私、巨人の世界にやって来ました。その5
同じ装備を持った相手。
けれど今の刹那の力は、永久の八割にみたない。
それじゃ刹那は勝てるはずもなく。
私も何か手助けしなきゃ……!
「ミョルニル、グングニール、ミストルティン召喚!」
ネタ帳から次々に武器を召喚していく。
「全部まとめて飛んでいけえええええええええ!!!」
そして永久に向かって飛ばしていく。
けれどそれは悉く永久に辿り着く前にはじかれてしまう。
「五月蠅いぞ、小娘っ」
その言葉と共に永久から放たれた雷撃がこちらに向かって走る。
「ア、アイギスの楯召喚!!」
雷撃は寸前に召喚したアイギスの楯に阻まれる。
「チ……相変わらず忌々しい小娘め……」
刹那の剣撃をいなしながらもなお余裕のある表情でこちらを睨む永久。
くそー……まじでやばい。
あっちはオリジナルだけど刹那が付けてるのはコピー品。
紛い物だ。時間制限がある。
時間制限内に勝負を決めないとまずい。
「ケラウノス召喚!!」
ゼウス様は言った。
このケラウノスは世界を一撃で熔解させ、全宇宙を焼き尽くすことができる位威力だと。
「刹那っ!離れてっ!!」
「おう!!」
刹那が永久から離れると同時に私はケラウノスに力を込める。
「ケラウノスよ、我が敵にその力を示せ!!!」
ズガガガガガガン!!
眩しい稲光と共に強力な稲妻が永久へと走る。
「やったのか……?」
しかし。
立ち上る土煙の中、ボロボロになった着物を纏った永久の姿が現れる。
「フン……ケラウノスとやらもその程度か?」
『ただ、私が使ってもそこまでの威力はだせないものだ。だからお前も使いこなせるかどうか分からんがな』
ゼウス様はそう言っていた。
くそー……やっぱ私じゃケラウノスは使いこなせないのか……。
「それでは、こちらから行くぞ」
「させるかよっ」
そう言って刹那は再び永久へと切りかかる。
クソ……。
何か、何か無いのっ!
アイツに対抗できるなにかっ!
「こうなったらやけっぱちのニーズヘッグ召喚!!」
「ちょ、奏っ!!」
私と永久の間にニーズヘッグの巨体が現れる。
「フン……たかが竜ごときで私が止められるとでも思ったか」
しかし永久はそう告げるとニーズヘッグの首をバッサリと刈り取る。
「……嘘でしょ……」
「だからなってないと言ってるんだよ、貴様の力の使い方はなっ」
「呆けてんなアホっ!!」
刹那は私を突き飛ばすと私の代わりに背中をバッサリと切り裂かれていた。
「ぐっ……」
「刹那!!!」
私の掌が刹那の血で真っ赤に染まる。
まずいまずいまずい。
このままだと二人とも殺られる。
「ククク。このまま二人まとめて殺してやろうか」
ゆっくりと私達に向かってやってくる永久。
まるで時間が止まっているかのようにゆっくりとゆっくりと迫ってくる。
『なってないと言ってるんだよ、貴様の力の使い方はなっ』
ふとさっきの永久の言葉が頭をよぎる。
私の力の使い方は間違っているっていうの?
じゃあどう使えば良いんだろう。
永久の足音が一歩、また一歩と近づいてくる。
考えろ……考えろ!
私の力の使い方!
私の本当の力の使い方!
私の力は絵を実体化する能力!
永久の足音が止まった。
クソジジイはいった。
私が同人作家だからこの能力を授けようと。
同人作家だからできること……。
同人作家だからこそできること。
それは。
それは想像だ!
永久はもう目と鼻の先に立っていた。
……想像だ、想像しろ、私!
名は雷公鞭……。
雷で瞬時に形あるものすべてを焼き尽くし粉砕する……。
そして影や魂さえ溶かすことができる宝貝をっ!!
私はそう念じながら、心にそう強く思い描きながら血に濡れた手でペンを走らせていく。
「宝貝・雷公鞭っ!!!」
言葉と共に黒い鞭が私の手に現れる。
で、できたっ。
「ほう?」
私達の前に立っていた永久は振り下ろそうとしていたその手を止める。
信じろ。
これは雷公鞭だ。
雷で瞬時に形あるものすべてを焼き尽くし粉砕出来る宝貝だ!
そう心の中で念じながら手に現れた鞭を振るう。
「雷公鞭よ、その力を示せ!!!」
雷公鞭を振るい永久を打ち付ける。
と共に。
ズガガガガガガン!!
ケラウノスの時よりも数十倍眩しい稲光と強力な稲妻が永久へと走る。
「ぐわああああああああああああああああっ」
雷公鞭の稲妻を受け永久は弾き飛ばされ倒れ伏す。
「……やったの?」
「いや……まだだ……」
「刹那!あんた大丈夫なの?」
「ああ……何とかな……」
言いながらも口から血がにじんでいる。
全然大丈夫そうに見えないんだけど!
「はぁはぁはぁ……クソ……小娘が……」
よろよろと立ち上がりながら永久は苦々しく呟く。
「はぁはぁはぁ……。今日のところは見逃してやる。次会った時は覚悟していろ、小娘!!」
そう言葉を残すと永久は黒い翼をはためかせ飛び去って行った。
はぁ……助かったぁ……。
と……安心するのはまだ早かった。
刹那の手当てをしないとっ。
「スルトさん、刹那の治療が出来る場所に」
「う、うむ。分かった」
そして私達はムスペルヘイムに刹那の傷が癒える三日間滞在することになってしまった。




