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静寂 3

第四詩集もこれで完結することになりました。それでも、多少は、できた感があります。波乱の多かった四集目でした。ここまでお付き合いいただけた皆様に、感謝を。

  「静かな宵闇」


ペン先からインクが蒸発していくのを

ぼんやり眺めて

心地よい疲労に放心するとき


挿絵(By みてみん)


堪らない睡魔に

あっさり降参して、沈没する


今日もおしまい




  「もう春かな」


浜辺を歩く

こんなことは、近頃、ほとんどなかったから


折から、春の陽が

いまは遠くなりかかった

海の色合いを際立たせ

踏みしめる砂の音さえも

違ってしまったような

そんな印象をくれる


渚を、肩を寄せ

支え合うように歩く、二人が眩しくて

近くにある松の木陰が

淋しそうに眺めている

まだ

彼らの季節ではない


挿絵(By みてみん)


冬をやっと抜け出して

これから洗われ、流されて

そして

暑さの中で目に汗が入ったと

駆け込んでくるのを

じっと待たなければならない


それまでは

淋しがれ


なんてこともない


少し暖かくなった春の日だ




  「安息の時」


海があまりに静かで

潮騒の音も幽かで


ほんのりと匂う

午后の草の匂いに乗って

夏の爽やかな風の精たちの

そぞろ歩きの足音が聞こえるよう


挿絵(By みてみん)


そう、この時にいつも

可愛い少女たちの

小さな願いに似た笑い声が・・・




  「柔らかに揺れるカーテンに寄せて」


なにもこんなことをいまさら言わなくても

毎年のことだから

目新しいこともないけれど


暑さの中で日々が過ぎていく中

ふと気が付いてみると

もう風の感触が冷たくなっている

いつの間にか秋が来ている

ついさっきまでの力ない風が

心なしか力を得て

ガラス戸を叩いていく


ああ、もう秋なんだ

そう感じた時には

凋落の流れの中に

どっぷりとつかった木々に交じって

この、あまりに人間的な季節が

もうずっと前から訪れている


挿絵(By みてみん)


ちょうど待ち合わせた友を捜して

街角を一回りしてくると

どうしたんだ、というような顔で

もう来ているよ、と、微笑んでいる具合に・・・


もう幾たびも

繰り返してきたはずなのに

気が付いてみるといつもこれだ


夏から秋への変わり目の

不思議さの故は

どうも、人生の奥深い所と

響きを共にする

自然の織り成す

大いなる法則なのかもしれない


挿絵(By みてみん)


変わらぬ日々の続いていく中に

ふと浮かび来る泡のように

忘れ去られていた季節が

今日、またしても驚かせた

そして、これからの

長い、過ぎ去らねばならぬ

日々の列を暗示するように

いつまでも吹き止まぬ風


かつてのように

カーテンの影から机のわきを通って

通り過ぎてゆく風は

この先、どこへ流れていくのか

これからの時期、寡作になります。年月の早さに驚くばかりです。思えば、当たり前なのでしょうか、責任が大きくなるに従い、暇が無くなります。できることも少なく、日常に追われて、迷う暇がない、ということでしょうか。

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