エピソード3
店を閉めて10日が経過したが今でも時折、祝福の旅人らしき者が店の周りをうろついているため開店していなかった。まあ店については鍛冶で作ったものの在庫処分程度のものと考えており問題はなかった。
男はあれから自分自身の剣を一本も打っていない。理由はただ単に気が乗らないからだ。しかしそのことこそが一番大事であることは確かだった。魂の入らない剣など男が求めるものでは無い。
「おらっ、炎の温度が足らねぇだろ。剣がもろくなるぞ。」
「はい、師匠。」
男の声にスミスが空気を送り込むペダルを踏む。炎の勢いが増し、微妙に色が変わる。その炎に金属の塊を突っ込み、十分に熱するとスミスが鎚を振るっていく。その動きに迷いはなく、一流の職人といってもいいような堂々としたものだった。しかしその動きについても男から指摘が入る。
「1ミリずれたぞ。そのずれを直すために全体がずれていくんだ。ずれたら死ぬくらいの覚悟で振るえ!!」
「はい!」
鍛冶場にスミスと男の声が響く。そして金属を叩く音が続いていく。
「まあまあだな。これなら問題はないだろう。」
「あっ、ありがとうございます。」
砥ぎまで終わった出来上がったばかりの剣を見ながら男が言う。スミスが打ったのは近衛騎士団から注文があったブロードソードだ。刀身の中心に溝が掘られた両刃の剣であり、その柄はS字を描くように作りこまれていた。
鋼鉄製で魔術的な要素は一切入っていない剣ではあるのだが、スミスの打ったその剣はそんじょそこらの魔剣をもしのぐような攻撃力を持っていた。
「よし、じゃあこれからはこの程度の仕事はお前が打て。」
「良いんですか?師匠への依頼だと思いますが。」
男の太鼓判にスミスは嬉しそうにしているが、その一方で少し不安そうな顔もしている。自分が打った武器に自信がないわけでもないし、そこらの鍛冶師よりはよほど良い腕だとは自負している。しかしこの工房への注文は師匠が打つことを期待しての注文がほとんどだ。スミスへの注文もあるが、それは店でスミスの防具や武器を見て気に入ってくれた者がするもので、どちらかと言えば冒険者などが多い。このように騎士の剣を打つようなことは少なかった。
「良いんだよ。少なくとも相手の要求以上の物を作ってんだ。もし文句を言うようならこっちから断ってやらぁ。」
男はそんなスミスの心配など屁でもないと言うかのように言い放つ。
このスミスが打った剣はその言葉通り注文以上の品質であるし、男にとって剣は誰が打ったかではなく、どう使えるかが重要であり、性能さえ良ければ自分が打ったのかどうかなど些末な問題に過ぎなかった。
そんな男の様子を見てスミスはやれやれと言う顔をしながらも、その口調は明るかった。
「わかりました。私が打っておきます。それはそうと新しいダンジョンが発見されたようですね。」
「なんだと!!どこだ!!」
先ほどまでと打って変わって男が鬼気迫る表情になる。その体からは不可視の圧力のようなものが放たれ、スミスは自分が巨人にでものしかかられているように感じた。しかしいつものことなのでそこまで焦りはしない。
「王都から北東へ20キロ程度行ったところで最近発見されたそうです。なんでも・・・」
「よし、行ってくる。」
スミスの言棄を最後まで開かず、男は工房出口の2刀を装備するとすぐさま工房を出ていった。後に残されたのはプレッシャーから開放され、少し安堵した様子のスミスだけだ。
「なんでも祝福の旅人たち専用のダンジョンらしくて、我々は入れないのでギルド等に依頼するしかなさそうですよって言いたかったんだけれど・・・まあいいか。一応メールを送っておこう。」
スミスはステータス画面からメールを打つと、そのまま騎士団の注文のブロードソード作りを再開した。
十数分後、ダンジョンのゲートの前に男はいた。そのゲートをくぐり何人もの冒険者風の男たちがダンジョンへと入っていく。
ダンジョンとはこの世界とは違う世界への入り口とも言われる。ゲートと呼ばれる門をくぐると、その先は今までの地形、気候とは全く異なるなんてことは当たり前だ。その出現方法も、理由も明らかになっておらず、そして消滅する原因もわかっていない。
わかっているのはダンジョンにある素材は地上にあるものと異なった特殊なものが多く、男のような鍛冶師などの生産職にとっては未知なる素材と出会う可能性のある非常にありがたい場所であるということだった。
そのゲートの前で男は苛立っていた。入ろうとしてもゲートに弾かれてしまうのだ。
男は今まで存在を知ったダンジョン全てを探索しているが、内部の構造が非常に厄介で攻略が難しいものはあったが、入り口で弾かれてしまうようなものは無かった。しかも拒まれて入れない自分の隣を不思議そうにしながら冒険者たちがダンジョンへと入っていくのだ。
「結界か?」
あまりメジャーな魔法ではないが【結界魔法】と呼ばれるものが存在する。代表的なものは神殿などに設置されている悪魔を拒む結界だろう。入れる者を選別する結界は高位の結界魔法使いしか使えないはずだがダンジョン自体がそもそも不可思議な存在なのだ。入り口に結界のあるダンジョンもあるのかもしれないと男は考えた。
男がアイテムボックスから一本の剣を取り出す。いや、それを剣と呼ぶべきなのだろうか。丸い芯棒に所々に四角い板のようなものが飛び出したまるで巨大な鍵のようなものだった。
男が目を閉じ、精神を集中していく。男の周りに風が集まり、竜巻のように上空へと吹き上げていく。
そして男がカッ!と目を開くとその風は四方八方へと荒れ狂い、その様子を見ていた冒険者たちを吹き飛ばしていった。それに構わず男はダン!っと足を踏み込み、見えない壁へとその大きな鍵を突き刺した。
「開錠せよ!ツラヌキ!」
そう男が叫び、その鍵をひねると男を阻んでいた不可視の何かがパリンっと言う音とともに、キラキラと光りながら消えていく。
「よし、行くか。」
男は意気揚々とダンジョンに入ろうとして、見えない壁に顔面をぶつけた。男の行動にしんと静まり返っていたその入口に、ごんっと結構いい音が響き渡る。その男の様子を見ていた冒険者たちがざわつく。男がキッ!と睨みつけると静かになったが。
男は怒っていた。これほどコケにされたのはここ最近では覚えがない。それが例え人ならざるものによるものであったとしても。ゲートごと斬っちまうかとも思ったが、そうするとダンジョンに入れなくなってしまうので意味がない。男が悩んでいると。男の元へとトコトコと近づいてくる者がいた。
「ダンジョンに入りたいの?」
「ああん、なんだチビ。」
男に近づいてきたのは背が男の胸のあたりまでしかない小さな少女だった。胸のあたりまであるといってもそれはぴんと立った耳まで含めてだ。その毛は金色をしており、整った顔立ちだが、きれいというよりは可愛いという言葉が似合う。ショートカットの髪とその半袖にショートパンツの上に皮の軽鎧を装備した、その動きやすそうな恰好からも活発そうな印象を受ける少女だった。
「チビじゃない。カザハだよ。」
「おお、悪かったな。チビ。それにしてもお前、狼人族じゃねえな。金狼族か?」
男の目がスッと細められる。面倒くさいものを見つけてしまったとでも言うかのように。
「だからカザハだって言ってるでしょ!でもよくわかったね。私の種族を当てたのはお兄さんが初めてだよ。ランダムでレア種族が当たったの。」
「お前、自分の立場わかってるか?」
「立場?」
カザハが首を傾げ、何のこととでも言うかのように男を見つめる。その様子を見て男は面倒くさそうに頭をがしがしとかきながらも説明してやる。
「確かに金狼族は珍しい種族だ。魔法はほぼ使えないが近接系では最強の一角だろう。成長すれば【金狼化】という狼に変身する技も使えるしな。」
「ほんとに!?うわ~すごく格好いいね。」
カザハが飛び上がらんばかりに喜ぶ。その様子を見てはぁっとため息をつきながら男は言葉を続ける。
「そして【金狼化】した金狼族は密猟者に狙われる。金狼の毛皮は高級品だ。貴族の間ではかなりの高値で取引されるしな。まあその前に人さらいに狙われるな。隷属化してレベルを上げられ、そして最終的には狩られる。最近は隠れ里以外で金狼族を見たことはないぞ。」
「・・・えっと、本当に?」
「嘘を言う必要がどこにある?」
カザハの顔が青くなる。ようやく自分がいかに危ない立場なのかわかったかと、男は再びため息をついた。
◇----登場人物ステータス----◇
名前:unknown
種族:unknown
職業:unknown
称号:unknown
Lv***
HP *****/***** MP ****/****
STR ***** VIT *****
INT **** MID ****
DEX ***** AGI *****
LUK ***
(スキル)
unknown
(装備)
武器 unknown
頭 なし
腕 なし
上半身 unknown
服 unknown
下半身 unknown
足 unknown
アクセサリ unknown
アクセサリ unknown
その少女との出会いが男の運命を変える。後ろ指を指されるようになった男に未来はあるのか?
次回:俺はロリコンじゃねえ
お楽しみに。
あくまで予告です。実際の内容とは異なる場合があります。
やっとプレイヤー登場。
読んでいただきありがとうございます。
3/28 全般の文章を加除しました。
4/12 登場人物ステータスを追加。




