表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「愛なんて感情は無駄なものだ、馬鹿馬鹿しい」と言っていたツンツン婚約者がデレ始めた件について  作者: あろえ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/35

第26話:刺繍

 王都からロスタリカ家の領地に帰還すると、私はすぐに刺繍作業に取り掛かった。


 アルト様が騎士を目指しているので、剣をモチーフにした刺繍にしようと考えている。


 盾や鎧も合わせると難しそうだが、剣だけなら簡単だろう、という浅はかな考えもあった。


 そんな慣れないことをしていると、私の刺繍の腕前を知っている使用人たちは戸惑いを見せている。


「お、お嬢様!? いったい何を……?」

「王都で何かございましたか?」

「わざわざ弱みをさらさなくても……」


 散々なことを言われてしまうが、使用人たちの気持ちは理解できるし、私も完全にそれに同意する。


 しかし、アルト様が熱心に希望してきたのだから、仕方ない。


 自分から模擬戦のお祝いをしたいと言い出したこともあって、作らざるを得ない状況に陥っていた。


 そんな経緯を軽く説明したところ、使用人たちの協力を得ることに成功する。


 眠気覚ましに紅茶をいれてくれたり、使いすぎた腕をマッサージしてくれたり、針で差しすぎた指に塗り薬を塗ってくれたり……。


 とにかく刺繍に集中して、次回のアルト様との交流までに間に合わせようと努力した。


 すると、屋敷の雰囲気が変わってきたことに気づく。


 これまでアルト様の態度が悪かったこともあり、彼の評価はマイナスだったはずなのだが――。


「とても紳士的になったと思わない?」

「わかるー。使用人に声をかける時も、微笑んでくださるのよね」

「お嬢様とも婚約者らしい雰囲気になって、本当によかったわ」 


 いくつか婚約者らしいイベントをこなしているせいか、急激にアルト様の株が上昇している。


 私が熱心に刺繍していることもあって、使用人たちも婚約に前向きな人が増えていた。


「お嬢様の刺繍の腕前を知っても欲しいだなんて……」

「それほどまでにお嬢様を感じたいのね」

「やだ~。そんなの真実の愛だわ」


 そんな彼女たちの声が聞こえてきた私は、温かい紅茶を口にして、心を落ち着かせる。


 私の刺繍は愛がないと持つことができない、そう考えていることだけは覚えておこう。


 これは、決して使用人たちの弱みを握ったわけではない。決してねっ!


 客観的に見た時、そう考えられると思うことが重要なのである。


 なぜなら、作りかけの刺繍入りハンカチを見ても、使用人たちの意見は正しいと思ってしまうのだから。


「はあ~、やっぱり黒歴史だ……。明日は凝り固まった肩もマッサージしてもらおう」


 なんだかんだで、ちゃっかり根に持っている私なのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ