永久との闘い その2
「やっぱさー。あんた、チートだわ……」
テラスちゃんが結界を解いた後、私は苦笑しながら陽花にそう告げる。
「いやー……そうでもな……い……」
私達の方を振り向いた陽花の胸からは一本の刀が生えていた。
「……あ……あれ……ゴフッ……」
「陽花っ!!!」
「フン……人間にしてはやるではないか……」
永久はそう言うと刀を陽花から抜きさり私達の方へ陽花を蹴り飛ばす。
キクリ先生が慌てて陽花に駆け寄って回復のカムイをかけ始める。
「陽花ちゃんっ!!陽花ちゃんっ!!しっかりしてっ!!」
「クソ……今の攻撃でも倒しきれんと言うのか……」
にしてもおかしい。
陽花が振り向くまでは永久は倒れ伏していたはずだ。
どうやって一瞬で……。
「フン……何を不思議そうな顔をしている。私が時を司る天使だという事を忘れたか……」
「時間を止めたの……?」
「まさか人間ごときを相手に時間を止める力をつかうことになるとはな……」
言いながら血交じりの唾を吐き出す永久。
「まぁいい。今から時間を止めてゆっくりとお前達を殺してやるよ。それぐらいの力は残っている」
「……そううまくはいかんぞっ」
テラスちゃんは手に二枚のカードを持ちもう片方の手に天叢雲剣を構える。
「人間の分際で私に対抗できると思っているのかっ!」
「フン。その見下した態度、いつまでもつかなっ!!」
その言葉と共に二人の姿が目の前から掻き消えたかと思うとさっきまでとは違う場所にボロボロになった衣を纏ったテラスちゃんの姿と傷だらけの姿の永久の姿が現れる。
え゛。
何?どういうこと?
「貴様、どうして時間を操れるっ!!!」
「この国には時間を操る術もあるということさっ!!!」
そして再び掻き消える二人の姿。
どうやら二人は止まった時間の中で戦い続けているようだ。
とりあえず私も加勢をしないとっ。
そう思い再び永久を召喚しようとする。
「お前の能力は面倒だから封じさせてもらうぞ……」
耳元から声がしたかと思うとネタ帳が粉微塵に切り裂かれていた。
「クソ……やられた……」
言葉と共に私のすぐ目の前にテラスちゃんが現れる。
肩の息も上がってきていてもう限界が近いのが見て取れる。
「どうした、人間。もう限界か?」
「フン。お前こそ限界が近いんじゃないのか、永久よ」
そして三度、二人の姿は掻き消える。
再び二人が姿を現した時。
テラスちゃんは地に倒れ伏し、その手を永久が踏みにじっていた。
「ハハハハハ!人間、なかなか面白かったぞっ!!」
「クソ……」
永久の高笑いを聞きながら苦々しくテラスちゃんは呟く。
まずいまずいまずい。
このままじゃテラスちゃんまでやられちゃう。
でも、ネタ帳を破られちゃったし……私にはどうしようもない。
そんな光景の中、一人の少女が私の前を通って永久の前へと進み出る。
刹那だ。
「永久……もう無駄に人を傷つけるのはやめてください……」
「おまえ、私に命令できる立場だと思ってるのか?」
言いながら永久はテラスちゃんの両手に刀を突き立てていく。
「う……くっ……」
「テラスちゃんっ!!」
眠り続ける陽花を胸に抱いたキクリ先生の叫び声が木霊する。
「やめてくださいっ!!私の命をあげますから。だから……もう誰も傷つけないで」
「……フン……お前、自分が死んだらこの世界がどうなるか分かってるのかよ」
「……はい……でももう、私の為に誰かが傷つくのは見ていられないんです……」
「ハハハハハっ!!それで世界がどうなろうが私には関係ありませんってか。ひでえ天使もいたもんだなぁ、おい」
言いながら永久は刹那の元へと歩み寄る。
「……すいません、皆さん……」
「それじゃあな、刹那。世界は私の好きにさせてもらう」
刹那目掛けて振り下ろされる刀。
「……何……何勝手なこと言ってんのよっ!!!あんた達!!」
私は思わず飛び出していた。
何も力もない私だけど。
そんな私だけど。
体が勝手に動いていた。
ザクッ。
鈍い音と共に私の体に激痛が走る。
「かはっ……」
息を吐くと血の塊が口からこぼれ出る。
「か、奏さんっ」
そんな私の元に突き飛ばされた刹那が駆け寄ってくる。
「どうして……どうしてこんなこと……」
「あはは……どうして……だろうね……でもね……刹那……あんたに……死んでほしくなかった……」
ほんとどうにかしてる。
何にも力のない私が飛び出したってどうにもなんないのに。
でも、私は刹那を守りたかった。
世界も大切だけど。
何より刹那を守りたかった。
だから体が勝手に動いていた。
はぁ……ほんと馬鹿だな……私。
ホント……大馬鹿だ……。




