあ距離もあるし仕方ねえな。」
そのシンテツの言葉にカザハが女王を見る。女王は体を何か所も突き刺され、体液を垂れ流しながらもまだ生きていた。そして体をくねらせると貫かれた土の槍が次第に折れていく。女王が動けるようになって封じられている穴を再び開けられたら今までの二の舞になってしまう、そう思った瞬間カザハの体は動いていた。
「やぁあああ!!」
気迫のこもった叫び声に反応するかのように、女王が体を貫いていた土の槍を一気に引きちぎる。無理やり動かした代償にかなりのHPが削られたがまだまだ死ぬようなことは無い。HPバーもまだ20%ほど残っていた。
キチキチキチキチ。
女王が口から何かを吐き出すのと、カザハがその口を切り裂いたのは同時だった。
「くっ!!」
左腕にその液体がかかり、カザハを熱湯をかけられたかのような熱さが襲う。痛覚は抑制されているはずなのにこの痛さ、抑制されていなければ泣き叫んでいただろう。そのことにカザハは感謝した。痛いが我慢できないほどじゃない。
そのまま目の前にある女王の足を胴を薙ぐ要領で斬り飛ばす。口を切り裂いた段階で女王の残りのHPは10%程度まで減っている。しかしカザハ自身のHPも一撃しかくらっていないのに5割を切っていた。つまり後一撃くらえばそれで終わりだ。
キチキチ。
口部分を半分切り裂かれた女王から先ほどの音がした。カザハは慌てて横へと飛んだが自分がつけた傷が仇となった。集中して飛んでいくはずのその液体が、口を切られていたために放射状に広がったのだ。
「うぐっ・・・」
カザハの足へとその液体が少しかかる。たったそれだけでカザハのHPは残り1割になった。そして何より今までのように全力で走ることが出来なくなってしまったのだ。
傍から見ても絶体絶命だった。その時カザハはなぜか祖父の教えを思い出していた。
カザハは左ひざをつき片ひざ立ちの体勢になると小太刀の刀部分を斬れないように左手で掴み、そして腰へつけ刃を自分の方へと向ける。
動かなくなったカザハを見てチャンスだと思ったのか、女王がカザハの頭に喰らいつこうとその半分裂けているその口を大きく開け、カザハへと迫る。
「ハッ!!」
裂帛の気合と共に小太刀が三日月の曲線を描くように右手一本で振るわれる。それは鞘さえない未完成の小太刀で放たれた未完成の居合いだった。
「見事だ。」
小太刀を振るうことに全神経を使い、振り上げた状態で半ば意識を失いかけていたカザハの耳に届いたのはシンテツの声と、ドサッと言うアーミークイーンアントの倒れる音だった。
◇----登場人物ステータス----◇
<登場人物1>
名前:シンテツ
種族:unknown
職業:神級鍛冶師
称号:『神級鍛冶師』、etc.
Lv***
HP *****/***** MP ****/****
STR ***** VIT *****
INT **** MID ****
DEX ***** AGI *****
LUK ***
(スキル)
【採掘 Lv***】、【鍛冶 Lv***】、【剣術 Lv***】、etc.
(装備)
武器 ツチミネ
頭 なし
腕 なし
上半身 unknown
服 unknown
下半身 unknown
足 革の靴
アクセサリ unknown
アクセサリ unknown
<登場人物2> (レベルアップ)
名前:カザハ
種族:金狼族
職業:剣士
称号:なし
Lv15
HP 33/482 MP 100/100
STR 223 VIT 191
INT 91 MID 100
DEX 162 AGI 232
LUK 28
(スキル)
【剣術 Lv13】、【***】、【***】、【***】、【***】、【***】、【***】
(装備)
武器 黒鉄の小太刀(未完)
頭 なし
腕 一角ウサギの小手
上半身 一角ウサギの胸当て
服 街娘の服
下半身 一角ウサギのすね当て
足 皮の運動靴
アクセサリ なし
アクセサリ なし
辛くもボスを倒したカザハだったがその後に見た光景はその亡骸に泣きつく子供たちだった。その光景を見たカザハはの胸中は。
次回:ぼくのお母さんを返して
お楽しみに。
あくまで予告です。実際の内容とは異なる場合があります。
地味にランキングに残っています。
ありがとうございます。m(._.)m
面白い話が書けるよう頑張ります。
3/28 全般の文章を加除しました。
4/12 登場人物ステータスを追加。




