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「愛なんて感情は無駄なものだ、馬鹿馬鹿しい」と言っていたツンツン婚約者がデレ始めた件について  作者: あろえ


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第35話:エピローグ

 ラブロマンス化プロジェクトが発足してから早二年。


 一年前に販売された小説が爆発的にヒットしたこともあり、王都で先行お披露目されている舞台化が大きな注目を集めていた。


「原作通りの舞台で、本当に良い出来栄えだったわ。まるで夢物語ね」

「でも、実際にはほとんど現実で起きた出来事だそうよ」

「本物の恋愛って甘いのね~」


 舞台を見に来たお客さんの反応は上々で、貴族女性から多くの支持を得ている。


 それは国内だけに留まらず、国外のファンも多数来場し、今や王都は富裕層の観光客で活気づいていた。


 無論、ロスタリカ家とレクレーネ家が治める領地にも、大勢の貴族……という名のファンが聖地巡礼に訪れている。


 私とアルト様が親同士が決めた結婚だったと広まった影響もあり、政略結婚を恋愛結婚に発展させるブームが巻き起こっているのだ。


 婚約者と共にロスタリカ領とレクレーネ領でゆったりとした時間を過ごすことで、恋愛関係に発展する噂が流れている。


 そのため、急ピッチで宿泊施設やカフェが建設されて、交流会を開く婚約者たちで溢れていた。


「あなたって、意外に頼もしいところがあるのね」

「君の素敵な笑顔を守りたいと思っただけだよ」


 雰囲気に流されているのか、恋愛意識を強く持った影響なのかはわからない。


 次々に恋愛関係に発展する貴族たちが現れ、とても甘い光景が広がっている。


 ただ、明らかに舞台化の影響を強く受けている人もいた。


「はい。私が丹精込めて作った刺繡入りのハンカチよ」

「ありがとう。これを君だと思って、一生大事にするよ」


 私のおぞましい黒歴史を再現しないでほしいが、もはやこの流れを止める術はない。


 アルト様に、絶対に現物だけは見せないように強くお願いして、見なかったことにした。


 一方、真の原作ファンというべきか……現実に私たちを見ていた貴族からは、不満の声が上がっている。


「舞台で満足できるのは、本物を見ていない者たちだな」

「甘味が足りないわよね。もっと幸せオーラを撒き散らしているもの」

「あの虹色に輝く二人だけの世界観が表現できていないんだよ」


 彼らは脳内補正が強く働いて、過去の出来事を美化していると信じたい。


 しかし、最近流れる噂を耳にする限り、それが事実なのではないかと納得せざるを得ない部分もあった。


「あの二人はマンネリ化を知らないのか?」

「いや、マンネリ化した結果、ああなったんだよ」

「マジかよ。俺が知っている恋愛とは違うな……」


 このことをラズリーに相談したところ、未だに無自覚なのね、と言わんばかりに温かい目を向けられてしまった。


 おまけに『ニーナ。彼の匂いで頬が緩む癖がついたみたいね』などと言われ、大変驚いている。


 そんなみっともない癖がついたら、もはや制御不能。


 アルト様の近くにいると、私は自然に頬が緩んでしまう体質になったのだ。


 幸せオーラというのは、それが大きく影響しているんだろう。


 一方、アルト様も似たようなもので、カーシュ様とこんな会話をしていた。


「アルト。彼女のことがそんなに心配か?」

「ん? どうしてだ?」

「無意識かもしれないが、常に彼女を視界の中に入れているぞ」


 これはもう、お互いにどうしようもない。


 私たちは現在進行形で愛を育み、幸せな日々を過ごしていた。


 そんなこんなで建国祭で起きた不穏な出来事は今、我が国を繁栄させる好転の兆しに変化している。


 私たちが落ちた池には、恋愛の神様が宿ったという噂が流れて、建国祭で供物を捧げる文化が生まれていた。


 単純に、三階から池に飛び込む者が現れないようにするための防止措置として、国王様が意図的に噂を流した……ばずだったのだが。


 王城で働く未婚のメイドたちが池でお祈りするようになってから、次々に結婚したり婚約したりしたことで、信憑性が生まれている。


 ましてや、王妃様のお腹に新たな命が宿ったというビッグニュースまで流れたのだから、疑う余地はない。


 実は国王様も恋愛結婚だったのでは? などという噂が広がり、この流れは加速する一方だった。


 そういった状況が続いていることもあって、私たちはパーティーに引っ張りだこであり、外交官よりも外交している。


 今も他国の王女殿下の誕生日パーティーに呼ばれていて、彼女に握手を求められていた。


「わたくし、あの作品の大ファンなの。お二人に会えて光栄よ」

「こちらこそ王女殿下にお会いできて光栄です。このような素敵な日に私たちをお招きいただき、誠にありがとうございます」


 他国の王女様が満面の笑みで対応してくださるのだから、国王様の奇策『ラブロマンス化プロジェクト』は偉大である。


「舞台も初日に見に行かせてもらったわ。お忍びでロスタリカ領とレクレーネ領も回ったけれど、とても良いところね。街の雰囲気も落ち着いていて、治安も良さそうで……」


 キラキラと輝く瞳で見つめてくるだけでなく、話し始めたら止まらないので、本当に作品が好きなガチ勢なんだろう。


 わざわざ王女殿下がお忍びで他国を行動するなんてことも、普通では絶対に考えられない。


 身内の制止を振り切って暴走した結果であると、彼女自身が語っているみたいだった。


 しかし、本日の主役である彼女が、私たちだけに時間を費やすことはできない。


 そのことがよくわかるように、側仕えの方が近づいてきた。


「王女殿下。そろそろ他の方々にもご挨拶を……」

「まだ話し始めたばかりよ」

「いえ、すでに十分は経過しております。このままではパーティーに支障をきたす恐れがありますので、ご了承くださいませ」

「むう……。仕方ないわね」


 側仕えの方が安堵のため息を漏らす中、王女殿下は残念そうな顔を向けてくる。


「もっとお二人と話していたいのだけれど、難しいみたいだわ。だから、最後に一つだけお願いをしてもいいかしら」

「なんでしょうか?」

「お二人の絆を紡いだ刺繡入りのハンカチを見せてほしいの」


 それ以外でお願いします、と即答できないところが、偉い人を相手にしている時の面倒なところだ。


 しかし、すでにこういう時の対応の仕方は学んでいる。


「あのハンカチは、私の分身です。アルト様の傍から片時も離れたくないと、ピッタリくっついておりますので、お見せすることはできません。二人だけの秘密にさせてください」

「まあっ! 未だに甘い関係が続いているというのは、本当だったのね。では、裏話などは――聞いている時間がなさそうね。またお会いできるのを楽しみにしておりますわ」


 側仕えさんが圧をかけたこともあって、王女殿下はしぶしぶと身を引いていた。


 それと同時に、大声では言いにくいことなのか、アルト様が顔を近づけてくる。


「俺たちも舞台を見ておいた方がいいんじゃないか? 今後、話が合わなくなる恐れがあるぞ」

「本当の出来事が八割もあるんですから、見なくても問題ありません。恥ずかしいだけじゃないですか」

「まあ、それはそうなんだが……」

「そもそも、誰のせいで忠実に再現されたと思っているんですか? ()()()()を忘れたとは言わせませんよ」

「……悪い。まさかあそこまでやるとは思わなかったんだ」


 あれは国王様にラブロマンス化プロジェクトを提案された日のこと。


 舞台化するにあたって希望があるか聞かれたところ、アルト様は一つの提案をしていた。


『舞台化するのであれば、可能な限り事実を再現してもらいたいです』


 アルト様の言葉を聞いた国王様は、よろこんで、と言わんばかりの笑みを浮かべて、各方面に協力要請を出した。


 オーダーメイドで作ったドレス屋さんや騎士団の方々、そして、両家の使用人たちなど……。


 あらゆる方面から情報を集めたことで、細かい仕草や表情、ボソッと呟いた言葉まで再現されてしまっていた。


 これもまた黒歴史……ではあるものの、大金が入ってきているので、邪心に負けて許している。


「でも、どうしてあんなことをお願いしたんですか? アルト様にとっても、良い話ばかりではありませんよね?」


 事実に基づいた形で台本を作ろうとしたら、アルト様がツンツンしていた時代も書かなければならない。


 それは決して彼の評判を高めるような行為ではなかった。


 ただ、アルト様は後悔していないみたいで、優しい笑みを浮かべている。


「ニーナが『昔みたいな状態に戻らないなら、嫌いにならない』と言ってくれたからだ。もしものことがあった時、戒めとして残しておこうと思った」


 生涯を通じて、私を大切にしてくれようとした結果なのであれば……、今後は文句を言わないでおこう。


「後、俺はロマンチックな舞台に似合うような男じゃないだろう?」

「いいえ。そういう属性もお持ちだと思いますけどね」

「からかわないでくれ。俺は本音を言うだけで精いっぱいなんだからな」


 それが一番ロマンチックなことだと思いますけどね、などと思っていても、決して口にすることはない。


 なぜなら、この問題を深堀すると、自分に返ってくる恐れがあるのだから。


 その証拠に、パーティーに参加している貴族令嬢たちが作品の感想を言い合っていた。


「ヒロインが愛の告白をするシーン、とってもよかったわよね」

「わかる~。女性側から告白するのが、斬新でいいのよね」


 無論、私が告白したなんて事実()存在しない。


 そう。そんな事実は、存在しないのだ。


 だから、アルト様は呑気な顔を浮かべている。


「舞台化するにあたって、大袈裟に表現された部分が好評みたいだ。ニーナもあまり気にするなよ」


 私が密かに告白シーンを入れたいと提案して、台本づくりに関わったことを、アルト様は知らない。


「噂されることにも慣れてしまいましたから、何も気にしませんよ。今は隣国の方々に失礼のないようにパーティーを楽しみましょう」


 アルト様の腕に頭を寄せた私は、いつもと同じように身を預ける。


 彼と触れ合っている時間が、私には一番楽しい時間なのだから。

最後までお読みいただきありがとうございました!


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