エピソード19
ギルドを出て、人混みをまたもみくちゃにされながら大通りを抜け、シンテツたちが店へと戻ってくる。
店に入るとそこにはいつも通りカウンターの奥でスミスが座っていた。
「おかえりなさい、用事と登録は済みましたか。」
「ああ、滞りなくな。」
「いや、結構いろいろあった気がするけど。」
「うん、ぼくも。」
「いいんだよ、細けぇことは。スミス、店を閉めて食堂へ行くぞ。今後の予定を伝える。」
「はい。」
スミスが店を閉める準備を始めたので、カザハが入り口を閉め、営業中の札を裏返して準備中に変える。まあ何を準備するわけでもないのだが。
スミスの片付けもすぐに終わり、4人で一緒に食堂へと向かった。
食堂の6人掛けの机に順番に座っていく。シンテツの隣にスミス、正面にカザハそしてその隣にユカナと言う並びだ。
「まあ無事にギルドカードは登録できた。で、今後だが、まずユカナ。」
「はい!」
ユカナが手をピンッと上げる。その姿にシンテツが苦笑し、スミスが微笑ましいものを見るかのように相好を崩す。
「とりあえず部屋を1つ空けてやる。好きな部屋を選べ。片付けはカザハと一緒にやっておけ。ベッドとかの買い出しは・・・カザハは覚えてるな。前と一緒で店につけておけば俺が払っておく。」
「おぉ~、なんか内弟子って感じだね。」
「わかりました。じゃあ片付けしたら買い物に行こっか。」
「うん。」
買い物と聞いてユカナのテンションが上がる。ここにシンテツとスミスがいなければ飛び上がっていたくらいだ。しかもつけだから自分で払う必要もないのだ。
「で、今後の方針だが、スミスから鍛冶を習ってもらうつもりだが【鍛冶】スキルだけ取るのも効率が悪いんでな、まずレベルを20まで上げてもらう。20になればサブジョブを選択できるようになるから、そこで鍛冶師を選んでから本格的な修行の開始だ。」
「噂のサブジョブだね。」
「あー、私も決めてないのよね。まあしばらく時間がかかると思うからいいけど。」
サブジョブとは最初に選択したメインジョブをレベル20まで上げると神殿で選ぶことが出来るようになる第二の職業のことだ。レベルアップ時の成長補正などの効果は無いが、生産職であればその生産活動に補正が入ったり、戦闘職であれば戦術の広がるものなのだ。
「あれっ、カザハって今レベルいくつだっけ?」
「今はレベル15だよ。というかダンジョンをクリアしてからは師匠と稽古ばっかりしていたからスキルレベルは上がったけど、レベル自体は上がってないんだ。せっかくならユカナとレベル上げしたいと思ってたし。」
「ういやつよのう。うりうり。」
「だから耳はやめなさいって!」
ユカナがカザハの耳や尻尾を狙って手を伸ばし、それをカザハが防ぐじゃれあいがしばらく続く。それは2人がシンテツやスミスの生暖かい視線に気付くまで続いた。
「「すみません。」」
「まぁ、仲がいいのはいいことだがな。それでだ。ユカナの修行をすると言ってもこの店には銅や鉄なんかは合金に使う程度で在庫はあまりない。だが街で最近の高い値段で仕入れるのも馬鹿らしい。ちなみにスミス、ミスリル以上の鉱石系の素材の在庫状況はどうだ?」
「まあしばらくは大丈夫ですが、あれば欲しいですね。」
「そうか。じゃあレベル上げと素材確保をかねて明日からしばらく旅に行くぞ。スミス、後は任せる。店は開けんでもいい。」
「わかりました。」
カザハとユカナの意見も聞かずとんとん拍子に話が進んでいく。もっともカザハもユカナも特に予定はなく、やるとすれば2人でレベル上げでもしようかと思っていたぐらいなので特に反対はしなかった。
「あの、素材確保ということはラテトラ?私もユカナもフィールドボスを倒していないからボス戦の準備しないと。それにユカナのレベル上げもしないとダメだから明日はさすがに無理じゃない?」
そうカザハが言い、ユカナがうなずく。街を移動するためにはその間に出現するフィールドボスを倒さないと次の街へはたどり着けない。そしてフィールドボスは威力は弱いが全体攻撃を持っているという情報はすでに知れ渡っていた。
カザハであれば問題は無いがレベル1のユカナには致命的だ。そんな賭けをするくらいなら、しばらくこの周辺でレベル上げしてちゃんと準備をした方がいいのでは、そう2人は考えたのだ。
しかしシンテツの返事は2人の想定を覆すものだった。
「はぁ!?なんであんなクズ鉱山に行かんといけねぇんだ。もっといい場所に連れてってやるから安心しろ。あとはそうだな、スミス、ランク10でも装備できる軽装備を作ってやれ。」
「わかりました、でも2人は大丈夫なんですか?」
「まあ、ミスリルカードもらったし問題はねえだろ。」
「なんか不穏な空気がするんだけど。」
「奇遇だね。ぼくもだ。」
その後2人が明日旅立つ場所について何度聞いてもシンテツとスミスははぐらかすだけでどこに行くかは最後までわからなかった。しまいにはシンテツが切れて、カザハとユカナの首を猫を持つように掴み、持ち上げると倉庫代わりに使われているカザハの隣の部屋へと放り込んだ。バタンッと乱暴に締められたドアを見て2人が諦める。
「仕方がない。部屋の掃除と買い物に行こっ。」
「だね。街の案内もついでによろしく。」
不安は残るが、一緒の屋根の下で暮らせること、そして自由にできる自分の部屋が出来たことに2人は満足し、部屋を片付けると、あーだこーだ言いながら買い物を済ませていった。
雑貨屋や家具屋にはプレイヤーはほとんどおらず、シンテツのおごりということもありユカナはいらないんじゃないかなという猫の置物なんかも買っていく。その様子をカザハは苦笑いして見ていた。
屋台で買い食いをしたり買い物を十分満喫している2人は知らなかった。明日自分たちをフィールドボス以上の恐怖が襲うことを。
◇----登場人物ステータス----◇
前回と変更なし。
<登場人物1>
名前:カザハ
種族:金狼族
職業:剣士
称号:『剣聖の弟子』、『鍛冶師ギルドのお墨付き』
Lv15
HP 482/482 MP 100/100
STR 223 VIT 191
INT 91 MID 100
DEX 162 AGI 232
LUK 28
(スキル)
【剣術 Lv19】、【***】、【***】、【***】、【***】、【***】、【***】、【***】、【***】
(装備)
武器 黒鉄の小太刀(カザハ用)
頭 なし
腕 軍隊赤蟻の小手(カザハ用)
上半身 軍隊赤蟻の胸当て(カザハ用)
服 軍隊赤蟻の道着袴
下半身 軍隊赤蟻のすね当て(カザハ用)
足 軍隊赤蟻の靴(カザハ用)
アクセサリ なし
アクセサリ なし
<登場人物2>
名前:ユカナ
種族:銀狼族
職業:付与術師
称号:『神級鍛冶師の弟子』、『鍛冶師ギルドのお墨付き』
Lv1
HP 140/140 MP 70/70
STR 35 VIT 36
INT 64 MID 54
DEX 73 AGI 69
LUK 25
(スキル)
【付与術 Lv1】、【***】、【***】、【***】、【***】
(装備)
武器 初心者の杖
頭 なし
腕 なし
上半身 初心者の胸当て
服 初心者のローブ
下半身 なし
足 初心者の靴
アクセサリ なし
アクセサリ なし
ユカナが買った猫の置物は呪われたアイテムだった。夜な夜な集まってくる猫たち、睡眠を邪魔されたシンテツが今立ち上がる。
次回:集会はよそでやれ!
お楽しみに。
あくまで予告です。実際の内容とは異なる場合があります。
4/12 登場人物ステータス追加。
4/14 加除修正しました。




