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最強のNPCは鍛冶師でした  作者: ジルコ
第三章:初公式イベント
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大喜利外伝:美味しい料理のこだわりは?

お題をいただいた「ハンマー」「畑」「雨」の大喜利外伝です。

本編とは全く関係ありませんので読み飛ばしていただいても・・・

いえ、結構苦労したので読んでもらえると嬉しいです。

200ブクマ記念です。


 ドワーフ自治国近く、草一本生えていない不毛な赤い岩がゴロゴロと転がる大地の一角に2つの人影があった。

 身長160センチほどの線の細い体型のエルフたちだ。眠そうな目をした少女の後を、その少女に良く似た、女と見まごうばかりの柔和な顔をした少年がついていく。少年の顔は少し引きつっていた。

 少女が立ち止まる。そして少年の方を振り返るとアイテムボックスから2本の(くわ)を取り出し、少年に向かって無言で1本を差し出した。


「姉さん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど。」

「なに?」


 とりあえず、といった感じでガクが鍬を受け取りじっくりと観察し、やはり鍬以外の何物でもないと再確認する。簡易鑑定するとユカナが作った黒鉄製の鍬で異常に耐久が高かった。

 首をかしげる姉を見て、ガクの対姉に特化した嫌な予感センサーがびんびんと反応する。


「根本的なことなんだけど何するつもり?」

「畑?」

「なんで姉さんが疑問形なの!?」


 やっぱりろくでもないことだったと、いつもの習慣で突っ込みを入れながらガクが肩を落とす。そんなガクの肩をぽんぽんと叩いて慰める姉の顔を見てガクが気付く。姉さんが本気の時の目だ、と。


「とりあえず本気なのはわかったけど、なんでまた畑なの?」

「ガクは言った。美味しい料理を作るなら素材からこだわるべきだと。」

「いや、確かに言ったけどね。だから畑?」


 エニシがこくりとうなずく。

 確かに昨日の夕食時に、満腹で眠そうなエニシにもっと美味しいご飯を作ることって出来るのかを聞かれてそう答えた覚えがあった。もちろんガクは厳選した素材を購入するつもりで言ったのであって、断じて畑から作るという意味で言ったのではない。

 しかし自分の姉のことながらその行動力にガクはちょっと驚いていた。エニシはガクよりも30分ほど早くログインしたはずなので実質AWOで1時間の間に、土地の購入、道具の用意を済ませたと言う事なのだ。ここまで考えてガクは疑問を抱く。


「姉さん、お金どうしたの?それに鍬だってどうやって用意したの?」


 そうなのだ、自慢に全くならないがエニシはほとんどお金を持っていない。本当に欲しいものがある時は一気に貯めるのだが、いつもは買い食いしたり、買い食いしたり、買い食いしたりしてお金を使ってしまうのだ。そのため毎回お小遣いをガクが渡して、残りのお金はガクが管理していた。

 またいくらユカナの腕が良いと言ってもこれだけの鍬をこんな短時間に2本も都合よく用意できるとは思えなかった。

 そんなガクの質問に、エニシが胸を張ってふふん、と鼻を鳴らす。


「土地はリーンに言ったらタダで貸してくれた。ユカナには昨日メールで頼んでおいた。」

「うわっ。」


 その言葉にガクは姉の行動力をまだまだ甘く見ていたことを思い知る。リーンと言うのはこのドワーフ自治国の王女のリーンベルトの事だ。まさか美味しい料理が食べたいと言う事だけで知り合いとは言え王族と直接交渉するとは思っていなかったのだ。

 そして受信したメールに折り返すことはあっても、自分からメールを送るようなことはしなかった姉の成長にちょっと目がうるむ。

 我が子の成長を見守る親のような気持ちになっているガクをよそにエニシが鍬を振り上げ


「2人ならきっといい物が出来る。」


 そして振り下ろした。


 カーン。


 甲高い音が辺りに響く。伝わった振動に手をしびれさせ鍬を取り落したエニシが自分の手を見て、そして全く削れていない地面を見る。倒れた鍬を見た後、再び自分の手へと視線を戻した。そして鍬を拾うとそれを地面に立てた。

 そんな姉の様子をガクはじっと見ていた。


ガク(・・)ならきっといい物が出来る。じゃ。」


 シュタ、と片手をあげ走り去っていくエニシをガクはあっけにとられながら見送った。そしてその背中が豆粒のように小さくなってから正気に戻る。


「ちょ、いくらなんでも無理だって。姉さん、ねえさ-ん!!」


 ガクの悲痛な叫び声は岩山に響き渡るだけで、去っていくエニシに届くことは無かった。





 ガクは一通り鍬で掘ろうとしてみたり、周辺に良い土地が無いか探してみたりしたが何の成果もなく、仕方が無いのでドワーフ自治国へ一度戻ることにした。

 ガクとしては不可能だと思っているし、エニシに押し付けられただけなのでそのまま何もしなくても問題は無いと頭では理解している。しかし自分があっさりと諦めた場合、十中八九、エニシが泣くのだ。理不尽だとはガク自身もわかっている。ただ理屈ではなく、感情として姉の悲しげな泣き顔は見たくなかった。


 ガクが向かっているのはドワーフ自治国の王城。そこでリーンベルトに面会を申し込むつもりだった。ガク自身の常識としてはあの場所で畑を作るなんてことは無理だが、ここに長く住んでおり、土地を貸してくれたというリーンベルトならばなにか方法を知っているのではないかと思ったのだが・・・


「ああ、やはりエニシの思いつきでしたのね。てっきり祝福の旅人特有の方法でもあるかと思ったのですが、残念ですわ。」


 リーンベルトはあっさりとその期待を粉砕した。というよりもリーンベルトもエニシの畑を作るという言葉に期待していたらしい。食料の自給がほぼ出来ていないドワーフ自治国にとって畑を作るというのはそれほど魅力的な提案だったのだ。


「リーン様は畑を作れるような知識のありそうな方を知りませんか?」


 ガクの質問にリーンベルトが人差し指を顎に当て、目を閉じてしばらく考える。そしてうーん、首をかしげながらうなった。


「エルダートレントのエル爺様なら知ってらっしゃるかもしれませんが・・・ガクはトレントの森を1人で抜けられます?」

「無理です。」

「ですわよね。」


 カザハにトレントの森の奥のダンジョンに姉のお供で連れて行かれた時のことを思いだし、ガクが断言する。カザハに守られながら進んだあの時でさえトレントにぼこぼこにされて瀕死になったのだ。単独で進めば半分も行かないうちに死に戻りするのは明らかだった。


 はぁ、と2人のため息が重なる。

 その時バンッ、と大きな音を立てて王城の扉が開かれ大柄な赤髪の男が入ってきた。その男はキョロキョロと周りを見回すと2人の方へと向かって歩いて来る。


「リーン、ジジイはどうした?」

「お父様なら昨日から外交に出てしまっていますわ。帰りは確か来週末のはずですわ。」

「チッ、一歩遅かったか。あのジジイめ!」


 悔しそうに床を蹴ると、すぐに引き返そうとし、ガクを見つけてシンテツの動きが止まる。


「ガク、どうしてお前がここにいる?」

「えっと、ちょっといろいろありまして・・・」


 ガクはシンテツに今までの経緯を話していった。話していくうちにいかに自分が無理そうなことをしようとしているのかを再認識してしまい、ちょっと落ち込んだ。

 しかし、シンテツはその話を聞いて面白そうに笑った。


「よし、それじゃあ俺がちょっと手助けしてやるよ。予定が開いちまったしな。」


 そう言うとシンテツはガクを連れて街の外へと歩き始めた。





 シンテツについてガクが歩いていく。進んでいる方向が危険なシルヴェルナ山の方向であることに若干の不安を感じながら。


「あの、シンテツさん。何をするつもりなんですか?」

「あぁ、ちょっと待ってろ。もうすぐだ。」


 シンテツは明確には答えない。しかし歩みは止めず進んでいく。不安が増していくのを感じつつもここで引き返すと言う選択肢は無かった。1人で引き返せば死に戻る可能性もあるし、なにより姉の願いをかなえることも出来なくなる。


 ドス、ドス、ドス、ドス。


 そんなガクの不安が的中し、だんだんと地響きが近づいてくる。

 ガクは信じたくなかった。しかし今正に見えているものは信じざるを得ない。

 目の前に現れたのは体長5メートルはあろうかと言うコモドオオトカゲに似た爬虫類のモンスターだった。


「おっ、やっと出たな。」


 シンテツが嬉しそうにアイテムボックスから赤と黄色の何かを取り出す。この場に似つかわしくないその物を何と表現したらよいのか、ガクは迷った。いや、わかっているのだがそれがなぜこの場面で出てくるのかがわからないのだ。


「あのシンテツさん。それって・・・」


 言いよどむガクに向かってシンテツがそれをくるりと回して肩に担ぐ。


「おお、ユカナに教えてもらったピコピコハンマーって武器だ。攻撃力を落としつつもスタン性能を上げるって言う面白い武器だぜ。結構作るのに苦労したがこういう時は役にたつ。」


 シンテツがその2メートルはあろうかと言う巨大なピコピコハンマーを持ちモンスターへと向かっていく。その光景は滑稽を通り越してシュールだ。

 そしてシンテツがその地を這うドラゴンの脳天を思いっきりそのピコピコハンマーで殴りつけると、そのドラゴンは目を回し、そして体を横倒しにして気を失った。

 巨体が倒れたことにより土煙が舞う。

 現実感のない光景に意識が理解するのを拒否しようとするのを必死にガクは留めていた。


「えっと、そのドラゴンをどうするんですか。」

「おう、畑の予定地に連れてけ。そこで見せてやるよ。」


 シンテツが気絶したその自身の2倍以上もあるドラゴンをひょい、と担ぐと案内するように急がせた。ガクはもうどうにでもなれと思い走って畑の予定地へと向かい、当然のごとくシンテツはその速度についていっていた。





「ここです。」


 先ほどの赤い岩が転がる一角に案内する。ガクにはシンテツが何をするのかが全く分からなかった。少なくとも畑とは全く関係が無いように思えたのだ。


「よし、種は持ってんだろ。適当にそこらに()け。」

「はい。」


 ガクがシンテツに言われたとおりにいろいろな種類の種を蒔いていく。エニシが鍬と一緒に置いていったものだ。どの種類がいいのかわからないのでとりあえず全て蒔く。


「じゃ、行くぞ。」


 シンテツがドラゴンを下ろすと、その首をすっぱりと斬り落とす。その首からは血が吹き出し雨のようにその種に降り注いでいった。


「何を・・・」


 ガクは言葉が続けられなかった。ガクの目の前で種から芽が出て、そして成長し、みずみずしい実をつけたからだ。人参など土の中に埋まることもせず地表で人参としての成長していた。多少形が棍棒のようなのは気にしては駄目だろう。


「まぁ、こんな感じでレッサーアースドラゴンのような雑魚ドラゴンでも血は栄養が豊富だ。野菜ぐらいなら簡単に育つぜ。まあうまく【解体】しながらじゃねえと血が吹き出ねえからコツが必要だがな。じゃあお前もやってみろ。」

「無理です。」


 シンテツは知ってる、と言ってにやりと笑うと去って行った。残されたガクはそこに転がっている野菜たちをどうしようかとしばらく悩み続けた。





「うわっ、何なの今日のご飯。すごく野菜が美味しいわ。」

「そうだね~。野菜だけでいいかもってくらい美味しいね。むしろ主役は野菜だね。」

「ガク、すごい。」

「・・・」


 3人の賞賛を受けながらガクも一口、作った野菜炒めを食べる。あまり味付けをせずに作られたそれは、野菜本来の味が引き出され抜群に美味しい。ただその製造方法を知っているガクは、何とも言えない複雑な表情で食事を食べ続けた。

 3人はそんなガクの様子を不思議そうにしながらも食事を続けた。エニシはとても幸せそうないい笑顔をしていた。

いかがでしたでしょうか。

今後も定期的にこういった試みをしてみようかなと画策しています。

500ポイント記念でやるつもりなんですが続けると本編の流れが悪くなってしまうのでちょっと間を置く予定です。

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「大地転生 ~とりあえず動けないんだが誰か助けてくれ~」
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少しでも気になった方は読んでみてください。

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