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義妹になったガーベラは治癒魔法の素質があるらしく、既に魔法学校に通っていて好成績を収めているそうです。
家に来たばかりの時は私に遠慮がちだったアザレア様とガーベラも、私が治癒魔法を使えず学校にも行っていないとわかると、私を露骨に軽んじるようになりました。
最初は聞こえるように陰口を叩かれたり、召使いの前で嫌味や皮肉を言われたりする程度だったのですが、次第に私への嫌がらせがエスカレートしていきました。
足をかけて転かされたり、水をひっかけられたり、私の物を隠されたりするのは日常茶飯事で、いつからか召使いのように用事を言いつけられるようになり、上手く出来なければ罵倒されるようにもなりました。
ガーベラの部屋を片付けさせられていると、私が片付けの最中にガーベラの服を汚したなどと言いがかりをつけられました。私が心当たりが無いと言うと頬を思いきり叩かれ、その次の日から手も上げられるようになりました。
お父様は見て見ぬフリをしていて、私が泣きつくと頭を撫でてはくださいましたが、二人を止めてくれることはありませんでした。
どこかで見ているのか、お父様のところに行くとその日の嫌がらせが特に酷いものになったので、いつからかお父様に泣きつくことも出来なくなりました。
そんな地獄のような生活が3年程続き、私は15歳になりました。最近では給仕までさせられて、食事も後から質素なものを別の場所で食べています。
普通の嫌がらせでは飽きてしまったのか、お母様の遺品のドレス等を売られたこともありました。涙を見せても喜ばれるだけなので、なるべく自室以外で泣かないようにしていましたが、流石にその時は泣き崩れてしまい、二人は嫌な笑い声を上げていました。
肉体的な苦痛はまだ耐えられましたが、そろそろ精神的にまいってしまいそうです。
唯一私の心が安らぐのは、自室でお母様の形見の指輪を手にしながら眺める時でした。私も身体は成長しているので指輪のサイズが私に合うようになり、たまに指に付けて眺めるようになりました。
気持ちの問題とは思いますが、お母様の指輪を身に付けると本当に身体が軽くなって落ち着くのです。
酷く殴られて頬が痛む時など、指輪を付けてさすると痛みが引いていくので、何らかのマジックアイテムなのかもしれません。
ですが、そんな耐えるだけの私の生活も、まだまだそれすら甘かったのだと思えるような事態に陥ることになりました。
ガーベラも14歳になり、アドニス王国軍の衛生兵団入団試験を受けることができるようになりました。魔法学校で優秀な成績を納めていたガーベラは、入団試験に一度で合格したのです。
アザレア様だけでなくお父様も大喜びしていて、ガーベラは自分の誇りだなどと言っていました。血が繋がっていない義娘のことをそこまで言うのが不思議でなりませんでした。
その日から、お父様まで私を侮蔑したような目をするようになりました。