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天才と天災と天使。

「ねぇサクヤ。あんたここに来たの他に理由があるでしょ」



朝食後。私はサクヤにそう問いかける。



「……バレましたか。さすが奏さんです」



言いながらペロリと舌を出すサクヤ。

まったく嘘が付けない性格の子だな、この子は。

性格こそ違うけどその辺は月依(つくよ)とよく似ている。

だからこそ一緒に同居なんてできるんだろうけど。



「昨日の事が気になって私達のとこに様子を見に来てくれたってとこでしょ」

「まぁ……そうですね。それも目的の半分です。でも、月依(つくよ)ちゃんをお姉様と二人きりにさせてあげたかったのも嘘じゃないですよ」

「さいですか。まー気遣いありがとね、サクヤ」

「すまねえな、サクヤ」



そう言って刹那も頭を下げる。



「サクヤ、それで私達に何か話があるんじゃないの?」

「はい。でも、ちょっと昔の話をしましょうか」

「ん?」



何でそこで昔の話になるんだろう。

よく分かんないな。



「お姉様……陽花(ひはな)さんはこの世界に来た時は、本当に落ちこぼれだったんです」

「は?あの陽花(ひはな)が?」



今じゃこの国二番目のカムイの使い手と言われる陽花(ひはな)が?

にわかには信じがたいな……。



陽花(ひはな)さんはカムイの申請だけは通ったんですけど、そのことごとく全てを暴発して使用許可が降りなかったんです」

「……そっか」

「本当に初歩的なカムイと呼ばれる蛍火(ほたるび)さえ暴発して失敗しました。そしていつの間にかついたあだ名が『恐怖の殺戮少女』」

「ははは。その頃からそう呼ばれてたのね」

「実際、操るカムイ全てが制御不能で本当に危険人物扱いでしたからね」

「でも今は一時間に一回とはいえ操れてるじゃない。それはどういうことなの?」



何か特別な修行でもしたんだろうか。



「それは今の陽花(ひはな)さんのカードが月依(つくよ)ちゃんの遺伝情報を元に作ったカードだからです」

「……話がよくみえないんだけど」

「もともとカムイのカードは使用者の遺伝情報を元に作られます。そして、その所持者以外は使えるはずがない。それが通説だったんです」

「ふーん……だから陽花(ひはな)月依(つくよ)のカードを使えるのは特別なのね」

「その通りです。そしてテラスちゃんに関しては更に特別で他人の全てのカードを使いこなせることができます」

「……さすがタカマガハラ第一位って呼ばれるだけはあるわね」

「今までのタカマガハラの歴史でこんな事例は今までなかったんです」

「へぇ……」

「だからお姉様とテラスちゃんがこんな力を持って生まれてきたのは何か意味があるんじゃないかと、そう思うんです」

「つまりサクヤ、お前は、二人は永久(とわ)と戦う為にその力を授かったと言いてえのか?」



黙ってサクヤの話を聞いていた刹那がそう口にする。



「はい……その通りです」

「まぁ……確かに陽花(ひはな)の暴発カムイが馬鹿みたいな威力なのは認める」



胡坐をかいたまま膝に頬杖をついて刹那は続ける。



「でも、それだけだ。威力だけでまともに制御できてねぇ。あれじゃ永久(とわ)は倒せねぇよ」

「本当にそう思っていますか?刹那さん」

「……それはどういう意味だ。サクヤ」

「私はカムイ無しでも人の心が読めるんですよ」

「何だと……?」

「刹那さんの思ってることは大体理解しました。それじゃお姉様がまともに暴発カムイを制御できるようになれば良いんですね?」

「……まぁそれができるのならな」

「分かりました。その辺はキクリ先生と相談してみます」



そう言うとサクヤは立ち上がりお辞儀をして部屋を出ていく。



「刹那。あんたさー……死ぬ気なんじゃないの?」

「何の事だ?奏」

「いや、良くて勝率半々の相手だっていうのに、テラスちゃんの申し出もあまり気乗りしてなかったじゃん」

「……まぁそうだな。正直俺は死にたいのかもしれん」

「あんたねぇ……。あんたが死んだらこの世界どうなるのか分かってて言ってんの?」

「意外と永久(とわ)のやつがしっかり統治してくれるかもしんねーぞ」

「……そうかもしれないけど。人をあんな嘲る様な目をしたやつがそんな事してくれるとは到底思えないわよ」

「……そーだな。アイツとは昔から意見があわなかったからな」



その言葉に私はハッとする。



「あんた、もしかしてだいぶ記憶戻ってるんじゃないの?」

「……まぁな。記憶は八割方戻ってきてる。残りのギフトは俺の魔力やら能力の欠片なんだろうな」

「そっか……。じゃあますます永久(とわ)に奪われるわけにはいかないね」

永久(とわ)のこと、怖くねーのかよ」

「そりゃ怖いわよ」



アイツの力を目の当たりにして怖くない人なんていないだろう。

普段は冷静な月依(つくよ)ですらそうだったのだから。

でも、それでも。



「私の仕事はあんたの記憶の欠片を集めることなの。だからここで尻尾巻いて逃げるわけにはいかないのよ」

「そうか……。まぁこの原因作ったのはお前だしな」

「それは言わないお約束でしょ」



そう言って刹那の頭を軽く小突く。



「ありがとな。こんな面倒に巻き込んじまって」



私に小突かれながらも微笑む刹那は思わず抱きしめたくなるくらい可愛いらしい笑顔で。

ふと私は出会ったばかりの頃の刹那の笑顔が頭をよぎる。

……もしかして今までの(やから)口調って。

この子はもう……ふとそうした考えが頭をよぎるのだった。

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