エピソード69
翌日からの4人での探索は順調に進んだ。最短距離を通り、最低限の敵を倒すことで3回周回することが出来ていた。カザハが夜にボス戦をし続けていたため、ボスの動きに慣れてHPの減りが早くなったことも要因の1つだった。
大量の素材や肉を手に入れてエニシもご機嫌だった。幼赤竜の肉で料理すると大量に経験値がもらえるらしく、ガクの料理の腕も上がりエニシ的には万々歳だったのだ。
カザハとユカナも素材や赤竜鉱石を見つけることができ、カザハが夜に集めた分を含めてなんとかシンテツに渡しても十分な量を確保することが出来ていた。
そして9日目の深夜11時半。カザハは再び火山のダンジョンへとやってきていた。
素材は十分集まっているのでそこまで必死に集めなくてもいいのだが、明日の午後7時にはこのイベントが終了してしまうためこれが最後の夜だ。せっかく続けてきたのだから最後までやりきろうと決めていたのだ。
カザハがいつも通りサスケに乗り、あっさりとボスを倒し、解体と採掘を終えると周回するために転移陣で入り口付近へともどる。既に10回以上倒しているカザハにとっては半ば作業とも言えた。そして再びダンジョンに入ろうとして、横からスっ、と目の前に出てきた大柄な女性とぶつかりそうになって慌てて止まる。
相手の黒髪のショートカットの大柄の女性が驚いたようにカザハを見つめていた。
「ごめんなさい。」
「いや、こちらこそすまん。」
お互いに頭を下げる。
通常ならカザハがこんなふうに人とぶつかりそうになるようなことはない。【気配察知】も使っているし、人ごみを通り抜ける訓練もしているのだから。こんな風になるということは相手が【隠密】などの気配を消すスキルを使用していたということだ。
お互いに顔を上げて、そして相手に見覚えが有ることに気づいた。
「ミコトさんでしたか。」
「あぁ、カザハだったね。何しに来たんだいってダンジョンの攻略に決まってるか。」
「はい。」
腰の小太刀をポンポンと叩きながらカザハが答える。ミコトは少し考えるような仕草をした後にちょっと笑った。
「ソロかい?」
「ええ、仲間は寝てるわ。私は採掘したい素材があるので一人で回ってるんだけどね。」
「ふーん。じゃあこれも何かの縁ってことで1周パーティを組んでみるかい?」
「そうだね。よろしくお願いします。」
カザハが間をおかずに答える。素材としては大量とまではいかないが十分に集まっている。そこまでせこせこしないでも大丈夫なのだ。それよりもあんな綺麗な花園を作るミコトがどんな戦い方をするのかの方に興味があった。
ミコトからのパーティ申請をカザハが了承する。ミコトのステータスがカザハのステータスの横に表示された。
~ステータス~
名前:ミコト
種族:影人族
職業:魔術師
副職業:農家
称号:『自然に愛されし者』『一匹狼』『賢者の弟子』『ハムハム』
Lv32
HP 501/501 MP 510/510
STR 146 VIT 150
INT 510 MID 502
DEX 326 SPD 355
LUK 68
「影人族?」
「あぁ、シャドウ族って読むらしいぜ。それにしてもあんたも金狼族かい。それに称号が9つとは恐れ入るね。」
「私の場合は師匠が特殊なんだ。」
「俺もだよ。」
お互いに深く聞くと面倒なことになる予感がしたのでそれ以上2人とも何も聞かないことに決めてダンジョンの探索を進めることにした。
「で、とりあえずカザハは何が出来るんだい?腰の獲物と職業で大体はわかるけどね。」
「主な攻撃手段は剣ね。他には・・・」
カザハが棒手裏剣を取り出し、今まさに火の玉を吐き出そうとしていた火吹きウミウマの頭にスコン、とその棒手裏剣が突き刺さる。そのままズブズブ、と火吹きウミウマはマグマの海へと消えて行った。
「まあこんな感じで中距離は投擲で攻撃する感じかな。ミコトは?」
「ああ、俺はちょっと特殊でな。種族的に闇属性の魔法しか使えないんだ。まあどんな感じかって言うと、[シャドウボール]。」
ミコトの手の上に黒い丸い球が浮き上がる。ただ黒いと言うわけではなく、中で液体が混ざり合っているように表面がうようよと動いている。
「うん、若干気持ち悪いわね。」
そんなカザハの感想に、ミコトがはぁ、とため息を吐く。その顔はそうだろ、そうだろとカザハに同意している様がありありとわかった。
「まあね。で、これを飛ばすとだ・・・」
まだこちらに向かって来ていない火吹きウミウマ目がけてミコトがシャドウボールを放つ。火吹きウミウマに当たった瞬間シャドウボールが1メートルほどの大きさに広がり、火吹きウミウマを包み込んだ。数秒後そこにはマグマの海があるだけだった。
「まあ、こんな感じだな。」
「了解、ミコトもボスへの最短ルートを目指すってことでいいのよね。」
ミコトがうなずいたのを見てカザハが先を歩き出す。
「じゃあ、道中の敵は適当に殲滅しながら進みますか。そう大した敵は出てこないしね。」
「そうだね。プレイヤーとパーティを組むのは初めてだ。よろしく頼むぜ。」
カザハが了解、とふざけながら敬礼をして探索が開始された。
道中ははっきり言って楽勝だった。カザハもミコトも単独でボス部屋の前までつけるほどの実力者だ。その2人がパーティを組んでいるのだから苦戦などするわけが無い。
ミコトが遠距離攻撃してくる火吹きウミウマを、カザハが突っ込んでくる火食い鳥を処理することで全く止まることなく探索が続いていく。お互いがお互いを邪魔することなくとてもスムーズだった。
「そういえば何でミコトはパーティを組まなかったの?ミコトぐらいの実力があれば引っ張りだこじゃない?あっ、答えたくないなら答えなくてもいいけど。」
道中でミコトの実力を確認していたカザハが頭に浮かんだ疑問を聞いてみた。カザハ自身、ミコトと遠距離から戦ったら苦戦するかもしれないとミコトの実力を予想していた。そしてそれはたぶん間違っていないと言う確信があった。それに性格も女性にしてはさばさばしていて男性っぽいが付き合いにくいと言うわけではない。
そんなカザハの言葉にミコトも特に嫌な顔をすることなく[シャドウボール]で敵を倒していた。
「そうだね、種族をランダムで決めたんだがその時にレア種族の影人族を当てちまってね。あまりこういうゲームに慣れていなかったんでそれを馬鹿正直に聞かれた男に答えちまったんだよ。まあそいつの目が嫌だったんでパーティを組むのは断ったんだが、そうしたらその男と数人にモノミルの街の外で襲われたんだ。レベルも低かったしさすがに多勢に無勢で殺されて、それからはソロで活動してるんだ。まあ、若気の至りってやつだね。」
「それは・・・なんというか悪いことを聞いたわね。」
カザハが申し訳なさそうに表情を崩す。カザハの尻尾もしゅんと垂れてしまっていた。しかしそんなカザハの気持ちを吹き飛ばすようにミコトは歯ぐきまで見えるくらいに口を開けてハッハッハ、と笑った。
「気にしなくてもいいよ。仇は自分で取ったからね。」
「えっ?」
「悔しくてレベルを上げて逆に狩ってやったのさ。あいつはPKとして活動していたから報酬ももらえてホクホクだったよ。今は感謝したいほどさ。」
先ほどまでの暗い空気を吹き飛ばしたミコトと、少しは気にしながらもあまり自分が気にしすぎるとまずいわよね、と気持ちを切り替えたカザハによって探索は進みついにボス部屋へと2人はたどり着いたのだった。
◇----登場人物ステータス----◇
<登場人物1>(スキルレベルアップ)
名前:カザハ
種族:金狼族
職業:剣士
副職業:素材ハンター
称号:『剣聖の弟子』、『鍛冶師ギルドのお墨付き』、『世界を股にかける者』、『一匹狼』、『レアボスハンター』、『神のきまぐれ』、『坑道名人』、『ドワーフの友』、『ゴーレムスレイヤー』、『孤高のハンター』、『ハムハム』
従魔:サスケ
Lv30
HP 865/865 MP 42/175
STR 452 VIT 310
INT 148 MID 166
DEX 332 AGI 470
LUK 46
(スキル)
【剣術 Lv46】、【斬鉄】、【剣聖術 Lv25】、【投擲 Lv22】、【HP上昇 Lv11】、【STR上昇 Lv11】、【VIT上昇 Lv11】、【AGI上昇 Lv11】、【気配察知 Lv33】、【採掘 Lv42】、【解体 Lv30】、【釣り Lv6】、【***】
(装備)
武器 黒銀の小太刀(カザハ用)
頭 なし
腕 軍隊赤蟻の小手(カザハ用)
上半身 軍隊赤蟻の胸当て(カザハ用)
服 軍隊赤蟻の道着袴
下半身 軍隊赤蟻のすね当て(カザハ用)
足 軍隊赤蟻の靴(カザハ用)
アクセサリ なし
アクセサリ なし
<登場人物2>
名前:ミコト
種族:影人族
職業:魔術師
副職業:農家
称号:『自然に愛されし者』『一匹狼』『賢者の弟子』『ハムハム』
Lv32
HP 501/501 MP 510/510
STR 146 VIT 150
INT 510 MID 502
DEX 326 SPD 355
LUK 68
(スキル)
【闇魔法 Lv42】、【隠密 Lv36】、【***】、【***】、【***】、【***】、【***】、【***】、【***】、【***】、【***】
(装備)
武器 銀のロザリオ(ミコト用)
頭 魔力の髪飾り
腕 大狼の小手
上半身 大狼の胸当て
服 大狼のローブ
下半身 大狼のすね当て
足 大狼の靴
アクセサリ 銀の腕輪
アクセサリ 瑠璃石の指輪
さらわれたミコトの仲間の妖精たちを何とか助けだしたカザハ、しかしその代償として背中に大きな傷を負ってしまう。森の奥の洞窟で身をひそめるカザハを助けるためミコトは危険を犯し街へ行くことを決意する。
次回:ドキドキ☆街探索!
お楽しみに。
あくまで予告です。実際の内容とは異なる場合があります。




