プロローグ
プロローグ
目のくらむような光を放つ水晶をみて王宮の広間では歓声が上がる。転移してきたクラスメイト達が適正職業の判別とやらで水晶に手をかざし始めてからすぐのことであった。
「これは素晴らしい!」「何という魔力量だ!!」「この方が当代の勇者様ではないか!!」
宝石や過剰な装飾が施された服を着た貴族階級のオッサン達が媚びるように光を発した男に世辞を言う。そして、水晶に光をともした男もまんざらではないようで、笑みをうかべ宣言するように叫んだ。
「その通りです。僕の職業は勇者です。」
その宣言に周囲の貴族達は歓声を強め、クラスメイトは嫉妬の混じった称賛を上げた。
そんな周囲から少し離れた場所、俺は1人で悩みつつ自分の適性測行に目をやった。
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氏名 式見サイ 年齢 17歳 男
レベル1
適性職業 勇者
体力 :100
筋力 :100
魔力 :1000
俊敏性:100
スキル:言語理解・魔眼・光魔法
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(これはダメでしょ、勇者2人とかダメなやつでしょ!)おそらく片方は追放とか迫害とかされるだろう、そして追放されるのは自分の方だろうとサイは思った。
(勇者2人とか設定ミスでしょ!神とかそんなのがいるならそこらへんちゃんとしとけよ!!)
サイはこの後の身の振り方に頭を悩ませた。
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月曜日、それは憂鬱な気分のどん底に突き落とされる魔の日にち。前日までの楽園を放り出され、何者も原罪を背負ったアダムとイブのような途方もない気分に溜息を吐く。
昼休み、それは学生のオアシス。午前の授業で溜まった疲労感を昼食と他愛のない雑談で洗い流すとともに、午後の授業への眠気に気合を入れる時間。
つまり、月曜日の倦怠感と昼休みの脱力感を感じ、新たに迎える1週間に折り合いをつけるそんな時間。他人と違うのは、授業の疲労感を流す工程の中に他人との雑談がないボッチであるということぐらいであろうか。そんな生産性のないことを考えながら、式見サイは溜息をつく。
あまり手入れされていないためにぼさっとした黒髪に175cmと身長は高くも低くもなく釣り目がどこか無気力で、その容貌は高校生ながらどこか疲れたような印象を与える。
サイが溜息をついたといっても、それは月曜日の憂鬱さからくるものではなかった。
(はあ~、もうすぐ夏休みで山籠もりか。)
式見の家系は神道の神社の神主の家系であるためサイも長期休暇になると修行の名目で山奥の神社で手伝いをさせられていた。そのため、普通の高校生とは違いサイは夏休みが憂鬱であった。
きつい山籠もりより、退屈な高校の授業の方がまだましなのではないかと考えていた時、唐突に光と幾何学的な複雑な模様が教室を満たした。
事態の異様さに誰もが硬直していた時、サイは模様から感じる悪意を視認した。
その時誰かが叫んだ
「教室から出ろ!!」
しかし、すでに手遅れであった。
魔法陣の発動はすでに終わっており、周囲の風景は暗闇に閉ざされ、誰かの悲鳴が響いた。
やがて、暗闇が晴れ、退屈で憂鬱な日常は終わりを告げた。
今作が初投稿となります。小説の執筆も初めてです。
興味をもって読んで頂いた方に感謝します。
間違った文体、誤字脱字などの指摘などのも真摯に受け止めて、改善していく所存ですのでどしどし指摘をお願いします。
始めたばかりなので投稿ペースなどもまだ決めていません、長い目でお付き合いお願いします。