エピソード61
時刻は深夜1時手前。そんな時間でも人がまばらに存在するダンジョンの入口前にカザハはいた。
このイベントが始まって既に6日目。いや、既に日を跨いでいるので7日目だ。レアドロップを探しに深夜にダンジョンを周回すること5日、まだカザハはレアドロップを引くことが出来ていなかった。一応諦める気は無いので6回目の周回をするつもりではあるが、正直な話、カザハはもう飽き飽きしていた。
昨日、一昨日と海のダンジョンへ行き、シェルタートルと言う貝を背負った4メートルほどの亀のボスを倒している。
このボスは魔法がほぼ効かず、首を引っ込めている最中に攻撃すると回転しながらこちらを攻撃してくるという厄介なボスだったのだが、エニシが転職して魔法の使える者のいないカザハたちにとっては、耐久が高いため時間はかかったが問題のないボスだった。
ダンジョンに2日かけた理由は、魚釣りの出来るスポットがあったため、ユカナが作った即席の釣竿で釣りをしてバーベキューをしていたからだ。称号のおかげかカザハが大量に釣り上げ、エニシにとても感謝されていた。
あの魚は美味しかったわね、とダンジョンに入り、サスケの背に揺られながらカザハは思い出していた。
「じゃあ、今日もちゃっちゃと行きますか。」
「はい、カザハ様。」
サスケとともにボス部屋に入る。カザハたちにとってもはやこのボスはただの雑魚だ。攻撃、行動パターンも把握しており、5分程度で倒すことが可能だ。始めの頃はサスケと戦う相手を交代したりして飽きないようにしていたのだが、さすがに6回目の周回ともなるとやり尽くした感があり、昨日あたりからはカザハが砲、サスケが盾と固定していかに早く倒せるかを試しているのだ。
しかしカザハたちの目の前に現れたのはボスのシルバーパペットではなかった。薄茶色の透明なクリスタルでできたパペットが3体そこにいたのだ。
「うわっ、今回は完全にハズレね。」
カザハがその姿を見てあからさまにがっかりした顔をする。カザハがこのボスと戦うのは初めてではない。2日前に既に1回戦っているのだ。
<アースクリスタルパペット(槍)>
Lv25
HP 3500/3500 MP 500/500
(説明)
土のクリスタルでできた動く人形。その持った槍で相手を攻撃する。魔法、物理耐性がある。
<アースクリスタルパペット(斧)>
Lv25
HP 3500/3500 MP 500/500
(説明)
土のクリスタルでできた動く人形。その持った斧で相手を攻撃する。魔法、物理耐性がある。
<アースクリスタルパペット(弓)>
Lv25
HP 3500/3500 MP 500/500
(説明)
土のクリスタルでできた動く人形。その持った弓で相手を攻撃する。魔法、物理耐性がある。
弓のパペットが撃ってきた矢をカザハがかわす。薄茶色の透明なクリスタルでできた矢は周りの風景と同化して見分けにくいはずなのだが、カザハにとっては当たり前のように見えていた。そして槍と斧のパペットがカザハたちに襲いかかってくる。
カザハは気持ちを切り替えると剣を構えた。ハズレは早く終わらせるべきだと。
「サスケは弓を相手にして。後の2体は私が相手をするわ。」
「御意。」
サスケが向かってくる2体のパペットの頭上を軽やかに飛び越え、弓のパペットへと襲いかかる。サスケへと一瞬注意の逸れた2体へとカザハの金色のオーラを纏った小太刀が走る。その黒銀の小太刀は、それよりもランクの高い素材である土のクリスタルの体をやすやすと傷つけていった。
「ほらほら、よそ見してるとそのまま倒しちゃうわよ。」
既にカザハは[纏]を解除している。[纏]の連続使用はMPの関係で出来ない。それゆえにカザハは攻撃を当てるほんの少しの間だけ[纏]を発動するように訓練していた。
カザハの挑発に槍と斧のパペットがカザハへと向き合う。そしてカザハに向かって一斉に攻撃を始めた。槍による鋭い突きを、斧による両断するかのようななぎ払いをカザハは余裕を持って避ける。確かに今までの敵に比べれば格段に速く、そして強い。2体による連携も取れているためカザハも簡単には反撃は出来ない。しかし、シンテツの訓練に比べればその動きなど児戯のようなものだ。
「遅い!!」
カザハは斧のパペットを集中して狙っていく。重量ゆえに攻撃の後の隙が大きいのだ。槍のパペットがそうはさせじとカザハへと突きを放ってくるが、あるときは斧のパペット自体の体を盾に、またあるときは斧のパペットの攻撃を弾いて槍へと同士討ちさせるようにして着実にダメージを与えていった。
そして斧のパペットのHPが残り2割を切った時、状況は一変した。
「遅れました。」
「別にいいわ。さっさと倒すわよ。」
「御意。」
サスケが弓のパペットを倒し切り、槍のパペットの背後から襲いかかったのだ。カザハ1人相手に攻めきれなかった2体に、カザハとサスケを同時に相手にできるはずなどなく、程なくしてレアボスの討伐は終了した。
《同一ダンジョンを50回踏破したことにより称号『ハムハム』を手に入れました。》
そのアナウンスを聞いたカザハは称号に驚くよりも、50回も踏破してレアドロップが出ないってどういう事よ、と言う徒労感の方が大きかった。レアボスなので一応【解体】はしてみて、アースクリスタルの槍を手に入れたが、カザハにとっては無用の長物なのですぐにアイテムボックス行きだった。
素材を回収するとカザハはすぐに魔法陣に乗り、入り口へと転移して再度ダンジョンへと入る。サスケの背に揺られながらステータス画面を確認した。
称号:ハムハム
同一ダンジョンを回し車で走るハムスターのように何度もクリアした者に与えられる称号。連続して同一ダンジョンをクリアする間、少しだけステータスがアップする。
「好きでハムスターやってるわけじゃないわよ!!」
カザハの称号に対するツッコミを聞いたのはサスケだけだったが、サスケは賢く、何も言わずにただ走り続けていた。
そして57回目のボス戦後。
「やっと、出た。」
【解体】を終えたカザハの目の前に銀色のグローブが落ちている。そのグローブは甲羅のような模様からニョキッと亀が首を出したデザインをしていた。
<パペットグローブ(シルバータートル)>
STR +200 VIT +40
耐久 350/350
装備ランク 7
作成者 シルバーパペット(盾)レアドロップ
シルバーパペット(盾)のレアドロップのグローブ(左手用)。可愛いカメさん。これであなたも腹話術師。
カザハがそのグローブを手に取り床へと寝転がる。さすがのカザハも連日のダンジョン単独周回は体力的にも精神的にもきつかった。しかし目的の物が目の前にある今、疲れた表情をしながらもカザハはやり遂げたと言う達成感と清々しい思いでいっぱいだった。
「あ~、もう絶対安請け合いはしないわ。」
カザハのそばにスっ、と腰を下ろしたサスケの毛並みをモフりながら呟く。
「サスケもありがとうね。」
「いえ、我はカザハ様の剣ですから。」
サスケの体温を感じながらカザハは1時間ほどその場から動かなかった。サスケはそんなカザハのそばから離れることなく、そっとそばにありつづけた。
◇----登場人物ステータス----◇
<登場人物1>(称号獲得)
名前:カザハ
種族:金狼族
職業:剣士
副職業:素材ハンター
称号:『剣聖の弟子』、『鍛冶師ギルドのお墨付き』、『世界を股にかける者』、『一匹狼』、『レアボスハンター』、『神のきまぐれ』、『坑道名人』、『ドワーフの友』、『ゴーレムスレイヤー』、『孤高のハンター』『ハムハム』
Lv30
HP 865/865 MP 132/175
STR 452 VIT 310
INT 148 MID 166
DEX 332 AGI 470
LUK 46
(スキル)
【剣術 Lv46】、【採掘 Lv41】、【斬鉄】、【剣聖術 Lv21】、【HP上昇 Lv10】、【STR上昇 Lv10】、【VIT上昇 Lv10】、【AGI上昇 Lv10】、【気配察知 Lv30】、【解体 Lv25】、【釣り Lv6】、【***】、【***】
(装備)
武器 黒銀の小太刀(カザハ用)
頭 なし
腕 軍隊赤蟻の小手(カザハ用)
上半身 軍隊赤蟻の胸当て(カザハ用)
服 軍隊赤蟻の道着袴
下半身 軍隊赤蟻のすね当て(カザハ用)
足 軍隊赤蟻の靴(カザハ用)
アクセサリ なし
アクセサリ なし
ついに2つ目の鍵であるパペットグローブ(シルバータートル)を手に入れたカザハ。2つのグローブが合わさるとき、あかずの部屋の扉が開かれる。そこには少しの希望と大いなる絶望が待ち構えていた。
次回:汚部屋
お楽しみに。
あくまで予告です。実際の内容とは異なる場合があります。




