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最強のNPCは鍛冶師でした  作者: ジルコ
第三章:初公式イベント
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エピソード59

 突然流れたアナウンスにガクとエニシの表情が固まり、動きが止まる。一方で半ば慣れつつあるカザハたちはこんな感じで称号が取れることもあるんだと納得していた。

 しばらくしてガクとエニシが正気に戻る。エニシがこちらにやってくるのを待ってガクが口を開いた。


「あの、なんか称号が取れたみたいなんですが。」

「うん。私たちにも聞こえてたから知ってるわよ。ステータスで確認できるから確認してみれば?」


 ガクがステータス画面を開いて確認を始めたので3人が後ろから覗き込む。



 称号:博愛者

 分け隔てなくすべての者を癒す者に与えられる称号。レベルアップ時にMP、INT、MIDの成長補正(中)



「すごいですね。」

「そうね。ガクにぴったりの称号ね。」

「よかった。」

「やってることは博愛とほど遠かった気がするよ、ぼくは。」


 ユカナの言葉に全員が苦笑いする。やっていたのはサンドバッグとなったカッパーゴーレムが死なないように回復させていただけ。はっきり言って博愛とは正反対の拷問に近いものだったからだ。感情表現の無いカッパーパペットだからこそ出来た所業とも言える。


「見る。」


 エニシが自分のステータス画面を開き、他の3人が興味津々に覗き込んだ。



 称号:挑戦者

 どんな敵にも諦めない心で立ち向かう者に与えられる称号。レベルアップ時にHP、STR、VIT、SPDの成長補正(中)



「やった。」

「うん。今の姉さんに必要な称号だね。」

「そうね。これでエルフのステータスの低さもある程度何とかなるかも。」

「そうだね。近接系のエルフか~。ひょっとしたらエニシだけかもね。」

「うん、かっこいい。」


 エニシもガクも称号を得られて嬉しそうにしている。しかしその笑顔がこの数分後に凍り付くであろうことを知っているのはユカナだけだった。

 カザハが話しはじめようとしたことを察したユカナがバッ、と前へ出る。


「第2回、カザハ先生の武闘家育成コーナー、好評につきカザハ先生の講座、第2回目が開催されるわけですが、今回はどんな・・・」


 ガツ!


 脳天に今日一番の強さのチョップをくらいプスプスと煙のような物を上げながらユカナは床に崩れ落ちた。


「やはり、チョップ強い。」


 エニシが感心したように、その真似をし始める。そんなエニシを可愛らしいな~とカザハとガクは見ていた。


「とりあえず攻撃は大丈夫だと思うから、次は防御ね。今から2人にPvPの申請出すから受けてくれる?」

「うん。」

「わかりました。」


 PvPとは「プレイヤー・バーサス・プレイヤー」の略で人対人で行う対戦のことだ。その種類は、HPを削りきるまで戦う通常モード、打撃を当てた回数を競う高速モード、装備やステータスに規制がかかる制限モードなど色々とあり、対戦方式も1対1から1対多、多対多のパーティ戦など様々なシチュエーションが楽しめる。

 もちろんPvPでなくても街などのセーフティエリア以外での戦闘は可能だが、PvPの場合は特殊なフィールドで覆われるため、HPが0になっても死に戻りせず、HPが5%の状態で復活可能なのだ。もちろん武器や防具の耐久については戻らないが。

 今回カザハが申請したのは1対多の高速モードだ。無事に申請が通ったのを見て、カザハがにやりと笑う。


「じゃあ始めるわね。その前にエニシは装備を全部外して。」

「わかった。」


 カザハの指示に素直に従い、エニシが何も装備していないときの布の服の姿に変わる。この時点でガクはちょっと嫌な予感がしていたのだがとりあえずは聞くことにした。


「今から私がエニシを攻撃するからそれをひたすら弾くか避けるようにしてね。」

「いやいや、カザハさんの攻撃を姉さんが避けられるわけないじゃないですか!?」


 その言葉にすかさずガクが反論する。確かにガクの言う通りカザハとエニシでは経験からレベルまで全てが段違いだ。普通に考えれば避けられるはずなどなかった。


「もちろん手加減はするわよ。高速モードはダメージが減るらしいし、私も装備を外して木刀を使うからそこまでダメージは大きくないはず。ガクはエニシの回復をしてね。」

「しかし・・・」


 そのガクの言葉を、腕を掴んで止めたのはエニシだった。エニシはガクの方を見るとふるふると首を横に振った。


「やる。」

「いい覚悟ね、行くわよ。」


 そう言って前に出て、カザハの攻撃を受け始めた姉の姿にガクはあっけにとられていた。しかし姉がカザハの攻撃を受けて吹き飛ばされても立ち上がり向かっていく姿を見て覚悟を決める。


「姉さんがやる気なら、僕は全力でサポートするよ。」


 ガクはエニシのために回復魔法を詠唱し始めた。





 高速モードを始めて既に1時間弱。もうすぐカザハの設定した高速モード終了の時間だ。

 エニシの頭の上に表示されている打撃のカウントは3000を超える。それほどの打撃をカザハから受けてなお、エニシはカザハに向かって来ていた。

 カザハは笑う。エニシには才能がある。

 今もカザハの攻撃を紙一重で避けている。訓練を続けているうちに最初の数回ならばなんとか避けられるようになっているのだ。もちろんカザハは手加減しているし、本来ならばフェイントなどを使用して攻撃を避けにくくするのだがそれもしていない。それでもカザハの攻撃を避けると言うことは難しいはずだった。

 エニシは目がいい。間合いを測ることがうまいのだ。そして何より心が折れていない。それが武道を極めるために一番必要なことだった。普通ならこれほどの実力差があると気づいた瞬間、人は多少諦めるものだ。しかしエニシは愚直なまでにカザハに向かってくる。

 その心を、その姿をカザハはちょっとうらやましく思った。


「はい、しゅーりょー。」


 ユカナの声が響く。エニシの頭に表示されたカウントは3121、対してカザハは0だった。カザハの勝利が告げられPvP特有のフィールドが解除される。


「はぁはぁ。」

「大丈夫、姉さん!」


 膝をついたエニシにガクが駆け寄る。最後の方は気力だけでなんとか動いていたのだ。攻撃されると言うことになれていないエニシにとって、PvPとは言え今回の訓練は精神的にも非常に疲れるものだった。

 一方でカザハはアイテムボックスから水筒を取り出しコップに水を入れていた。そんなカザハにユカナが寄ってくる。


「お疲れ。」

「ありがとう。でも本当にお疲れなのはエニシだから。」


 コップに入れた水をエニシへと差し出す。エニシはそれを受け取ると一気にその水を飲み干した。エニシののどがこくこくと動く。


「どうだった?」


 水を飲み終えたエニシがコップをカザハへと返して、差し出された手を取ってよいしょ、と立ち上がる。そんなエニシの姿をガクは心配そうに見つめていた。


「疲れたし、痛かった。けど・・・」

「けど?」

「楽しかった。」

「そっか。」


 ガクは何かを言いたそうにしたが、すっきりとした顔をしているエニシの姿にその言葉を飲み込んだ。

 そしてエニシが手を差し出す。


「ありがと、カザハ。」

「どういたしまして。」


 2人が握手をする。先ほどまで戦っていたとは思えないほど2人は笑っていた。和やかな雰囲気の中、く~、と大きな音が響いた。


「ガク、お腹減った。」

「うん、そうだよね。たぶんそうなると思って弁当用意してあるから。」


 ガクが呆れた顔をしながら大きめのバスケットを取り出す。その中にはサンドイッチが大量に入っていた。エニシが目を輝かせてバスケットに手を突っ込み食べ始める。エニシに勧められて3人も小休憩を兼ねてサンドイッチを食べることにした。


「それにしてもぼくはあの訓練は嫌だな。」

「僕も同意します。」


 ユカナとガクがうんうん、とうなずきあっている。そしてユカナが何かに気付いたようにあれっ、と首をかしげる。


「カザハ、もしかして装備ランク以上の剣を使えばダメージ受けないんじゃない?」


 その言葉にもぐもぐとサンドイッチを口に入れていたカザハが、口の中のものを早く飲み込むためにガクの用意した紅茶を飲む。


「うーん。それは私も考えたんだけどね・・・」


 カザハがシンテツから貸してもらったランク3の剣を抜く。そしてユカナに向かって振り下ろした。その剣は見えない壁で弾かれたように、頭を抱えてうずくまったユカナに当たる直前で止まっていた。


「真剣を向けられるのって怖くない?」

「今のカザハの行動の方が怖いよ!!」


 ユカナの突っ込みにエニシが噴き出した。そして笑いが伝播していく。

 ダンジョン内にふさわしくない緩やかな時間がそこには流れていた。




 ◇----登場人物ステータス----◇


 カザハ、ユカナは変更なしのため割愛。


<登場人物1>(スキルレベルアップ)

 名前:エニシ

 種族:エルフ族

 職業:武闘家

 称号:挑戦者


 Lv6

 HP  221/221 MP  149/149

 STR 76   VIT 60

 INT 124  MID 116

 DEX 86   AGI 101

 LUK 15


(スキル)

【格闘術 Lv15】、【***】、【***】、【***】、【***】


(装備)

 武器  一角ウサギのグローブ(エニシ用)

 頭   なし

 腕   一角ウサギの小手

 上半身 一角ウサギの胸当て

 服   一角ウサギのローブ

 下半身 一角ウサギのすね当て

 足   一角ウサギの靴

 アクセサリ なし

 アクセサリ なし


<登場人物2>(スキルレベルアップ)

 名前:ガク

 種族:エルフ族

 職業:僧侶

 副職業:料理人

 称号:博愛者


 Lv20

 HP  399/399  MP  158/314

 STR 113  VIT 104

 INT 278  MID 263

 DEX 159  AGI 165

 LUK 30


(スキル)

【料理 Lv12】、【本 Lv15】、【回復魔法 Lv22】、【MP上昇 Lv4】、【MP回復上昇 Lv10】、【気配察知 Lv13】、【***】、【***】


(装備)

 武器  初心者の本

 頭   なし

 腕   一角ウサギの小手

 上半身 軍隊赤蟻の胸当て(ガク用)

 服   一角ウサギのローブ

 下半身 軍隊赤蟻のすね当て(ガク用)

 足   軍隊赤蟻の靴(ガク用)

 アクセサリ なし

 アクセサリ なし

ガクとエニシは気づいていなかった。カザハとユカナがこっそりと何かを相談していることを。そしてその計画は実行される。


次回:次の実験台はお前だ。


お楽しみに。


あくまで予告です。実際の内容とは異なる場合があります。

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「大地転生 ~とりあえず動けないんだが誰か助けてくれ~」
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「外伝用お題募集ページ」
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