エピソード73
5/10 後書きを忘れていたのを追加しました。何ということをしてしまったんだ・・・。
最終日。
カザハたち4人は2回ほど火山のダンジョンを攻略した後、早めに街へと帰ってきていた。頑張ればもう1回くらいはダンジョンを攻略できたかもしれないのだが、最後くらいはゆっくりと過ごそうと4人で話し合ったのだ。
街の中は最終日と言うことで各店が最終処分セールなどとうたいながら、大安売りをしている。街は最後まで楽しもうとするプレイヤーの笑顔で溢れていた。
ぶらぶらと店を見ながら帰り、4人は住み慣れてきた家へと戻った。時刻は午後4時ちょっと過ぎ、あと3時間弱でこのイベントも終了する。
家へ着くと早速ガクが腕まくりをして料理に取り掛かろうとした。いつもどおりエニシの要望だ。ガク自身も最後にゆっくりと食事するのもいいかな、と考えていたので乗り気だった。ガクがさっそく幼赤竜の肉をアイテムボックスから取り出そうとする。
「あっ、そうだ。こっちを使ってみて。」
カザハが自分のアイテムボックスから1キロぐらいの肉の塊を取り出す。それは幼赤竜の肉よりも細かくさしが入っており、どこぞの有名なブランド牛のA5ランクの肉のようだった。
「何の肉ですか?かなり高そうな・・・」
「ガク、早く。」
ガクの質問は、取り出された肉を食い入るように見つめているエニシに止められた。エニシには確信があった。これは絶対に美味しい肉だと。
姉の急かすような視線に耐えられなくなったガクが質問を諦め料理を開始する。とりあえずこのくらいいい肉なら下手な小細工をしないで、肉そのものを味わえる方がいいよな~、と考えて結局ステーキを焼いていくことにした。
ガクがチャキチャキと動き、いい匂いが辺りに漂う中3人の期待する目がじっとその様子を見つめていた。
「おなかいっぱい。」
「よかったね。でもいくら何でも僕の分まで奪うのはやめてよ、姉さん。」
「まあ、気持ちはわかるわね。」
「そうだね~、ぼくももう一枚食べたいって思ったし。」
4人は食事を終え、今はゆったりとした時間を過ごしていた。カザハが出したのは子赤竜の肉だが、幼赤竜の肉に比べてさらに柔らかく、ジューシーで、そして味付けは塩コショウだけのはずなのにその肉本来のうまみ、甘みが4人の口の中を蹂躙していった。エニシが感動のあまりガクの肉の3分の1を奪ったのも仕方がないのかもしれない。
ゆったりとした雰囲気の中、カザハが目でユカナに合図を送る。そしてユカナもそれに気づき小さく首を縦に振った。
「えっと、改めて新入生歓迎会お疲れ様でした。私はガクとエニシと組むことが出来て楽しかったわ。」
「ぼくも~。」
「いえ、こちらこそいろいろとお世話になりました。本当にありがとうございます。」
「うん。ありがと。」
ガクとエニシがそろって頭を下げる。あらためてこれが最後なんだな~、と4人はしみじみと思っていた。一緒に過ごしたのは10日足らずのはずなのだが長い間パーティを組んでいたかのように全員が感じていた。
そしてそれがもうすぐ終わってしまう寂しさも。
「ここで、エニシとガクに私たちからプレゼントがあります。じゃあカザハ、用意はいい?」
「大丈夫よ。」
「ダラダラダラダラダラ、ダンッ!」
ユカナの口でのドラムロールに合わせるようにカザハがアイテムボックスからパペットグローブ(シルバータートル)と子赤竜の肉を2つ取り出しテーブルの上に置いた。
取り出されたそれらにエニシの視線は釘付けになり、ガクも驚いた顔で机の上の物とカザハたちの間で視線を何度も動かしていた。
そんな2人の様子に、カザハとユカナがこっそりと手を合わせた。
「えっとエニシには前にドロップしたウサギのパペットグローブの相棒のカメのパペットグローブね。盾のシルバーゴーレムが落としたから多分2つで1つだと思うわ。で、ガクには本当なら壊れた本の代わりを用意出来れば良かったんだけどちょっと無理だったから子赤竜の肉ね。火山のレアボスのドロップ品だからそれなりに貴重なはずよ。味は、十分わかってる・・・」
カザハの言葉は途中で止められた。カメのパペットグローブを見ていたエニシが立ち上がって駆け寄り、カザハに抱きついたからだ。いや、どちらかと言えば座っている身長の低いカザハを抱きしめたように他の人からは見えるだろう。
エニシのお腹付近に顔をうずめたカザハが頭頂部に当たる柔らかい2つのものに若干の嫉妬を覚えそうになるが我慢した。そして体が離れたときにカザハが見たのは、ちょっと目を潤ませながら嬉しそうにしているエニシの顔だった。
「ありがと、カザハ、ユカナ。絶対に大事にする。」
「どういたしまして。」
「別にいいよ~。とはいっても頑張ったのはほとんどカザハだけどね。」
「貴重なものをありがとうございます。それにしてもどうやって手に入れたんですか?」
ガクも嬉しそうにしながら首をかしげていた。そんなガクの様子にサプライズが成功したことを確信し、カザハもユカナも笑顔になる。
「みんなが寝てからこっそりと1人でダンジョンに通ったのよ。パペットグローブがなかなか出なくてちょっと心が折れそうになったわ。」
「そうだね~。カザハには珍しく疲れが表情に出てたしね。ガクたちは誤魔化せたみたいだけど。」
カザハの言葉にうんうん、とユカナがうなずく。そんな感じで普通にさらっと流そうとした2人だったが、その言葉はエニシとガクには聞き捨てならない物だった。
「ダンジョンをソロでクリアしたんですか!?しかも火山のレアボスって誰も倒したことがないらしい奴ですよね!」
「びっくり。」
エニシとガクが驚いた目でカザハを見る。見つめられたカザハはなんてことはないとでも言うように平然としていた。
「火山のレアボスはちょっとした知り合いと一緒の時だったし、それにサスケもいたしね。・・・サスケ、しゃべっていいよ。」
「御意。改めまして自己紹介を。我はカザハ様の従魔のサスケと申します。カザハ様とパーティを組んでくださり感謝いたします。」
カザハの肩からピョン、とテーブルの上に飛び降りたサスケがうやうやしく頭を下げる。突然のことに頭が働かなくなっているガクをよそに、エニシはキラキラした表情でサスケを見ていた。
サスケの存在はもうミコトにも知られているし、これだけ長い間パーティを組んだエニシとガクに教えても問題はないだろうとカザハは判断したのだ。
そして頭を下げていたサスケをすっ、とエニシが持ち上げて抱きしめた。
「かわいい。やっぱり欲しい。」
「姉さん!」
「わかってる。カザハの従魔だし取るつもりはない。」
そう言いながらサスケをゆっくりと優しくエニシは撫でていた。サスケはちょっと困った表情でカザハの方を見たが、そのままで、と言うカザハの視線を受けその身をエニシに任せることにした。
そしていよいよ午後7時。4人はゆったりとガクの淹れた紅茶を飲みながら時が来るのを待っていた。
《ワールドアナウンスです。ただいまをもちまして公式初イベント「新入生歓迎会」を終わります。お疲れ様でした。それでは参加者の転送を開始します。》
そのアナウンスに4人が顔を見合わせてほほ笑む。寂しいような、やり遂げたようなそんな気持ちがごちゃ混ぜになった笑みだった。
そして4人が光に包まれ住み慣れ始めた家から消える。そして景色が切り替わり、4人は体育館のような広い空間へと転移した。
◇----登場人物ステータス----◇
<登場人物1>(スキルレベルアップ)
名前:カザハ
種族:金狼族
職業:剣士
副職業:素材ハンター
称号:『剣聖の弟子』、『鍛冶師ギルドのお墨付き』、『世界を股にかける者』、『一匹狼』、『レアボスハンター』、『神のきまぐれ』、『坑道名人』、『ドワーフの友』、『ゴーレムスレイヤー』、『孤高のハンター』、『ハムハム』
従魔:サスケ
Lv30
HP 865/865 MP 175/175
STR 452 VIT 310
INT 148 MID 166
DEX 332 AGI 470
LUK 46
(スキル)
【剣術 Lv46】、【斬鉄】、【剣聖術 Lv26】、【投擲 Lv23】、【HP上昇 Lv11】、【STR上昇 Lv11】、【VIT上昇 Lv11】、【AGI上昇 Lv11】、【気配察知 Lv33】、【採掘 Lv42】、【解体 Lv31】、【釣り Lv6】、【***】
(装備)
武器 黒銀の小太刀(カザハ用)
頭 なし
腕 軍隊赤蟻の小手(カザハ用)
上半身 軍隊赤蟻の胸当て(カザハ用)
服 軍隊赤蟻の道着袴
下半身 軍隊赤蟻のすね当て(カザハ用)
足 軍隊赤蟻の靴(カザハ用)
アクセサリ なし
アクセサリ なし
<登場人物2>(レベルアップ)
名前:ユカナ
種族:銀狼族
職業:付与術師
副職業:鍛冶師
称号:『神級鍛冶師の弟子』、『鍛冶師ギルドのお墨付き』、『世界を股にかける者』、『神のきまぐれ』、『坑道名人』、『ドワーフ王の教え子』
Lv29
HP 547/547 MP 294/294
STR 194 VIT 157
INT 334 MID 218
DEX 517 AGI 346
LUK 108
(スキル)
【付与術 Lv31】、【採掘 Lv12】、【鍛冶 Lv38】、【杖術 Lv23】、【皮細工 Lv20】、【釣り Lv4】、【***】、【***】、【***】、【***】
(装備)
武器 黒鉄の杖
頭 なし
腕 軍隊赤蟻の小手(ユカナ用)
上半身 軍隊赤蟻の胸当て(ユカナ用)
服 森林狼のローブ(ユカナ用)
下半身 軍隊赤蟻のすね当て(ユカナ用)
足 軍隊赤蟻の靴(ユカナ用)
アクセサリ なし
アクセサリ なし
<登場人物3>(レベルアップ)
名前:エニシ
種族:エルフ族
職業:武闘家
副職業:美食家
称号:挑戦者
Lv24
HP 570/570 MP 329/329
STR 206 VIT 154
INT 302 MID 277
DEX 195 AGI 268
LUK 33
(スキル)
【格闘術 Lv27】、【釣り Lv3】、【***】、【***】、【***】、【***】、【***】、【***】
(装備)
武器 黒鉄のグローブ(エニシ用)
頭 なし
腕 一角ウサギの小手
上半身 軍隊赤蟻の胸当て(エニシ用)
服 一角ウサギのローブ
下半身 軍隊赤蟻のすね当て(エニシ用)
足 軍隊赤蟻の靴(エニシ用)
アクセサリ なし
アクセサリ なし
<登場人物4>(レベルアップ)
名前:ガク
種族:エルフ族
職業:僧侶
副職業:料理人
称号:博愛者
Lv26
HP 474/474 MP 407/407
STR 137 VIT 124
INT 360 MID 336
DEX 198 AGI 203
LUK 36
(スキル)
【料理 Lv17】、【本 Lv22】、【回復魔法 Lv24】、【MP上昇 Lv5】、【MP回復上昇 Lv15】、【気配察知 Lv20】、【釣り Lv3】、【***】
(装備)
武器 初心者の本
頭 なし
腕 一角ウサギの小手
上半身 軍隊赤蟻の胸当て(ガク用)
服 一角ウサギのローブ
下半身 軍隊赤蟻のすね当て(ガク用)
足 軍隊赤蟻の靴(ガク用)
アクセサリ なし
アクセサリ なし
カザハから子赤竜の肉を受け取ったガクだったが、そのために刺客につけ狙われるようになる。今、ガクとその刺客との壮絶な争いが始まろうとしていた。
次回:姉と言う名の強襲者
お楽しみに。
あくまで予告です。実際の内容とは異なる場合があります。




