やっと夏です
雨の季節が過ぎて暑いけど、爽やかな、とも言えない季節の到来です。今年の夏は、いいこといっぱいあるのかな?
「カワセミの罠」
さらさら
音を立てて流れる小川にも
透明な動かない水がある
賢いカワセミは
そこに泳ぐ魚を
翔んで取る・・・らしい
私は静かな流れに棲みたいけれど
「生き続けることに・・・」
いつも、いつも、続いていく道化師の悲哀
その他に、いかなる道があるというのか
今日も、にこにこ笑ってみせ
たわいもない事を話し
さも楽しそうに
何の悩みもないように
ああ、その身の苦しさ?
淋しさ?
口惜しく、狂おしい程のその身の切なさ?
髪を長く伸ばすことに
何の意味があろうか
営々と身の欲望に堪え
金を貯めることに
何の意味があろうか
旅に出て、人間を観ることに
どれほどの意味があろうか
人間は弱いからと言って、その罪を許し
醜いことも、
弱い人間だからと誤魔化し・・・
そんな逃げ道を作っている自分は
いったいどんな意味があるのか
人生における試行錯誤に
何の意味があるのか
「もっとも・・・けれど」
周りがすべて薄情で
周りがすべて嘘つきで
周りがすべて醜悪で
周りがすべて下劣だと
そう信じてる人が
周りに反抗すれば・・・
それがすべて、自分のことだと
思い知らされるのが落ちさ
それとも、そう思い込まされるのか
もっとも、どちらでもいいのだけれど・・・
「百鬼夜行」
俗人が言いました
・・・死と苦しみがなければな
仙人が言いました
・・・死と苦しみが懐かしい
世捨て人が言いました
・・・胃袋と生殖器には幻滅した
高僧が言いました
・・・世はすべて夢のまた夢
餓鬼が言いました
・・・夢だから尚、生きたい
太陽が昇りました
百鬼夜行も終わりです
「幽霊の出る古井戸」
ある人が道のそばの
古井戸に落ちた
・・・救けてくれ・・・救けてくれ
道を繁く歩く人々は
井戸から声が聞こえると
気味悪がって、そこを避けるようになった
雑草が生え、芒が生え、雑木が生え・・・
かつての道は荒れていった
森の中に今も古井戸は
苔むした姿も変えずに残っている
時に、若者がそこを彷徨い歩くが
けど、もう何も聞こえない
ただ、雫の音だけが寂しい
「月日の物語」
一人の男がおりました
十八の時から、往くことばかり考えておりました
往くのにどんな方法でもいいと言いながら
楽に往くことばかり考えておりました
表彰されました
九十九歳を迎えた時でした
祝われているその間、微笑みながら考えておりました
・・・早く往けばよかったのに
彼はいろいろな死を見たのです
結果、生きてしまったのでした
次の日、彼には表彰状と九十九年の月日がありました
それからまだ、長い時が待っていました
彼には死を語り合った友がありました
ずっと昔に、老い、死にました
彼は溜息を一つつきました
それから、手を眺めながら暮らしましたとさ
やっぱり、なんとなく、いいのか、悪いのか、判断できかねることになりました。でも、そんなにひどいわけでもなさそうな。