中世に自転車があったら無双できるんじゃね?
自転車で通学中に交通事故に遭った俺は
気付けば中世に転移していた
魔法もないリアルな戦国時代
特にチート能力も付与されなかった俺は
生き残るのが精一杯
運よく村人に助けられたが
何が出来るわけでもなく
慣れない畑仕事を手伝うことで
なんとか食いつないでいた
だが、一緒に飛ばされてきた自転車は役に立つ
隣村への配送や伝言で活用し
近隣でもちょっとした評判になっていた
やがてそれは国の有力者の耳に入り
俺は城へ呼ばれることとなった
「その方、面を上げよ」
「は、はい」
「お前の乗る自転車とやら、あれは素晴らしいのう」
「は、はい」
「あれを量産し、我が騎馬軍団に加えたいと考えておる」
「な、なるほど」
「お前に任せるゆえ、自転車を作り兵を指導するのだ」
「お、お任せあれ!」
キタキタキタッ!
やっぱ異世界転移はこうでなくちゃ……
俺は頑張った
国中の鍛冶師や木工職人を集めて自転車を複製
ゴムが無いので消耗は激しいが
下り坂での突撃速度は騎馬軍団にも劣らない
平地にあっても歩兵を優に上回る
実戦に向けて日々訓練を重ね
やがて俺は、自転車部隊を指揮するまでに出世した
そしてその日はやってきた
俺は国で一番大きな城に呼ばれ
そこでは殿様が直々に声をかけてくれた
「お前が、あの自転車部隊の指揮官か」
「は。左様にございます」
「うむ、次の戦でお前の部隊も出陣じゃ」
「は。承りましてございます」
「騎馬軍団と共に小高い丘より突撃し、敵陣を突破せよ」
これはまさに自転車部隊が得意とするシチュエーション
俺の無双タイムが始まるぜ
「では皆の者、我らが武田騎馬隊の恐ろしさ、織田と徳川にたっぷりと味あわせてやるのじゃ」
殿様、武田勝頼は命令を下す
集まっていた武者たちが一斉に鬨 (とき) の声を上げた
いざ、戦場の「長篠」へ
1575年 武田と織田・徳川連合軍は長篠で激突
「長篠の戦い」として後世に語られる
諸説あるが確かなこととして
戦国最強といわれた騎馬部隊を率いる武田軍は
当時の最新兵器である鉄砲の一斉射撃に沈められた
その戦場に自転車があったとして
何が変えられたというのか……




