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異世界が存在しない世界線の話

作者: YAKUMO

 この世界は腐っている、涙が流れそうなほどに。なぜ救いがないのだろうか。

 そういった感情を常に抱きながら生きてきたからなのか、どうも私の顔は歪んでいる。性格のみが歪んでいるなら他人には分からまいが、顔まで歪んでいるから救いようがない。


 まず目元、なぜ一重か。眠い時分にしか二重にならず、常日頃誰かを睨むかの如く。電車で目が合った穏和そうな貴婦人に目を逸らされたのはつい一昨日の経験。何もしませんよ?

 次に口元。歯が悪い。並びがすこぶる調子良くない。がたがたである。その様子、まさに岩場の如く。中学時代にロックマンというあだ名をくれた富岡君、元気かい? 歯のせいもあってか、笑顔がどうにも言い得ようなくぎこちなく、気持ち悪い。私は笑顔だ、周りは真顔か。

「笑わないで、気色悪い」

 そんなことを言ってくれた松本さんは現在、風俗嬢。一度店に赴き、行為した。


 だんだんと笑うのを躊躇うようになったのは確か高校受験と時期を共にしていただろうか。中学は地元の公立中学校という名の動物園に鎖で飼育されていたので受験というものはそれが初めてだった。だが生徒という名の獣が多く集っていた動物園の中、なんと私は理性を有した『人間』だったため、大した努力もすることなく高校受験を終えた。受験一週間前にもアニメを違法視聴していた覚えがある。この私に負けて受験に落ちたやつは救いようなく馬鹿である。合格発表の張り出しの前で母親と悲しそうに泣いていたショートカットの女の子の顔を思い出して、にやけてしまう。高校は自称進学校に通った。


 入学式で文武両道という頭の悪い言葉を聞かされたのが甦ってきて虫唾が走る。部活動に九割以上の生徒が入部しているという押し付け、部活に入るかどうかは自由という上辺の文言とは裏腹にどこにも所属していない者への白い目線は際立っていた。まるで人権を失っているように、まるでそこにいないかのように。

 無所属者への態度を露わにするのはもちろん先生、そして所属組の生徒までもであった。

 先生からの態度はあからさまであり、まず顔に出ていた。私が部活に所属しないことを担任の女教師、南に伝えると、途端怪訝な顔になり「どうして? 理由は?」などとほざき始めた。特に理由はないですと正直に伝えてみるとまるで汚れたものを見るような表情になり、「なんで!?」とヒステリックよろしく金切り声を挙げた。そのヒステリーを尻目にそそくさと家に逃げ帰り、南の金切り声を思い出しながら一発抜いた。

 生徒からの態度は先生のものよりも性質が悪いものだった。まず無関心。それこそいないかのように。声をかけても第一声は無視から始まる。第二声以降で初めて「あぁ、ごめん。聞こえなかった」などと口走る。その口に何かものを突っ込んでやろうか。

 極めつけは隠れた場所でのいじめだった。手始めにものを隠される、そしてものを壊される。シャーペンの芯を全て折られるなどの些細なことではあった。しかし心にはずっしりと効いた。自称進学校のせいもあってか微妙に脳ミソにものが詰まっているため、知能的な犯行が多かった。

 私以外の無所属者への攻撃も見かけた。


 その頃から現実というものを諦めはじめ、ネットの海に溺れだした。とりわけネット小説に嵌り始めた。

 ネット小説はまず気軽に読めるのがとても良かった。ネットに繋げる環境さえあれば無料で読める。高校生でアルバイトを禁止されていた身分としては有り難かった。そしてネット小説の文章は程よく拙い。ド素人が書いているだけあってライトノベルよりも稚拙で読み易いことこの上ない。そして私を最も惹きつけたのは『異世界』であった。

 異世界小説はおおよそ転生から始まる。自分にとって都合よい世界にスマホなどの便利な用具を持ち込み、自らもって生まれた能力を自由自在に操り、活躍する姿に私は憧れた。私も異世界ならば活躍が可能であると信じた。私は願った、異世界を。



 目の前に扉が二つある。左は赤色の扉、右は青色だ。誰かが私に囁く。

「正解は左ですよ」

 この場における正解とは何だったのだろうか。異世界への道か、現実世界への回帰か。

 私は迷わず左の扉を選んだ。銀色のドアノブはひどく冷たい。周りの人間が私を見る視線のように。このドアノブには触りたくなかった。

 ドアを開けると一輪の花が咲いていた。それ以外は白色の空間。

 赤色の花。花びらは五枚。美しくもなく、汚らわしくもなく。ただそれだけの世界。

 涙は流れなかった。


この世界は腐っていた。


 異世界など、存在しなかったのだ。なにが異世界転生だ、なにがおっさんだ、痛いわ。

 なぜ異世界が他の世界線にあるか教えてやろう。

 作者が現実世界に関する知識がなく、異世界でしか生きていけないからである。異世界が存在しなかった世界線、それがこの文字の掃きだめ。


この小説を最後まで読んだ馬鹿どもよ、時間を無駄にしたな。オチはタイトルに書いていただろうに。

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