私、異世界の装備を集めます。その3
とりあえずオリュンポス山には月依と刹那の二人で向かってもらい、私はただ待っているのも暇なので、他にも数個武器をスケッチさせてもらうことにした。
万物を切り刻む魔法の刃であるアダマスの鎌や、雷霆の一撃をも防ぎ、更に敵を石化させるアイギスの楯を見せてもらった。
はぁ……なんか陽花の事、笑えなくなってきたな私。
ホント、これじゃ私も『恐怖の殺戮少女』じゃん。
まぁこれも永久に対抗するためだ、しょうがないと割り切ろう。
そんなことをしているうちに、月依と刹那が帰ってくる。
「無事回収できたみたいだね」
「ばっちりだ。それに今回のギフトのおかげでだいぶ力が戻ってきた」
「ほんと?」
「ああ……前回みたいに無抵抗にやられるってことはないはずだ」
「そっか。なら良かった」
「それはそうと、そっちはどうなんだ、奏」
「んー……ケラウノス以外には二つかな」
「そうか。まぁその辺は今度の休みにでも威力の確認してみるしかねーな」
「そだね」
「次の休みは私も付き合いますよ、奏さん」
そう月依が言ってくる。
「あんた、陽花とのんびりしてたいんじゃないの?」
「それは夜にでもできますし」
さいですか。
それならいいけど。
「それじゃ永久が来る前にとっとととんずらしようぜ」
「そだね。早く次の国に行っちゃおう」
「えっと……次の国はスヴァルトアルフヘイム……黒エルフの国ですね」
「黒エルフ?エルフとなんか違うの?」
「さぁ……」
そんな会話を交わしながら私達は転移門へと向かう。
スヴァルトアルフヘイムに着いてみた光景は褐色肌のエルフが闊歩する世界だった。
黒エルフってそういう意味か……。
納得。
まぁとりあえずとっととギフトを回収してしまおう。
永久に対抗する装備は期待しないでおこう。
……と思ってたんだけど、意外にも、装備があるというので見せてもらうことになった。
名前は、グレイプニルという魔法の足枷らしい。
何でも巨大な狼を封じることができたのだとか。
ふむ……これなら永久の動きを封じれるかも?
これもまた試してみるしかないかなー。
「ふーん……グレイプニルか……確かにこれならいけるかもな」
「知ってるの?刹那?」
「ああ。昔見たことがある」
「そっかそっか。『刻の番人』様のお墨付きならいけそうだね」
「まぁ多少動きを束縛できる、程度だろうけどなー」
「それでも十分だよ、刹那さん。永久相手に隙さえ作れれば」
そんな会話をしながらギフトの近くへとやって来ると。
「おい……また様子がおかしいぞ」
活気に満ちていた街の雰囲気が一転、喧騒に満ちていた。
「……また永久なの?」
「でもここはオリュンポスから随分離れた国なんだけど……」
「四の五の言ってねぇで急ぐぞ」
ギフトの目の前にやって来た私達の前にはやはり見覚えのある少女がたたずんでいた。
辺りにはけがをした人々が横たわっている。
「永久……てめぇ」
言いながら刹那は両手に刀を召喚する。
「人間如きが、お前の記憶の欠片は渡さないといきがるものでな。少々痛い目を見てもらった」
嘲るような視線を向けながら私達を一瞥する永久。
「月依お前は怪我した連中をさっさと逃がしてやれ」
「うん。わかりました、刹那さん」
「奏、ブリーシンガメンとメギンギョルドを俺に渡してくれ」
「うん、わかった」
そう言って私はその二つを召喚し刹那に手渡す。
流石にお腹が空いたので渡した直後、私は携帯食料を口にする。
「ほう……少しは楽しませてもらえそうだ」
そう言うが早いか永久が刹那に迫ってくる。
一閃、二閃、永久の剣撃を両の刀でいなすように避け続ける刹那。
「面白い!面白いぞ!刹那ぁぁぁ!」
「俺は、全っ然っ面白くねーけどなっ!!」
言いながら剣撃を掻い潜り刹那は永久に蹴りをお見舞いする。
吹き飛ばされながら片膝をつく永久。
この前は文字通り手も足も出ない感じだったけど、私の装備で強化れてるとはいえ結構いい勝負なんじゃないの。
「奏、グレイプニルだ。早く!」
「う、うん」
私は刹那の指示通りグレイプニルを召喚し刹那を拘束するように命じた。
するとグレイプニルはみるみるうちに刹那を大地へと拘束し始める。
「く……グレイプニルだと!」
「わりいな、永久。まだ、俺一人じゃ全然お前に勝てる気がしないんだわ。だからとっとギフトだけでも回収させてもらうわ」
そう言うと刹那は刀をしまいながらギフトに手を当て自分の中へと吸収していく。
「お、おのれええええええ!!!」
「奏、次はミストルティンだ」
「え゛!良いの?」
「大丈夫だ、それ位じゃアイツは死にゃしねえよ」
「うん、分かった。ミストルティン召喚!!」
召喚したミストルティンを手に刹那は永久へと狙いを定める。
「神殺しの威力、とくと味わうがいいさっ!」
そう言って刹那は永久の背に向かってミストルティンを放り投げる。
「ぐはっ……」
刹那の投げたミストルティンは永久の背から貫通し胸を鮮血に染め上げていた。
「はぁはぁ……刹那……貴様……」
したたる鮮血の血を口元から流しながら。
グレイプニルの拘束がとけた永久は苦々しく言葉を口にする。
ほんとだ。
まじで死んでないし……神殺しの名が泣くわ。
「く……私は、少々、そこの人間を甘く見過ぎていたようだ……」
そう言って私をギロリとにらみつける。
あ、アハハ……そ、そんな眼で見ないで欲しいな……。
私そんな戦闘力高くないんで……。
「仮にも、天の神から力を与えられた人間か……」
「永久……まだ続ける気か?まだ続けるようなら、俺は全力でお前を斬り続ける」
言いながら再び両の手に刀を召喚する刹那。
「やれるもんならやってみるがいい。その代わり、俺はこの場にいる人間全てを道連れにしてやるがな」
「……なんだと?」
「それぐらいの力はまだ全然のこっているのさ。刹那……」
「時間を止める気か……」
「そういうことだ」
私のグレイプニルにはタイムラグがある。
時間を止められて回避されたらおしまいだ。
一度手の内を見せた永久には通用しないだろう。
「……ここは見逃してやる。さっさとどこか行きやがれ、永久」
「『刻の番人』様はお優しいことだな」
そう嘲る様な瞳を刹那に向けながら永久は何処かへと飛び去って行ってしまった。
はぁ……。
一時はどうなるかと思ったけど。
意外と何とかなって助かったー……。
これもトールさんとフレイヤさんのおかげだな。
後でお礼の通信入れさせてもらっとこう。




