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私、異世界で知り合いに会っちゃいました。その2


「そういえば、神様から貰った力っていうの見てみたいな」



事務員さんにお礼を言った後、再び応接室へと戻ってきた私にユズキは言う。



「うん?いいわよ、そのくらい」



ユズキのリクエストに応えて私は懐からネタ帳を取り出し、それにイヌの絵を描き実体化するように念じる。

そうすると私のネタ帳の犬の絵はピクピクっと震え、ネタ帳から飛び出してくる。

そして、キャンキャンっとユズキに向かって激しく吠え始めた。



「おおー……。なかなか面白い力だね、それ」

「ふふん。でしょでしょ」



そう言って私は胸を張る。

と、同時に『グゥ~~~ッ』っと特大のお腹の虫が鳴る。

あれ……おかしいな。

犬を実体化させたと同時になんか急にお腹が空いた気がする。

どういうこっちゃ。



「あはは。随分お腹空いてたんだね」

「そ、そんなことないわよ、もう……」



私は顔を真っ赤にしてユズキに言う。

くそー……恥ずかしいとこを見られてしまった。

何でこんな時にお腹なっちゃうかなー。

ぐんにょり。



「とりあえず出前を頼むからしばらく待っていてくれないかな」

「うん。ありがとう」



ユズキはそう言ったかと思うと懐から端末を取り出し、電話をかけ始めた。



「あ、ヒルコちゃん?事務所まで定食セット二つお願いして良いかな。そうそう。うん。お願い」



どうやら端末の向こうはユズキの行きつけの店かなんかのようだ。

ユズキが電話をしている間も私が出した犬はキャンキャンと吠え続ける。

ユズキのこと嫌いなのかなこの子。

騒がしいからしまっとこ。

元に戻れー、そう念じるとユズキの足元でキャンキャン吠えていた犬は元の絵に戻るのだった。


それから待つこと十数分。

刹那は相変わらず私の横で黙りこくっている。

なんだろう。

会った時から思ったけど、刹那って無口な子だな……。

必要最低限の事しか喋らない性格なんだろうか。

これも記憶喪失が原因なのかなぁ……。



「そうだ。面白いものを見せてもらったお礼にボクも奏さんに魔法を見せてあげるよ」

「魔法?」



何言ってんだこいつ。

こいつ、マジでそう言ってるのか。

やっぱり変な奴なのか。

そんな視線をユズキに向けていると、ユズキはテーブルに置いてあったカップを片手に懐からカードを取り出し何かしら念じ始める。

すると、カードが淡く青く光り始めユズキが持っているカップに水が注がれていく。



「な……な……」

「お次は、これかな」



驚愕の表情をした私をよそに、ユズキは再びカードに何かを念じ始める。

カードは淡く緑色に光り輝きユズキの体はふよふよと浮かび始めた。



「これがこの異世界の街、タカマガハラの住人が使える魔法。カムイっていうんだけどね」

「マジか……」



この街の住人は皆こんな魔法みたいな力を色々使えるっていうの?

私の力なんて絵を実体化させるだけだっていうのに。

ていうか、何でユズキもその力つかえるの!

ずるい!せこいぞ!



「私にもその魔法……カムイだっけ?教えてくんない?」

「それはちょっと無理かなー」

「なんでよっ!ケチっ!」

「そう言われても……これでもこの力をみにつけるのに三年間学園に通ったんだよ」



言いながらユズキは地面に降り立つ。

さ、三年かぁ……。

ただですら先が見えない旅なのにそんな回り道はしたくないなぁ……。



「それに奏さんにはカムイの素養ないみたいだから無理だよ、どっちみち」

「それはやってみないと分かんないでしょう!!」



ユズキの言葉に流石にカチンときて私はユズキにくってかかる。

自分は特別ですアピールですか、そうですか。



「いや、それがこのカムイってのは素養がないと全くダメって代物だから……奏さんにはホント無理なんだ。ごめんね」



そう言ってユズキは手を合わせる。

むー……。

そこまで言うならしょうがないか。

そんな話をしているとコンコンッとドアがノックされて。



「生田亭でーーーすっ。出前に来たで、ユズキはん♪」



そんな言葉が応接室に響き渡り、ドアからピンク髪のショートボブの和服にエプロン姿の少女が現れる。



「あら、知らん子達がおる。お邪魔やったかいな、ウチ」



そう言いながら、テーブルの上に持って来た荷物をドサリと乗せる。



「いやいや。ちょうどいいタイミングだよ、ヒルコちゃん」

「せやったら良かった。じゃ、お会計お願いしまー」

「うん。じゃあこれで」



ユズキは懐から何かカードを取り出すと、ヒルコと呼んだ少女の持っている端末にかざす。

そうするとピピッという音がして。



「まいどありー♪」



にこやかに笑い少女は持って来た荷物を広げ始める。

少女の持って来た荷物の中身はまぐろ丼ぽい何かと吸い物に漬物だった。



「……これもしかして和食???」

「ん?ウチの店、和食屋やから当然やろ」

「ていうか、何でこの子、関西弁なの……」

「ヒルコちゃんは関西で祭られてる神様の子孫だからね。だからヘッドセットが勝手に関西弁に変換してるんだよ」

「そういうもんなのね……」



ていうか、関西で祭られてる神様の子孫?

ここって神様の子孫とかが住んでる世界なんだ。

だから魔法も使えるのかなぁ。

ユズキまでそれを使えるのは相変わらず謎だけど。

しかし、この子、パッと見、清楚な和服少女なのに元気っ子で関西弁なのはちょっと破壊力あるなぁ。

ギャップ萌えってやつかな。

ちょっと漫画のモデルになってもらいたいな。

そう思いネタ帳にスラスラと書きとめはじめる私。



「なんやのこの子、急に黙りこくってメモし始めたで」

「ああー……気にしないで良いから放っておいてあげて。これは性分みたいなものだから」

「ふーん。まぁええけどな。そいじゃ、いれもんなんかはまた明日とりにくるよってことで」

「うん。ありがとね、ヒルコちゃん」

「ほななー」



少女はニコリと私達に笑いかけるとヒラリと身をひるがえしてドアから出て行ってしまった。

あーーーーー!!

私のネタが去って行く。

ちょっと、ユズキ。

私の性分わかってるなら少しは時間稼ぎなさいよね!!

そう心の中で毒づきながらもネタ帳にペンを走らせ続ける私なのであった。

ああ……同人作家のサガは罪深い……。


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