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私、巨人の世界にやって来ました。その6

「おかえりなさい、奏さん、刹那さん」



ニヴルヘイムの宿屋に二日かけて辿り着いた私達を月依(つくよ)は出迎えてくれる。



「ただいま、月依(つくよ)。調子はよくなったみたいだね」

「はい。だいぶよくなりました。ギフトの方は無事に回収できましたか?」

「ああ。バッチリ回収できたぜ。永久(とわ)の野郎が現れたけどな」

「え……それって大丈夫だったんですか?」

「あんま大丈夫じゃねぇから癒しのカムイかけてほしい」



そう言って刹那は背中のザックリ切られた傷を月依(つくよ)に見せる。



「うわ……よくこんな傷で動けますね……」

「まぁ鍛え方が違うからな。このぐらいならまだ動ける」



鍛え方っていう問題じゃないと思うんだけど。

その傷は。



「とりあえず、癒しのカムイをかけますね」



月依(つくよ)はカードを取り出すと癒しのカムイを刹那にかけ始める。



「よくこんな傷受けて永久(とわ)に勝てましたね」

「それなんだが……奏が追い返したんだよ」



背中の傷を癒し終わり、刹那は着物を着つけ直してそう言う。



「え……奏さんがですか?」

「えっと……なんか無我夢中でやったらなんとかなったっていうか」



月依(つくよ)の問いかけに曖昧な返事を私は返す。



雷公鞭(らいこうべん)だったか?いつスケッチしてたんだ?」

雷公鞭(らいこうべん)は見たことないから、想像で描いた……」



刹那のその質問に私はそう答えるしかなかった。



「は?あれが想像の産物だっていうのか?」

「うん……」

「なんだそりゃ。それじゃ何か?おまえが想像したものは何でも実体化できるってことなのか?」

「かと思って、漫画で見た実際とは効果の違う宝貝(ぱおぺい)を色々試してみたんだけど実体化できたのは雷公鞭(らいこうべん)だけだったんだよね」

「ふーん……ますますわけわかんねーな」

「まぁともかく、二人共無事で良かったですよ」



そう言って満面の笑みを浮かべる月依(つくよ)

ニヴルヘイムに居る間も私達の事が心配でしょうがなかったんだろうな。

そんな雰囲気が彼女の安堵の笑みからあふれ出ていた。


―――


そしてそれから三日後。

久しぶりに帰ってきましたよ、タカマガハラに。

はぁ……今回は長い旅だったなぁ。

かれこれ二週間がかりの旅でしたよ。

とりあえず成果をテラスちゃんに報告しないとね。

私達の報告を首を長くして待っているに違いない。

それに相変わらずちょっと調子が悪そうな顔をしている月依(つくよ)の事も気になるし。



月依(つくよ)あんたは良いから早く家に帰って休みなさい」

「え……でも」

「でももへちまもないのよ。あんたまだ本調子じゃないんだから休んでなさい」

「あははは……ばれてましたか」

「そりゃね……。だからさっさと家に帰る事。良いわね」

「はーい。わかりました」



そんな訳で月依(つくよ)とは転移門で別れ、私と刹那は皇照宮(こうしょうきゅう)へとやって来た。



「無事にギフトは回収できたようだな」



応接室に通されてテラスちゃんは開口一番そう聞いてくる。



「ああ。永久(とわ)の妨害があったけどな」

永久(とわ)か……その件でトールとフレイヤから連絡があった」



連絡があったってことは少なくとも二人は無事に生きてるって事か。

良かった……。



「ブリーシンガメンとメギンギョルドが奪われたんだろう?」

「ああ。それで大丈夫だったのか?お前達」

「奏が創り出した雷公鞭(らいこうべん)で追い返すことができた」

「ほほー……。確か雷公鞭(らいこうべん)は伝説上の武器だろう?」

「えっと……無我夢中でこれは雷公鞭(らいこうべん)だって思って描いたらできちゃいました。でも他の想像上の宝貝(ぱおぺい)は実体化できなかったんですよね」

「ふむ……そうか……」



思い当たることが有ったのかテラスちゃんは言葉を続ける。



「刹那よ。この世界の時間は狂ってきているのだろう?」

「ああ。間違いなく狂ってきてるな」

「例えばだ。雷公鞭(らいこうべん)は伝説上の物だ。その雷公鞭(らいこうべん)の伝説と言うのがもし奏が振るっていたものだとするなら辻褄があうのではないか?」

「む?それってどういうことです?」

「つまりだ。お前の創り出した雷公鞭(らいこうべん)が時間の乱れで何千年も前からの伝説として語り継がれていたという事だ」

「はぁ……なんとなくわかったようなわからないような」



つまり私は自分が振るっていた雷公鞭(らいこうべん)の伝説を聞いて雷公鞭(らいこうべん)を創り出したっていう事?

うーん……なんか無限ループってやつじゃね。



「それぐらい時間の流れが狂ってきているとも言えるな」

「だな。で、残りのギフトの数は二十一個になったわけだが……」

「その件について悪い話と良い話、どっちから聞きたい?」



テラスちゃんは机に頬杖をついて不機嫌そうにそう聞いてくる。

うーん……出来れば悪い話は後回しにしたいな。



「じゃあ、良い話の方から」

「そうか。この世界のギフトの回収はもうしなくてもよくなった」

「え……それってつまり……」

「そう。こっちが悪い方の話だ。残りのギフトの全てが永久(とわ)に奪われていたことが分かったんだよ」



……まじか。

今の刹那の力って永久(とわ)の八割しかないんじゃなかったっけ。

しかも相手はブリーシンガメンとメギンギョルドの装備を持っている。

この前は私の雷公鞭(らいこうべん)でなんとかなったけどそれも何か対策を打たれてくる可能性が高い。

そしてギフトの回収がすべて終わったという事は……永久(とわ)は刹那を消しにやってくる。

そう遠くない未来に。

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