閑話~男な女~
閑話というよりは繋ぎですね。
(私の未熟さ100%配合)
目を見開いて固まった女に手を差し出す。この力が何に使う為の力なのかは大体分かった。幾ら世間知らずの俺でも知っている、魔法を使う為の力らしい。
そもそも俺は謎の力を感じたから喧嘩を売ってみただけであって、何も殺そうとした訳ではない。更に、この女は俗に言う魔法使いの様だ。手から、綺麗に針の形になった電気を発射したからには嘘だとは言えないだろう。その時に力がガクッと減ったからもしかしたらこの世界の魔法使いの中では雑魚なのかもしれないが。
「何のつもり?」
女が苛々を隠さずに言葉を発する。傍目からは怒っている様にしか見えないが、彼女から感じるのは困惑だ。意味が分からないから怒るって事はどうやらこの女はプライドが高いらしい。
「お前、魔法使いだろ? 俺に魔法を教えろ」
だからここは俺が優位に立つ。ボス曰く、強気な奴程根は弱いらしい。他勢力との交渉で自らの勢力を拡大させてきたボスの受け売りだ。間違いは無いだろう。
「…………」
女が俺を見詰める。そして目を瞑り、暫くして目を開くと盛大な溜め息を落とした。
「今この状況で、私に選択肢なんて無いじゃない。……良いわよ、教えるわよ」
ただし、と前置きしてから女は精一杯の殺気を放ちながら続ける。
「私の代わりに緊急依頼を完遂してちょうだい」
断れば殺されるであろう状況で、絶対的優位に立った相手に交換条件を持ち出す。この行為がもたらすであろうデメリットを考えると、普通の人間ならしない事だ。それは彼女にとって命を賭けた大博打になるから。だが、彼女はそれでも交換条件を持ち出した。それほどまでに、彼女にとって緊急依頼とやらは大事な物なんだろう。
……雑魚かと思ったら、中々男じゃねぇか。一本、譲れない柱が立ってるって事はこいつは強いって事だ。
「あぁ、カンスイしてやる」
だったら、その勇気に免じて頷いてやるのが真の男ってもんだ。女に男気で負ける男は闇医者に女にして貰えば良い。
女は深い溜め息を吐いた。それは魔法を教えると約束した時のものより遥かに明るい溜め息だった。
「良かった。殺されたらどうしようかとドキドキしてたの」
そう笑顔で言うと、ようやく女は俺の手を掴んだ。そして女を引っ張り上げて………。
「ウッ………」
そのまま倒れ込んだ。
「ダメ、身体に力が入らないわ。誰かさんが凄い力で殴るからよ」
動けない彼女はそう悪戯な笑みを浮かべる。どうやら俺への警戒心は解けたらしい。理由は今一不明だが、まぁ考えても仕方ない。
俺は、軽口を返しながら彼女の回復を待つ事にした。