雨の季節
私にとって、雨はまた、特別に感じるイベントです。この詩集にも、雨の季節があります。
「また雨が降る」
すべてのココロが
夕べの雨で、流れて消えた
カエルが鳴いている
雨が降る
もう流れるものがないのに
雨が降る
「安らぐ時」
永遠のしじまに包まれて
私は眠る
月は一人瞼を湿らせて
眠りを守る鴉は、頭上の木に立ち尽くす
「雨の中」
アメガフル
アメガフル 心に雨が降る
アメガフル 鳥が啼き
アメガフル 日が沈み
アメガフル 夜がくる
アメガフル 雨粒が
アメガフル 一つ一つが光り
アメガフル ギラギラ光り
アメガフル 光輝が降る
アメガフル 雨雨雨が降る
アメガフル
「さすらい鬼」
もうずっと続いている
まだ一向に終わりそうもない
ほとほと投げ出したくもなる
ああ、空しい手繰り糸
手繰って、手繰って、この先幾年月
紡いで、織って、着込んでいくのか
熱が籠って目が回る
夏はまだだというのに
「群れた鴉」
一羽、二羽・・・
群れなした鴉が
小高い丘に立ち並ぶ
折から夕闇が迫り
私の体は
彼らの視線を
もろに浴びて
寂寥のなかに一人立つ
痩せた案山子に取りすがる
「今日の音色は・・・」
メランコリー
メランコリー
メランコリー オルゴール
メランコリー
メランコリー
メランコリー オルゴール
メランコリー
メランコリー
メランコリー 雨が降る
「帰り道」
ひときわ高い
青い木の上に、天辺に
鴉が立っている
大きいのと、もっと大きいのと
二つもいる
声なき声で鳴き交し
羽を広げていたのに
急に立ち尽くして・・・
見ている
怯える私を残して
飛び去ったけれど
その時、冷たく、嗤った気がする
「憂鬱な散歩」
どこかで蛙が鳴いている
家を出る時も、確か・・・
一人歩いている道端でも
立ち止まった薄暗い木陰でも
ひとり、ぼそぼそ鳴いている
何をした・・・何をした・・・
青葉の上に
ジッとしている雨蛙を
たたき落した
「鏡像の家」
不思議な家があると聞いて
奇妙な人が住むと聞いて
そこを訪ねることにした
外は暗い程、蒼い空だった
ごめんください
はい、ご自由にどうぞ・・・
失礼します
ガラス戸を開けると
そこに土色の貌を見た
憂鬱な気持ちで、家に逃げ帰った
なんとか無事に切り抜けられましたか?心配です。ご批判が怖いです。