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私、異世界の装備を集めます。その1

今日の一番目のギフト回収先はアースガルズ。

北欧神話で出てくるアース神族の子孫が住んでいる世界なのだそうだ。

んでまぁいつも通り、国のお偉いさんに会っているところ。



「ギフトをそちらの刹那殿にお返しする件については承諾しよう」



アースガルズの主神オーディン様はそう告げる。



「しかし、天使を倒すことのできる武器に関しては少々時間をくれまいか」

「あ。はい。見せてもらえるだけで良いので。お願いします!」

「分かった。しかしこれは我らにとっても危険なもの。くれぐれも使い方を誤らぬよう」

「分かりました」



そう言って手続きを済ませた後、オーディン様は私を武器庫に案内してくれる。

月依(つくよ)と刹那にはギフト回収に向かってもらった。



「お主の力、絵を実体化させることができるそうだな」

「はい」

「その力でお前は何を成すつもりだ」

「とりあえず、私達の邪魔をしてくる『輪廻の番人』の永久(とわ)を倒したいです」

「そうか……まぁそうだな。倒さなければ世界が崩壊するかもしれないのならば致し方なかろう」



そう言ってオーディン様は一つの封印された宿り木の枝を私に見せる。



「これはミスティルテイン。神殺しの枝と呼ばれておる、投げた相手を貫く宿り木の枝だ。我が息子バルドルもこの木によって命を落とした」



ほへー……ただの木の枝っぽいのにそんな威力があるのか。



「とりあえず、このミスティルテイン、スケッチさせていただきますね」

「うむ。ほかに我が武器・グングニールを描いていくがよい」

「これは……槍……ですか?」

「この槍は狙いを定めたものに必ず命中する能力を持っている。これもそなたの力となろう」

「はい。わかりました。ありがとうございます」

「トールよ、他に何か良い物はないか?」



傍で控えていた髭のおじさんにオーディン様はそう問いかける。



「それでしたら、我がミョルニルとメギンギョルドをお納めください」



トールさんが見せてくれたのは大きな金づちと腰に巻くベルトだった。



「ミョルニルは思う存分に打ちつけても壊れることなく、投げても的を外さず再び手に戻る。大きさも変幻自在だ」



おー……、それは結構便利そうだ。

グングニールと一緒に使えそう。



「そして、メギンギョルドは付けたものの力を数倍に引き上げることができるものだ」



力を数倍に……。

ってでもそれは私には使えそうにないなぁ。

でもとりあえずスケッチしとこう。

月依(つくよ)あたりに使ってもらえそうだし。


そんなわけで私は新たに三つの武器と一つの装備を新たに手に入れた。

流石にコンロンの元始天尊様程信頼を得てるわけではないのでこれ以上武器を見せてもらえなかったけど。

神殺しの枝なんてものを見せてもらえただけでも大収穫だ。


―――



「今日はしっかり回収できた?刹那」

「おう。ばっちりよ!」



言いながら刹那は着物姿だというのに袖をまくって力こぶを見せてくれる。

うん。ぜんぜん筋力があるように思えない。

まぁ、永久(とわ)もそんな感じだったから実際の筋力とは別の力を使ってるんだろうけど。



「奏の方はどうなんだ?」

「神殺しの枝と投げたら絶対命中する槍と金づちとカムイを倍加できるベルトをスケッチしてきた」

「……なんか名前だけ聞くとすげー物騒なもん交じってたな、おい」

「これは奏さんも『恐怖の殺戮少女』の仲間入りですかね?」



私達の話を聞いていた月依(つくよ)は微笑みながらそう告げる。



「やめてよ。まだまだ、陽花(ひはな)の足元にも及ばないわよ」

「ははは。まぁあの力は規格外ですからね。しょうがないです」

「それはそうと昨日サクヤがうちに来たんだけど、話聞いてる?」



昨日の事が気になり月依(つくよ)にそう問いかける。



「いえ。私は別に。サクヤちゃんがどうかしたんですか?」

「ん……いや話聞いてないなら良いや。そのうち話してくれるでしょ」

「そうですか」



そう言って月依(つくよ)は思案顔になる。



「ま、サクヤちゃんなりに考えがあるんでしょうね」



かと思うとすぐに笑顔になる月依(つくよ)

まぁ二人も長い付き合いぽいし心配はいらないだろう。



「さてさて、次に向かいますよ!」

「次はどこ?月依(つくよ)

「次はヴァン神族の子孫が住んでいる世界ヴァナヘイムです」



―――



「ようこそヴァナヘイムへと参られました。私は国の代表のフレイヤと申します」

「こちらこそよろしくお願いします」

「ギフト回収の件承知いたしました。こちらへと参られてください」

「はい。わかりました」

「カムイの込められたものに関しましては、この私のブリーシンガメンでよければ」



そう言ってフレイヤさんは私に一つの首飾りを見せてくれる。



「この首飾りには使用者の身体能力を向上させる能力があります」

「ありがとうございます。さっそくスケッチさせていただきますね」

「どうぞ。ご自由に」



そしてその日は無事にギフトを二つ回収することに成功し、私は新しい力を五つ手に入れることができた。



「なぁなぁそのブリーシンガメンってどの程度なのか試して見ねーか?」



ヴァナヘイムからの帰り道、刹那がそう言ってくる。

まぁ確かにどれだけ身体能力が向上するのか、試してみておきたい。



「そうだね……。じゃあ月依(つくよ)相手してもらって良いかな」

「はい、いいですよ」



ヴァナヘイムの町はずれにやって来て私達は模擬戦をやってみることにした。



「それじゃ、いくよ。ブリーシンガメン召喚!」



とともにお腹がすくけどちょっと我慢。

首にブリーシンガメンを下げると体が今までになく軽く感じる。

おお。これはすごいんじゃないの。



月依(つくよ)。いくよ!」

「どうぞどうぞ」



言葉と共に月依(つくよ)にかけていく私。

けれど。

私の攻撃は軽く月依(つくよ)にいなされる。



「……全然駄目じゃねーか」

「まぁ、今までの奏さんよりも数十倍良い動きはしてましたけどね」



月依(つくよ)は言いながら苦笑いする。

オタクで体力皆無の私が数十倍良い動きするようになったところで、一が数十倍になっただけなのだ。

つまり、全然たいしたことない。



「うーん……もしかしてこれ、私が使うより、あんた達が使った方が良いんじゃないの」

「そうかもしんねーな」

「そうですねぇ……」



やっぱ私には前衛向きの武器や装備は使いこなせないなこりゃ。

覚えるのは後衛向きの武器やサポート系のカムイの込められた装備に絞ろう。

そう心に誓う私だった。

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