なにもない夏の後
早いもので、夏もあっという間ですね。落ち着かない気持ちが悲しいかも。
「私の秋」
コオロギが鳴いています
窓の下のあたりです
たった一人で鳴いています
外は風が強いです
「私の秋」
風が強いです
みんなみんな吹き飛びそうです
どこか物陰で
細々とスズムシが鳴いているようです
部屋の中はその聲ばかりしかありません
「私の秋」
電線が
枯れかかった木の葉が
風に鳴っています
何を求めるのか、子犬が鳴き止みません
後に虫の声だけが残るのでしょうか
夜は更けていきます
「疲労感」
物音がまったくありません
机の上には
窓からの蒼白い月の光があるばかりです
私はどうしようもなくなって
頭を抱え
目をつぶってしまいました
「苦々しい歓び」
先日、絵を描きました
私が、うそ寒い、海辺の中蒼穹で
乳色の薄い膜で
丸く閉ざされた中に
炎を抱いているのです
折から、朝の太陽が昇り
冷たい夜明けの空気が
一層澄み渡って
海辺の岩を尖らせているのです
私は殻を薄く染める太陽を
膜を通して眺めてでもいるのでしょうか
私は、出来が悪いので苦々しく思っています
「孤独な日々」
何も見えない暗い所に居ました
静かでした
膝を抱いて目を閉じていると音が聞こえました
驚いて耳を澄ますと
自分の嘆息なのだと気が付きました
往ってしまいました
往ってみると、やはり
うそ寒い風が吹き渡り
冷たい風が吹き渡り
膝を抱いて、空しい胸を温めていました
暗い中にまた音が聞こえました
今度は前よりも幽かです
「してはいけないこと」
苦しみに溺れて
哀しみに苛まれて
涙をこらえつつ
閉ざされた世界から呼び続けている
その人自身でなく
その人、という名の
女神に変質してしまうのを、ただ
恐れるかのように・・・
呼び続けている
「真っ黒鴉、なぜ鳴くの?」
ごそごそ、ごそごそ・・・
耳が、いや、鴉が音を立てる
大きな音を聞くと、居心地が悪いのか
鴉が動き出す、這い出てくる
・・・こんにちは、ご機嫌いかが?
耳の穴から顔を出す
いつの頃からか棲みついた、いや、湧いて出た
天気が良いと飛び回る
雨が降っても飛び回る
頭の周りを、真っ黒鴉が飛び回る
歩いても、走っていても
土星の環みたいに飛び回る
夜、寝る時は耳の中、それとも・・・
そう、目の前にドーナツみたいに飛んでいる
耳の穴に出たり、入ったり、忙しい
本を読んだら、その上に
手紙を書いたら肩の上
ひとつ、二つ・・・止まってる
夜中に驚いて電燈を点してみると
そこいら中に鴉のやつが止まっているんで
急いで耳の穴に綿を詰めて
・・・これで鴉め入れまい
そうほくそ笑んで眠ったのも憶えているよ
翌朝、案の定、床にみんなのびていた
集めてごみ箱に捨てて、耳の栓を抜いたら
真っ黒鴉め、わっとでて
それから頭の中が空っぽになっちゃった
今も鴉め飛んでます
今度はどうしてやろうかな・・・
ねえねえ、いいこと教えてあげようか
私の頭、空っぽなんだよ
耳のせん抜いたら鴉がわっと・・・
あれ、もう話したっけ?
何もしていなくても、季節は移り、一人置いていかれるのがやるせないです。