序章~装填~
他2つが八方塞がりになったのでちょっと息抜きを。
練習がてら私のストレス発散になったら良いかなと思いまして。
読んで下さった方、是非アドバイスや感想を! ……わりと切実に。
人気の少ない倉庫が、真っ赤に染まっていた。衛生面は完璧な筈の食料品の倉庫を染め上げたのは、硫黄の匂いを発する鉛の玉。そして、1人の青年。青年はその背に、自らの命よりも大事な者を隠している。
青年に庇われている老人は、先程から必死に青年を逃がそうとしていた。
「隆盛! 俺に構うなと言った筈だ! これは、ボス命令だぞ!?」
そんな、悲しみを帯びた自らのボスの命令に首を横に振り、青年は老人の盾になる。もうすでに致死量を超えた血液が隆盛の身体から流れ出ていた。だが、決して倒れない。
「俺は……ボスを、守るのが……仕事だッ!」
口から血が溢れるのも気にしない彼は、自らの意志を絶対に曲げようとしなかった。
彼、隆盛は捨て子である。餓死寸前の彼を引き取って育てたのが、隆盛に守られている老人の通称ボス。御察しの通り、隆盛含めたマフィアの団染ファミリーは敵対マフィアと抗戦中だ。だが団染ファミリーはボスの年齢も相まって衰退の一歩を辿っていた。対して敵対マフィアは今一番勢いのあるファミリー。隆盛の仲間が裏切るのも自然な事だ。
「隆盛! お前の代わりに生き延びても嬉しくないわぁ! 下がって俺の華々しい最期を見届けろ!」
相も変わらずボスは隆盛の説得を続けるが、隆盛は首を横に振るのみ。
だが、両者共に頭では理解していた。どちらにせよ助からない事など。だが隆盛達二人に進展が無くとも、例え未来が無くとも銃弾は降り注ぎ隆盛の体内に収まっていく。
そして、数え切れない銃弾を隆盛が体内に納めた頃、遂に相手の銃弾が完全に尽きた。真っ赤な倉庫に静寂が訪れ、俯いていた隆盛が顔を上げる。
「ヒッ!」
その瞳は爛々と輝き、身に纏う覇気もより一層力強さを増していた。隆盛の背後にいるボスでさえ言い知れぬ恐怖を感じた。
「……俺の、番だな?」
感情の一切無い隆盛の呟きが倉庫に響く。その場にいる誰もが思わず空調システムに目をやる位に温度が下がった。
ジャリッと。地面と小石が濡れた靴に擦られて音を立てた。そして一拍置いた後にチャリンッと金属が地面とぶつかる。
ただ一歩だけ隆盛は踏み出し、虚しいカチカチッという音が響いた。弾切れは分かっているのに、向かってくる恐怖の存在に引き金を引かずにはいられない。しかしそんな事は関係無いとばかりに隆盛は更に一歩踏み出し、その場から消え去った。
次の瞬間、マフィア構成員の1人が残像を残して吹き飛んだ。遅れて衝撃音と衝突音が鼓膜を揺らす。そこには、身体から銃弾を溢す隆盛が右の拳を振り切った姿で立っていた。が、再度瞬きした直後には離れた場所の構成員が赤い花火を咲かせていた。
次々構成員が死んでいくが、理解した時には既にそれは過去の出来事。また別の構成員が死んだのが目に映る。
こうして、隆盛は自らのボスを守りきった。
◆ ◆ ◆
とある病院に遺体が運びこまれた。その亡骸の傍らで声を殺して泣くのは軽傷の老人。
「殺すのは、得意な筈なんだがなぁ……」
そう真っ白の天井を見上げて呟くと、老人は声を出して泣いた。
団染ファミリーのボスは、独りになって初めて殺しに失敗した。
途中で方向性が迷子に……。
自分の実力の無さを痛感しました。(>_<)