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「愛なんて感情は無駄なものだ、馬鹿馬鹿しい」と言っていたツンツン婚約者がデレ始めた件について  作者: あろえ


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第21話:模擬戦Ⅰ

 模擬戦が行われる当日。


 騎士団の訓練場に訪れた私は、訓練生たちの熱い戦いを見守っていた。


「それまで! 勝者、ユリオン・カルスター」


 戦いが終わる度、パチパチパチ……と、まばらな拍手が起こるだけで、場は緊迫した空気に包まれていた。


 関係者だけで開かれるとはいえ、貴族が参加するということもあって、多くの方が顔を出している。


 爵位を持った騎士の方や訓練生の家族、そして、私のような婚約者に該当する令嬢たち。


 それぞれ違う思惑や感情を持って、この場に佇んでいることだろう。


 まあ……本当に多種多様というべきか……。


「どうしてだ! なぜ私の息子が謹慎になっているのだ!」

「うちの子が出場しないこともあり得ないですのよ!」

「騎士団は差別をするつもりか!」


 あの三人組の親と思われる方たちが、強面の騎士に強く訴えかけている。


 この親にしてこの子あり、といったところ感じだ。


 そこからしばらくすると、騎士団側が折れたみたいで、三人の親は勝ち誇ったような表情を浮かべていた。


「辞退しておいたままの方がよかった気もするけどね」


 訓練生たちの模擬戦を見る限り、一進一退の攻防であり、大きな実力差があるとは思えない。


 彼らが訓練をサボり、問題を起こしたことを考えると、恥をかくだけのような気がした。


 そんなことを考えていると、ようやくアルト様の出番がやってくる。


 緊迫した訓練場で声を上げて応援するわけにはいかないので、そっと見守ることにした。


「はじめっ!」


 ああ~、なんだか見守る私の方が緊張するなー……などと考え、ソワソワしていた時だ。


「それまで! 勝者、アルト・レクレーネ」


 たった一振りで対戦相手を戦闘不能になってしまい、あっさりと勝利していた。


 これには、まばらな拍手の代わりにどよめきが起こっている。


「やはりレクレーネ家の血を引いているだけのことはあるな」

「そういう問題ですか? あれは訓練生の模擬戦に出してはいかんでしょうに」

「特別扱いしていると思われるだけだぞ。外野が文句を言うくらいでちょうどいい」


 アルト様が騎士を目指していることは知っていたし、名門の家系だということも知っていた。


 でも、まさかここまで強いだなんて……。


 ちょっとカッコいいな。もっと早く誘ってくれたらよかったのに。


 会場のどよめきと周囲から聞こえてくる会話に優越感を抱いていると、ラズリーが近づいてくる。


「ニーナ。自分では気づいていないかもしれないけど、とてもニマニマしているわ」

「……。見なかったことにしてください」


 うぐぐっ。落ち着け、私の表情筋。


「ニーナの気持ちがわからないわけじゃないわ。カーシュ様と同じで、彼も強いものね」

「正直なところ、アルト様がここまで剣術の腕が立つとは思いませんでした」

「知らなくても仕方ないと思うわ。彼から招待してもらったことがなかったんでしょう?」

「はい。今回初めてお呼ばれしたんですよ。たぶん、今まで恥ずかしくて声がかけられなかったんだと思います」


 アルト様としては、婚約者を誘うことも、パーティーでエスコートをすることも同じこと。


 婚約者のために自分から動いたり声をかけたりすることが、どうしても恥ずかしくてできなかったのだ。


 一般的な貴族の考えからすれば、逆にそれをやらないことが恥ずかしいことになるんだけどね。


「ニーナも大変ね」

「それはお互い様ということで」


 その結果、婚約者である私たちの評判が下がってしまうので、頭を抱えてばかりだった。


 でも、うちはもう解決した問題だから、のんびりと過ごすことができる。


 一方、ラズリーたちは相変わらずなので、気になるところではなるのだが……。


 カーシュ様、孤児院の件はまだ相談していないのかな。


「ラズリー。私に聞きたいこととかありますか?」

「恋に落ちた経緯は聞いてみたいわ」

「それ以外でお願いします」

「じゃあ、ないわね。急にどうしたの?」


 どうやら昨日のことは、まだラズリーに言っていないみたいだ。


 後で変な誤解を与えないように、私とカーシュ様が同じ時間を過ごしていたと早く伝えておいた方いいだろう。


 しかし、私が彼女に伝えるのは、なんか違う気がした。 


「もしかしたら、誤解を与えることがあるかもしれない、とだけ伝えておきます」

「わかったわ。別に悪いことをしたわけではないのよね?」

「もちろんです。ラズリーを傷つけるようなことはしませんよ」

「それならいいわ。私もニーナを信じるから」


 ラズリーがそう言ってくれたので、私はもう少し二人の関係を見守ることにした。


 こういう素敵な友人がいてくれることに幸せを感じながら。

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