白くてふわふわの君
僕たちが出会ったのは、あの日だよね?
「クゥゥ〜〜ン…………」
そう喋ってみたけれど、やっぱり駄目みたい。
僕達の言葉は人間には分から無いんだもんね?
僕はこんなにも、貴女が大好きなのに。
「クゥゥ〜〜ン…………」
気持ち良いよ、有難う。
って、伝わって無いよね?
今日も大好きなご主人様はお膝の上で優しく、毛を撫でてくれた。
うはぁ〜〜凄く……スッゴク気持ちいいよ?
あ……しっぽを振りすぎちゃったかな?
「……嬉しいの〜?チロル〜」
でも、気づいてもらえたから良いや。
ご主人様が僕の名前を呼んでくれた。
それだけでも、僕は幸せだよ。
僕より何倍も大きなご主人様。
良い匂いがするご主人様。
ご主人様もね、僕から良い匂いがするって言ってくれたんだ。
僕はご主人様にギューッって抱っこしてもらうのが、
1番好き。
だって温かいんだもん。ご主人様。
本当は僕だってギューッてしてあげたいのにな……。
「クゥーン……」
少し悲しそうに鳴くと、ご主人様が、
「どうしたの?」
って声をかけてくれた。
そして、僕の大好物のビーフジャーキーを持って来てくれた。
やっぱり、優しいなぁ僕のご主人様。
「チロル〜〜ビーフジャーキーだよ〜〜あ〜ん」
本当はあ〜ん。って食べたいんだけれど、
上手く出来ないや……。
でも、有難う。ご主人様。
夕方の散歩の時間になった。
僕の首輪にリードを付けてくれた
お散歩大好きだよ。
僕みたいな犬だったら皆好きなんじゃ無いのかな?
「チロル〜〜行くよ〜」
は〜い。
ご主人様が玄関の扉を開けてくれた。
新鮮な空気の匂いがする。
お散歩楽しみだ。
スタスタとご主人様が歩き始めた。
僕も歩きだす。
アスファルトが少しひんやりとしているなぁ。
何時ものお散歩コース。
僕、一通り覚えたんだよ。
ふと、後ろを振り向く。
ご主人様は僕を見て微笑んでくれた。
ねぇ?ご主人様。僕は本当にあの日、出会えて嬉しかったよ?
僕はあの日、段ボールの中に居た。
その日は雨が降っていて………寒くて、寒くて……震えてた。
そしたら、いきなり雨が止んでどうしたんだろ?
って思ったら上には、傘を差して、しゃがんでる 女性が居た。
ん………人間だ……怖いよ………。
僕は人間に捨てられたんだから。
そしたら、段ボールごと僕を抱えて彼女のお家に連れてってくれた。
傘を閉じて、段ボールにタオルを被せて、
自分は濡れちゃうにも関わらず、
「急がなきゃ………」
って走ってくれた。
僕………?そんなにも危ないのかな?
でも、なんだか目線が合わなくなって来たや………どうして……だろ?
ゼェ……ハッ…ハァ……
「着いた」
その時、ご主人様は息を切らしてた。
僕の為にそんなに一生懸命にやってくれたんだ。
次に温かいシャワーが僕の体に降ってきて、犬用シャンプーで、
僕を洗ってくれた。
ブル……ブルブル………
終わった後に体をブルブルと震わせる。
フサッ…………。
上からタオルが落ちて来た。
グワシャ……グワシャ……
彼女は僕の体をタオルで拭いてくれた。
「大丈……夫?」
僕が上を見上げると優しく問い掛けてくれた。
「ワオオオ〜〜〜ン」
大丈夫だよ。と伝える。
伝わったのかな?
「元気みたいだね〜」
うん。どうやら伝わった見たいだ。
「お腹すいたよね〜?ご飯食べよっか」
………有難う。僕、もうずっと何も食べてないんだ。
ご主人様はそう言うとドッグフードをお皿に盛って、
僕の前にどうぞと差し出してくれた。
ハグハグハグ……ムシャ…ムシャ。
んまぁ〜〜〜〜い。
やっぱり、久しぶりのご飯は最高だ。
《良かった………》
………ワンちゃん、ちゃんと食べてくれたみたい。
良かった………。まさか、犬が欲しくて色々と準備してたのが役立つとは。
出来れば、この白いワンちゃんが欲しいんだけどな…………。
「ワンちゃん、もし良かったら私の家に住まない?」
「………………ワン」
…………きっと、良いってことだよね?
………じーーーっ……。
ワンちゃんがこちらをジッと見つめてくる。
《そうだ……名前…考えないとな………》
う〜ん………。何が良いかな?
このワンちゃんは白くてふわふわしてて……。
くるくるした目………。
チョコ?いや茶色じゃないし。
ホワイト?なんかパッとしないなぁ……。
机の上に置いてあったのは………はっ
先程、買いに行った大好物のチロルチョコ5箱。
チロル………。
「チロル」
「ワン」
成る程………そうか、チロルか。
甘くて、うん。美味しそうな名前だ。
僕の新しいご主人様は顔を緩ませて、僕に向かってニコッて笑ってくれたのを覚えてる。
それから、僕は貴女を好きになっていったのだから。
僕(犬)とご主人様(人間)の恋なんて叶わない。
僕が望むことーーーーそれは、命尽きるまで貴女の傍に居ることを
お許し下さい。
どうか、僕を貴女の傍に置いて下さい。
だけどね、僕は伝え続けるよ?
例え届かなかったとしても、伝わらなくても
毎日、貴女が好きだって伝え続けるから。
「チロル」
「ワン」
だから、どうか……この幸せがずっと続きますように。
〜END〜