エピソード30
《ワールドアナウンスです。『ドワーフ自治国 初級坑道ダンジョン』のボス、シルバーゴーレムがカザハ、ユカナのパーティにより初討伐されました。》
《『ドワーフ自治国 初級坑道ダンジョン』のボス、シルバーゴーレムを初討伐したため、カザハとユカナは称号『坑道名人』を手に入れました。》
ワールドアナウンスが流れる中、四肢と首を切断されたシルバーゴーレムが光の粒子となって消えていく。残されたのは10個の銀鉱石と2つの宝箱だけだ。
カザハが小太刀を振り、チンっという音をさせて鞘に収める。シルバーゴーレムだし、ゲームなので血が付くわけではないのだがなんとなく気分である。ボス戦なのでさすがによそ事をせずにサポートをしていたユカナもふぅっ、と息を吐いて肩の力を抜いた。
実際彼女にとって初めてのダンジョンの初めてのボスであり、既にダンジョンを攻略しているカザハに比べ緊張していたのだ。
「お疲れ。」
「うん、ユカナもお疲れ。それにしても手応えがなかったわ。」
「まあね。ぼくもあまりヘイトを取らないようにサポートしただけで済んじゃったしね。」
2人がちょっとがっかりしたような表情で顔を見合わせる。実際シルバーゴーレムとの戦いは呆気ないものだった。カザハにとっては行動パターンが散々倒してきたアイアンゴーレムとほぼ一緒だし、一撃の威力と速さ、そして耐久が上位になっているだけといった印象だったのだ。HPの残りが20パーセントを切った時に、目の色が赤色に変わって赤いオーラを纏いながら速度や攻撃力が2倍くらいになったがそれでもカザハにとっては十分に対応できる速度だった。はっきり言ってこれがボス?と疑問に思ってしまうほどだったのだ。
ただこれは【斬鉄】スキルを持っているカザハだからこそ出来たことだ。普通のパーティがこのシルバーゴーレムに立ち向かおうとすれば、高い物理耐性、そして銀という金属の特性である高い魔法耐性により攻撃の決め手がなく長期戦を余儀なくされるだろう。そして一撃の威力が高いため一瞬でも気を抜けば瀕死になる可能性のあるとてもやりにくいボスの部類に入るはずだった。
しかしそんなことに2人は気がつかない。魔法攻撃はしていないし、普通に斬撃が通ってしまったからだ。
「まあいっか。とりあえず称号の確認しよ!」
「そうね。」
称号:坑道名人
坑道を知り尽くした者に送られる称号。地形【坑道】におけるステータス5%アップ。採掘、採取などの回数増加。
「うん・・・カザハ、採掘頑張って。」
「そうね、私この街でスカウトされそうよね。素材ハンターと坑道名人があれば普通より多く採掘できるだろうし。」
2人でユカナのステータス画面を覗き込んでいたが、ものすごく採掘向きの称号だった。カザハにとってはありがたい称号ではあるが改めて坑道名人と言われると、なんというか筋肉ムキムキの笑顔が似合うつるはしを担いだ男のイメージがしてしまい、ちょっともやっとしてしまうのだ。
それをごまかすようにカザハはボスドロップの銀鉱石をアイテムボックスに回収する。
「じゃあお楽しみの初討伐報酬でも見てみる?」
「見る見る~。」
ユカナが元気よく手を挙げるのを微笑ましく見ながらカザハが宝箱へ手を掛けようとして止まる。そして何かを考えるような顔をした後、ユカナの方をゆっくりと見た。
「どうしたの?」
そんなカザハの様子をコテンっと首をかしげながらユカナがみる。するとカザハが1歩引き、宝箱から離れた。
「ユカナが開けるといいよ。私は前に開けたことがあるし。」
「いいの!?・・・でもやっぱり一緒に開けよ。せっかくだし。」
「うん。」
カザハの言葉に思わず開けてしまいそうになったユカナだったが、これは2人で協力してとった初討伐の宝箱なんだからと思い直し、一緒に開けることにした。
ユカナがカザハの手を取る。そして一緒に宝箱の蓋へと手をかける。2人の顔に浮かんでいるのは笑顔だ。
「いくよ、「せーの。」」
2人の手によって宝箱が開かれる。
その中に入っていた物を見て嬉しそうな表情が変わり、不思議そうに2人が首をひねる。もう片方の宝箱も開いてみたが同じ物が入っていた。
「ねえ、これってどう見たって・・・」
「うん、工事のおじさんとかがかぶってるヘルメットだよね。」
2人がそれぞれヘルメットを取り出す。全体が黄色で緑の二重線と十字のマークが書かれ、安全第一という文字が入っているまごう事なき安全ヘルメットだった。無駄に目を保護する透明なシールドまで内蔵されている。
<銀人形の安全ヘルメット>
VIT +150 DEX +60
耐久 600/600
物理耐性(中)、炎耐性(中)
品質 上級
装備ランク ユニーク
作成者 シルバーゴーレム初討伐報酬
シルバーゴーレムの初討伐報酬。譲渡不可。非破壊。ボスの性質を引き継ぎ物理、炎に耐性がある。坑道で働くあなたの必需品。
「うわっ、無駄に高性能。」
「うーん。性能はいいんだけど見た目がダメね。」
鑑定を終えた2人がとても微妙な顔をする。性能としては申し分がない。申し分はないのだがこれをかぶった瞬間にAWOの世界観が崩壊する未来しか想像できなかった。滑稽を通り越してもはやシュールなお笑いのようだ。
「ぼくは鍛冶するときに装備しようかな。誰にも見られないしDEXが60も上がるのは大きいしね。炎耐性もあるし。」
「じゃあ私は1人で探索するとき用かな。もちろん人がいない場所を。」
2人がはぁ~っとため息をつく。特に合わせたわけではないのだが、ぴたりと合ってしまったことになんとなくお互いに苦笑いする。せっかくのユニーク防具だが衆人の目に触れることはなさそうだった。
2人は安全ヘルメットをアイテムボックスに入れると、部屋の奥で光っている魔法陣に向けて歩いていく。その魔法陣に乗ればダンジョンの出口まで一気に帰ることが出来るのだ。
「で、ダンジョンを初クリアした感想は?」
「うーん、ぼくはほとんど攻撃してないからちょっと暇だったかな。」
「ユカナ、攻撃手段がほぼないからね。」
「そうなんだよね。なんか考えようかな。」
2人が話しながら魔法陣を踏む。魔法陣が一際強く光を発し2人の姿がボス部屋から消えた。
ボス部屋には討伐報酬に夢中になってしまったカザハたちに、気づかれずに終わった採掘ポイントだけが、少し寂しそうにキラキラと光っていた。
◇----登場人物ステータス----◇
<登場人物1>(称号獲得)
名前:カザハ
種族:金狼族
職業:剣士
副職業:素材ハンター
称号:『剣聖の弟子』、『鍛冶師ギルドのお墨付き』、『世界を股にかける者』、『一匹狼』、『レアボスハンター』、『神のきまぐれ』、『坑道名人』
Lv24
HP 763/763 MP 145/145
STR 359 VIT 265
INT 124 MID 136
DEX 269 AGI 370
LUK 38
(スキル)
【剣術 Lv27】、【採掘 Lv15】、【斬鉄】、【***】、【***】、【***】、【***】、【***】、【***】、【***】、【***】
(装備)
武器 黒鉄の小太刀(カザハ用)
頭 なし
腕 軍隊赤蟻の小手(カザハ用)
上半身 軍隊赤蟻の胸当て(カザハ用)
服 軍隊赤蟻の道着袴
下半身 軍隊赤蟻のすね当て(カザハ用)
足 軍隊赤蟻の靴(カザハ用)
アクセサリ なし
アクセサリ なし
<登場人物2>(レベルアップ、称号獲得)
名前:ユカナ
種族:銀狼族
職業:付与術師
副職業:鍛冶師
称号:『神級鍛冶師の弟子』、『鍛冶師ギルドのお墨付き』、『世界を股にかける者』、『神のきまぐれ』、『坑道名人』
Lv22
HP 432/432 MP 105/233
STR 150 VIT 124
INT 262 MID 170
DEX 399 AGI 267
LUK 83
(スキル)
【付与術 Lv19】、【杖術 Lv18】、【採掘 Lv8】、【鍛冶 Lv4】、【***】、【***】、【***】
(装備)
武器 初心者の杖
頭 なし
腕 一角ウサギの小手(ユカナ用)
上半身 一角ウサギの胸当て(ユカナ用)
服 一角ウサギのローブ(ユカナ用)
下半身 一角ウサギの脛当て(ユカナ用)
足 一角ウサギの靴(ユカナ用)
アクセサリ なし
アクセサリ なし
鉱山のオーナーからスカウトをされるカザハ。向かった鉱山で出会った鉱山奴隷の青年とのロマンス、そして鉱山利権をめぐる陰謀にカザハは巻き込まれていく。
次回:ほの暗い穴の底
お楽しみに。
あくまで予告です。実際の内容とは異なる場合があります。
4/12 登場人物ステータス追加。




