永久との闘い その1
刹那が永久から力を奪われてきっかり一週間が過ぎた。
そろそろかなと思って居た頃に天から轟音が鳴り響く。
私達が慌てて皇照宮の庭に出てみると空には漆黒の翼を生やした天使が舞っていた。
「永久……」
刹那は悲しそうな瞳でその天使の姿を見つめている。
「フン……随分と弱々しくなったものだな、刹那よ」
「あんたが力を奪ったからでしょうが!」
その言葉に私はそう啖呵をきる。
「ククク……小娘よ。大人しく刹那を差し出せば見逃してやるぞ」
「刹那が殺されるの分かってて、はいそうですかって渡せるわけないでしょうが!」
「なら、諸共に死ぬがいい」
そう言って永久は私に向かって迫ってくる。
「「天地開闢っ!!」」
ピシャーン!ズガガガガガガガガン!!
轟音と同時にテラスちゃんと陽花のカムイが永久を直撃する。
「く……何者だ……」
「この国の皇帝だ。私の許可なしにこの国で勝手なことをされたら困るな……」
「私はただの異世界の留学生です!」
それぞれカードを手にそう答える二人。
「奏、ここは私と陽花で時間を稼ぐ。だから作戦通りにやれ」
「う、うん分かった!!」
そう言って私は今の永久の姿を正確に模写する。
「そうか。ならまずは貴様らから殺してやるっ!」
そういうが早いか永久の刀が陽花に迫る。
「はぁ……本当は私は前衛はやりたくないんだがな。致し方あるまい。天叢雲剣よ、わが手に宿れ!!」
テラスちゃんがそう叫ぶと一振りの刀がテラスちゃんの手元に現れる。
「陽花。サポートは頼んだぞ」
「うん。テラスちゃん」
身体能力増加のカムイをかけたテラスちゃんが永久と切り結び。
月依のカードを構えた陽花は次々に高出力のカムイの攻撃を浴びせかける。
それでも全然永久には余裕の表情が見て取れる。
現状はこちらが圧倒的に不利だ。
早く早くスケッチを完成させないと。
これは永久だ。
あの強力な力を持つ永久。
そう念じながらペンを走らせる。
そして。
「できたっ!永久召喚!!」
言葉と共に私のネタ帳から永久のコピーが召喚される。
「ほう……考えたな」
「テラスちゃん前衛はコピーに任せて全力で行くよ!」
私は携帯食を口にしながら雷公鞭を召喚する。
「行け!雷公鞭!!その力を示せ!!!」
「「天地開闢っ!!」」
永久と切り合いをしているコピーに構わず私達は全力でそれぞれの最大限の力をぶつける。
ズガガガガガガガガン!
稲光が雷鳴が轟き永久の体を次々に襲う。
けれど……。
「ぜ、全然きいとらんではないかっ!!」
「そんな……」
私達の攻撃はコピーに構わず諸共に直撃したはずだ。
それなのに全くのノーダメージ。
というか、永久はコピーとの斬り合いを楽しんでいる節さえある。
「クソ……やっぱりあの方法しかないのか……」
「はぁ……そうだね……あんまやりたくなかったけどね」
そう言うと陽花はカードをもう一枚取り出す。
二人はいったい何をやるつもりなんだろう。
私はその辺さっぱり知らされてないから分からない。
「行くよ、テラスちゃん!」
「ああ。こっちの事は気にせず盛大にやってくれ」
テラスちゃんはそう告げると私達の周囲に分厚い結界を展開する。
「万物遮断結界っ!!」
「それじゃ、おもいっきりいくよっ!!私の暴発カムイ受けてみなさいっ!!」
陽花はカードを構え永久に向かって力を開放する。
「鋼鉄壁!!」
陽花がそう言うと共に永久の周囲に巨大な鋼鉄の壁が現れる。
「こんなもの目くらましにもならんぞっ!!」
言いながら周囲にはられた鋼鉄の壁を切り裂いていく永久。
「……からの暴発カムイ版・天地開闢っ!!」
その言葉と同時に激しい暴風が吹き荒れ結界外のものがどんどん吹き飛ばされていく。
そして天からの巨大な稲妻が周囲を吹き飛ばしていく。
稲妻に打たれたものは全てが形を失くしてゆく。
「はぁ……これをやると必ずこうなると思ったからやりたくなかったんだがな……」
テラスちゃんはため息を着きながらやれやれと言葉にする。
「宮殿がめちゃくちゃになっちゃってますね……」
周囲を見渡すと宮殿の柱や屋根は粉々になって空中を舞っている。
「……月依さん達や衛兵さん達は大丈夫でしょうか?」
「その辺はちゃんと避難してもらってるから大丈夫よ、刹那さん」
言いながらそう微笑むキクリ先生。
こんな状態なのに笑えるって余裕あるな……この人は。
「でもこんなめちゃくちゃな暴発状態じゃ永久には命中しないんじゃないんですか?」
「そういう訳でもないのさ」
テラスちゃんがクククと含み笑いをすると同時に、陽花はもう一枚の月依のカードに力を込めていた。
「圧縮結界っっ!!」
陽花のその言葉と共に永久の周囲の空間が圧縮されていく。
「く……な、なんだこれはっ!!……ぐ、ぐわあああああああああああ……」
圧縮されていく空間の中で永久は逃げ場が無くなり、陽花の暴発カムイで発生した天地開闢で発生した稲妻を受け続ける。
うわ……めちゃめちゃえげつない。
「にしてもカムイの同時発動なんてできたんですね……」
「いや、同時に使えるカムイは基本一人一回だけだ。他人のカードを使える私達だからこそ使える技なのさ」
「ほえー……」
そして圧縮されていく結界の中、永久はボロボロの衣服を身に着け倒れ伏す。




