エピソード45
400ポイント突破しました。本当にありがとうございます。
*名前変更しました。
ユカリ → エニシ
ユカナと一文字違いでわかりにくかったので。
カザハは紅茶を、ユカナはコーヒーを飲みながらガク手作りのクッキーを堪能していた。まだほんのりと温かいそのクッキーは表面は固いのだが中は柔らかく、サクサクとしながらも中はしっとりと言う、相反する食感を醸し出していた。そして味はどこか懐かしいほっとするような素朴な味だった。
カザハたちの反対側ではエニシがリスのようにカリカリカリカリと小刻みに口を動かしながらクッキーを食べている。表情は眠そうなままだが何となく幸せそうだ。
「いやいや、姉さんもユカナさんたちも食べてないで今後のことを話しましょう。」
クッキーを堪能することに全力を傾け始めた3人に、ガクの突っ込みが入る。
「ガクのクッキーが美味しいのがいけない。」
「姉さん・・・」
責任転嫁しだした姉に一応褒められて、嬉しそうにしながらも微妙な顔をするという器用なことをガクがしたのを見て、カザハたちも気持ちを切り替えた。ここに来た主目的はお茶会ではないのだ。
「パーティ組みたいってことだったけど普通に一緒に戦えばいいのよね?」
「そう。」
「そうですね。何が悪いかは百聞は一見にしかずと言うことで一度見ていただけるとありがたいです。」
「りょーかい。それはいいけどなんでまだ一角ウサギの装備?ガクとエニシのレベルならもう1段階上の装備ができるはずだよね?」
ユカナのその言葉に、ガクが思わずエニシを見る。視線を向けられたエニシはそんなことはどこ吹く風とクッキーをカリカリと食べていた。その様子を見てちょっと諦めたような顔をするとガクが話し出す。
「確かに僕たちはレベル13なのでランク8の装備までは装備できるんですが、基本2人で戦っていたので接近される前に姉さんの魔法で倒すか、接近されて倒されるかで結構死に戻りが多いんです。それでお金が・・・」
「あ~、ごめん。それ以上は言わなくていいや。」
ちょっと恥ずかしそうに言うガクの言葉をユカナが止める。その先は聞かなくてもわかりきっていたからだ。
死に戻りした場合、所持金の半分は失ってしまう。さらに死んだと言うことは防具にもダメージが入っているので修理にも費用が掛かる。つまり金欠で買えなかったということだ。
ちょっと考えればわかりそうなことなのに、悪いことを聞いてしまったと反省しながら、ユカナには1つの考えが浮かんでいた。
「じゃあぼくが作ってあげよう。さっきのダンジョンで鉄鉱石とかも手に入ったし、他の素材もあるからランク8くらいなら作れるしね。で、作ってる間にカザハと戦ってきたらいいよ。時間の節約もかねて。」
「そうね。それじゃあそんな感じでいきましょうか?」
ユカナの提案にカザハも納得してさっそく出かけようかと思っていたのだが、そんな2人の動きにガクたちはついていけていないようだった。
「いいんですか?本当にお金ないですよ。」
「うん。すっからかん。」
ちょっと慌てたように言う2人にユカナが笑って応える。
「いいんだよ。ぼくも修行中だし。師匠に比べれば大したものは出来ないから。それに今回のイベントは新入生歓迎会だしね。先輩からのプレゼントってことで。」
「そうそう。じゃ、行きましょう。」
「ありがとうございます。行ってきます。」
「ありがと。じゃね。」
カザハに促され2人が出て行くのをユカナは手を振って見送ると、早速準備に取り掛かった。
ランク8と言えば黒鉄やアーミークイーンアントくらいまでの素材を使うことが出来る。ただ黒鉄は防御力は高いのだが、ガクやエニシのような魔法職がつけるには重すぎる。黒鉄を使うにしても重要な部分だけにしなければいけないだろうとユカナは考えながら計画を立てていく。
まずユカナは裏庭へ行き携帯用鍛冶セットを取り出すと、黒鉄と鉄鉱石を入れて黒鉄合金のインゴットをいくつか作成した。そしてカザハからもらったアーミークイーンアント(亜種)の外殻の一部を加工していく。
「まだまだこっちは慣れてないんだけどね。」
ユカナがその加工に使っているのは【皮細工】というスキルだ。スミスに教えられて勉強中のスキルである。
全て金属の装備をつけている人などほぼいない。防御力としては高いのかもしれないが重いので装備できる人が限られてしまうし、装備が出来たとしても動きが鈍くなってしまうのだ。
なにより、魔物の皮の中には金属に匹敵どころか金属以上の硬度を持った物も多いため防具を作るなら必須のスキルと教えられていた。もちろんシンテツも持っているらしい。
慎重に外殻をちょうどいい大きさに加工していく。外殻の中にも薄い部分があったりするので、その切り取る場所も注意しなければいけないのだ。
教えの通り、集中しすぎて止まってしまいそうな呼吸を止めないようにゆっくりと繰り返しながら、なんとか満足のいく加工をすることが出来た。
次は防具の胸の位置や端に黒鉄合金のインゴットを加工して補強していく。
シンテツからもらった携帯用鍛冶セットは高級な物らしく、今のユカナの腕ならば普通に設置されている炉と同じくらいのことは出来るのだ。もっと高いランクの素材を扱うようになったり、シンテツのような超高度な完成品を作るようになると劣化がわかるらしいのだがユカナはまだその領域まで達してはいなかった。
轟々と炎を上げる携帯用鍛冶セットの炉の前でユカナは無心で鎚を振るっていく。
完成形をイメージしつつ、シンテツの動きを出来る限りトレースするのだ。
汗が流れ、目に入ったりするがそれは気にならない。金属の声を聞け、お前なら出来るはずだ。シンテツに言われた言葉を思い出しつつ直感と経験に従い振るっていく。
ここにはユカナしかいないが、もし他に誰かいたとしたらその姿に見惚れていたかもしれない。それほどユカナが鍛冶をする姿は美しかった。
「ふぅ。とりあえずは完成。でもまだまだだなぁ。」
自分の作成した装備を鑑定しながらユカナが呟く。
<軍隊赤蟻の胸当て(ガク用)>
VIT +100
耐久 200/200
炎耐性(微小)
品質 高品質
装備ランク 8
作成者 ユカナ
ユカナによってガクのために作られた軍隊赤蟻の外殻と黒鉄合金を使った胸当て。軽く、重要部分を黒鉄で覆っているため防御力が高い。専用装備として作られたためサイズ調整不可。
<軍隊赤蟻のすね当て(ガク用)>
VIT +60
耐久 180/180
炎耐性(微小)
品質 高品質
装備ランク 8
作成者 ユカナ
ユカナによってガクのために作られた軍隊赤蟻の外殻と黒鉄合金を使った脛当て。軽く、重要部分を黒鉄で覆っているため防御力が高い。専用装備として作られたためサイズ調整不可。
<軍隊赤蟻の靴(ガク用)>
VIT +10 AGI +20
耐久 180/180
炎耐性(微小)
品質 高品質
装備ランク 8
作成者 ユカナ
ユカナによってガクのために作られた軍隊赤蟻の外殻と黒鉄合金を使った靴。軽く、重要部分を黒鉄で覆っているため防御力が高い。専用装備として作られたためサイズ調整不可。
エニシ用の者もほぼ同じ性能だ。エニシの方は靴がちょっとうまくいったようでVITが+12だったが他は変わりは無い。
ランク8の装備としては破格の性能ではあるのだがユカナはシンテツやスミスのようなはるかに上の存在を知っているので満足は出来なかった。
そのとき部屋にきゅるるーと言う音が響いた。いつの間にかかなり時間が経っており、満腹度減っていたのだ。カザハたちが帰ってくる前に何かつまんでおこうかなと、携帯用鍛冶セットを片付けながらユカナが考えていた時、玄関の扉が開く音がした。
「ただいまー。」
カザハの声に続いてこちらに向かってくる足音が聞こえてくる。携帯用鍛冶セットをアイテムボックスに収納したユカナが部屋に戻るのと、カザハたちが部屋に入って来るのはほぼ同時だった。
部屋に戻ったユカナが見たのは、カザハとエニシが満足げな顔をしており、ガク1人だけが疲れたような顔をしている姿だった。
◇----登場人物ステータス----◇
<登場人物1>(スキルレベルアップ)
名前:ユカナ
種族:銀狼族
職業:付与術師
副職業:鍛冶師
称号:『神級鍛冶師の弟子』、『鍛冶師ギルドのお墨付き』、『世界を股にかける者』、『神のきまぐれ』、『坑道名人』、『ドワーフ王の教え子』
Lv23
HP 446/446 MP 240/240
STR 156 VIT 127
INT 271 MID 176
DEX 415 AGI 278
LUK 86
(スキル)
【付与術 Lv26】、【採掘 Lv12】、【鍛冶 Lv38】、【皮細工 Lv19】、【***】、【***】、【***】
(装備)
武器 黒鉄の杖
頭 なし
腕 軍隊赤蟻の小手(ユカナ用)
上半身 軍隊赤蟻の胸当て(ユカナ用)
服 森林狼のローブ(ユカナ用)
下半身 軍隊赤蟻のすね当て(ユカナ用)
足 軍隊赤蟻の靴(ユカナ用)
アクセサリ なし
アクセサリ なし
ガクの料理の腕に感服したカザハたちはその腕を利用して製菓店を出店しようと画策する。店を開いたものの全く手伝わない3人についにガクの堪忍袋の緒が切れた!
次回:食べる専門の人に苦労はわかりません
お楽しみに。
あくまで予告です。実際の内容とは異なる場合があります。




