エピソード72
大喜利外伝は午後10時ごろの予定です。
それではどうぞ。
カザハの目の前のその巨体はもう動くことなく、地面に身を横たえている。ふぅ、とカザハが息を吐いた。
「ありがとう、サスケ。助かったわ。」
「いえ。」
それだけ言うとサスケは元の黒猫の姿へと戻る。
トットット、という足音が聞こえカザハの元へとミコトがやってきた。振り向いたカザハの目に映ったのは興味深げにサスケを見るミコトの姿だった。
「質問したいことはいろいろあるんだが、とりあえずはお疲れ。」
「そうね、ミコトもお疲れさま。とりあえずミコトは【解体】って持ってる?」
「いや、持ってないよ。」
首を振りそう答えるミコトを見て、カザハは小太刀を納め、練習包丁バンノウを取り出す。その巨大な包丁にミコトがぎょっとするが、精神集中していたカザハはそれには気づかなかった。
[纏]の連続使用によってかなりの集中力を使っていたカザハにとって一度切れたその集中力を再び発揮するのは難しかった。しかしレアボスの素材ともなれば価値があることは疑いようは無いため、カザハは目を閉じ精神を統一し気を高めていく。
辺りに、ピンッ、とした空気が張り詰める。
「【解体】。」
カッ、と目を開いたカザハが言葉をつぶやくと、光の線に沿ってバンノウを振るっていく。カザハの表情に迷いはなく、ただ剣を重ねていく。しかし次第にカザハの顔から汗が吹き出し、表情が曇っていく。
なんで、こんなに複雑なのよ。心の中で愚痴りつつもカザハは慎重に、そして大胆に光の線をなぞっていた。しかしその光の線は今までの解体で現れた線と比較にならないほど複雑で、そして針の穴を通すような精密さが必要な軌道を描いていた。
カザハもよく頑張った方だ。しかし万全ではない今のカザハが光を追うことには限界があり少しずれ、そしてその瞬間解体の光の筋は消え、レッドドラゴンも素材を残して光の粒子となって消えた。
「あぁ~、なんか負けた気分になるわね。」
カザハの目の前には通常よりもはるかに多いドロップ品が落ちている。カザハの職業の素材ハンターの効果と最後まで行かなかったとしても、かなり健闘をした【解体】の効果だ。
カザハがバンノウを一振りし、そのままアイテムボックスへと収納した。
ミコトはそんなカザハの姿をじっと見ていた。
「で、どこまで教えてくれるんだい?」
「掲示板や人に教えないって約束してくれるならある程度はってとこかな。まぁミコトはそんなことしないとは思うけどね。」
「わかった誓うよ。」
軽く右手を顔の位置まで上げ、カザハに掌を見せてミコトが誓う。その表情は笑っているがその言葉が嘘とはカザハには思えなかった。カザハがどうぞ、と言うかのように首を縦に振った。
「とりあえずその黒猫の話だねぇ。何なんだいそいつは?」
「私の従魔のサスケだね。ちょっと特殊な方法で従魔になってくれたんだ。私の相棒ってところかな。」
「カザハ様の従魔のサスケと申します。以後お見知りおきを。」
サスケがぺこりと頭を下げる。その様子を物珍し気にミコトは見ていた。その動きは自然で普通の猫にしか見えない。しかしサスケが普通でないことはその戦う姿を目の前で見たミコトも重々承知していた。
「なんでしゃべられるんだとかどこで手に入れたんだとかは聞かないよ。その方がいいんだろう。」
「まぁ、そうね。」
言葉を濁したカザハの様子にミコトは自分の好奇心を抑えることにした。まぁそういう存在がいると知っているだけでも価値はある。そう判断したのだ。
カザハも本来ならサスケのことをバラすつもりは無かった。しかしアングリーオールドスタンプの経験上、10%を切った状態のレアボスは一段と厄介な行動をとる可能性が高いと考えていたのだ。そのためには何が何でも勝負を決める必要があった。そしてそのカザハの判断は間違っていない。もしHPを残すようなことがあればここでカザハとミコトはのんきに話などしておらず、街へと死に戻りしていただろう。
「後は、そうだねぇ。まぁいいよ。」
「いいの?」
ミコトの言葉にカザハが首をこてっ、と傾げる。一方のミコトは鼻の下をくしくし、と掻くと笑ってカザハを見返した。
「あんまり聞くのも野暮ってもんだと思ってね。まぁ、同じゲームをしてるんだ。いつか答えにたどり着いて見せるさ。」
カザハの動きや技、そして巨大な包丁、異常に多いドロップ品など疑問に思う点はかなり残っていた。しかし自分にも秘密があるようにカザハにもあるだろうし、答えを最初から聞いてしまうのはミコトの信念に反することだった。
そういうことがある、それを知っていればいずれは自力で答えまでたどり着いて見せる。それがミコトなりの意地だった。
「ありがとう、じゃあドロップ品の確認しましょうか?」
「そうだね。」
カザハとミコトが地面に落ちているレッドドラゴン(子竜)のドロップアイテムを確認していく。ドロップアイテムも通常とほとんど変わらず、子赤竜の鱗が6枚、子赤竜の皮が3枚、子赤竜の肉が5個、子赤竜の爪が2本、子赤竜の翼膜が1枚、そして唯一違うのが子赤竜の涙と言う透明な雫型の宝石のようなものが1つあった。
「とりあえず複数あるのは均等に分けるとして、レアドロップっぽいのは翼膜と涙かねぇ。」
「う~ん、私は翼膜はあんまりいらないかも。さんざん通常ボスで回収してるし。」
カザハが即座に答える。1回につき1枚は出てくるのでカザハは既に5枚以上の翼膜を持っていたのだ。
「じゃあローブに出来そうだし、俺が翼膜をもらおう。あとは皮と肉だが私は皮が欲しいがそれでいいかい?」
「肉が欲しいわ。パーティメンバーがちょっと食べるのが好きでね。絶対肉の方が喜ぶと思うのよね。」
カザハの脳裏にナイフとフォークを持ったエニシの姿とその姿を残念そうに眺めるガクの顔が浮かんでくる。まぁ、想像通りになるだろうな、とカザハは思い、少し笑った。
「じゃあ、交渉成立ってことでいいかい?」
「そうね。改めてお疲れさま。」
カザハが差し出した右手をミコトが握り握手をする。2人の顔にはやりきった達成感が満ちていた。
宝箱は出ず、そのまま2人は出ていこうとして、カザハがふと目的思い出して【採掘】を開始する。ちょうど良く赤竜鉱石が2つ出たので1つをミコトへと渡した。
ミコトは新しい素材に驚いてはいたが、自分自身に【採掘】スキルは無いからどうしようかねぇ、と頭を悩ませていた。
「じゃあ、これで終わりだ。思ったより楽しかったよ。」
「私もよ。また何かあったら連絡するわ。」
転位陣に乗りダンジョンから脱出した2人はパーティを解散する。さすがに2人とも疲れたので街へと帰ることにしたのだ。とはいってもミコトはここで食事をしてから帰るということなのでこの場所でお別れだ。
手を振りながら去っていくカザハを見て、ミコトも手を振り返す。カザハは何度も振り返っては手を振っていた。
「面白い子だねぇ。そう思わないかい?」
ミコトのつぶやきは答えるものはいなかったが、ミコトは満足そうにうなずき、そして屋台へと消えていった。
◇----登場人物ステータス----◇
<登場人物1>(スキルレベルアップ)
名前:カザハ
種族:金狼族
職業:剣士
副職業:素材ハンター
称号:『剣聖の弟子』、『鍛冶師ギルドのお墨付き』、『世界を股にかける者』、『一匹狼』、『レアボスハンター』、『神のきまぐれ』、『坑道名人』、『ドワーフの友』、『ゴーレムスレイヤー』、『孤高のハンター』、『ハムハム』
従魔:サスケ
Lv30
HP 711/865 MP 22/175
STR 452 VIT 310
INT 148 MID 166
DEX 332 AGI 470
LUK 46
(スキル)
【剣術 Lv46】、【斬鉄】、【剣聖術 Lv26】、【投擲 Lv22】、【HP上昇 Lv11】、【STR上昇 Lv11】、【VIT上昇 Lv11】、【AGI上昇 Lv11】、【気配察知 Lv33】、【採掘 Lv42】、【解体 Lv30】、【釣り Lv6】、【***】
(装備)
武器 黒銀の小太刀(カザハ用)
頭 なし
腕 軍隊赤蟻の小手(カザハ用)
上半身 軍隊赤蟻の胸当て(カザハ用)
服 軍隊赤蟻の道着袴
下半身 軍隊赤蟻のすね当て(カザハ用)
足 軍隊赤蟻の靴(カザハ用)
アクセサリ なし
アクセサリ なし
<登場人物2>(スキルレベルアップ)
名前:ミコト
種族:影人族
職業:魔術師
副職業:農家
称号:『自然に愛されし者』『一匹狼』『賢者の弟子』『ハムハム』
Lv32
HP 405/501 MP 71/510
STR 146 VIT 150
INT 510 MID 502
DEX 326 SPD 355
LUK 68
(スキル)
【闇魔法 Lv43】、【隠密 Lv36】、【短杖 Lv28】、【***】、【***】、【***】、【***】、【***】、【***】、【***】、【***】
(装備)
武器 銀のロザリオ(ミコト用)
頭 魔力の髪飾り
腕 大狼の小手
上半身 大狼の胸当て
服 大狼のローブ
下半身 大狼のすね当て
足 大狼の靴
アクセサリ 銀の腕輪
アクセサリ 瑠璃石の指輪
キラッ⭐私、暗黒少女ミコト!今日も楽しく邪魔なやつを闇に葬っていたら突然私の前に金髪の少女が現れたの。むむっ、これは・・・
次回:ライバル出現!?斬殺少女カザハ
お楽しみに。
あくまで予告です。実際の内容とは異なる場合があります。




