私、異世界で天使に会っちゃいました。その3
「そうか……『輪廻の守護者』とやらに会ったのか……」
「うん……」
永久に出会ってすぐ。
私達は皇照宮のテラスちゃんの元を訪れシエルであった事の顛末を報告した。
月依はその件で余程ショックを受けたのか、ずっとうかない表情を浮かべている。
「はぁ……にしてもお前の鋼鉄壁を豆腐の様に切り裂くなんて化け物か、そいつは」
「そう……だね……ホント、化け物だと思う……」
「コンロン最強の威力を持つ番天印の直撃を受けてもピンピンしてましたからね……」
「そうですか……あの番天印を受けても生きてるんですか……だとしたら本当に化け物ですね……」
私の言葉にキクリ先生も少し青ざめた顔をしてそう呟く。
キクリ先生は番天印の威力を知っているようだ。
「はぁ……頭の痛い話だな……。ただですら時間が無いというのに、そんな奴が妨害してくるのか……」
「とりあえず奴に対抗するには早く俺の力を元に戻すしかねぇ」
「刹那よ。仮におまえが力を取り戻したとして、永久に勝てる見込みはどれだけある?」
「あいつに回収されたギフトの種類によるが、良くて半々……ってとこだな。そもそも俺とアイツは対になる存在なんだ。俺が元の強さに戻ったところで勝ちもしねーし負けもしねーだろうな」
言いながら、頬杖をつく刹那。
勝ちもしないし負けもしないって……それじゃ全然駄目じゃないのよ!
「仮にだ。もし仮にお前が永久に負けて存在を消された場合、この世界はどうなる?」
「さぁな……。それは俺にも分かんねー。アイツが『刻の番人』と『輪廻の守護者』を兼任することになるんだろうな」
「……その時になってみないと誰にも分らんという訳か」
「まぁそういうこったな。でもまぁろくでもない事しか考えてねぇと思う。アイツの性格的に。それにアイツが下界に降りているってことは天のジジイの負担が二倍になってるってことだ」
え゛。
それってつまり……。
「猶予が半年になってるって事ですね……」
「ああその通りだ、月依。俺の想像通りならな……」
はぁ……ただですら猶予が無かったのが更に短縮されて半年の猶予だなんて。
何この無理ゲー。
「まぁ大体の事情は分かった。永久の対策についてはこちらでも何かできることがあるか手段を講じることにしよう」
「そうは言うがよー、お前らが束になった所でアイツには勝てやしねーぞ」
「まぁな……月依がそんな顔をしているような奴なんだ。相当な化け物なんだろうな」
「……お姉ちゃんなら……。もしかしたら勝てるかもしれない……けど。巻き込みたくない……です……」
青ざめた顔をした月依がたどたどしく言葉を紡ぐ。
「まぁそうだな……。あいつの暴発カムイも月依の鋼鉄壁をスパスパ切り刻むし、もしかするかもしれんな……」
「……うん」
苦笑いしながらそう言うテラスちゃんに同意する月依。
そうか陽花の暴発カムイか……確かにそれなら勝ち目あるかも。
でもそれでも……私も陽花を巻き込むのは反対だな……。
「元担任の私から言わせてもらうと、私も反対です。陽花ちゃんの暴発カムイに頼るのはあまりにもリスクが高すぎます」
「だろうな……はぁ……」
本当に面倒なことになったといった具合で一つ大きなため息をつくテラスちゃん。
「なら、私と陽花が使う正常なカムイの二人がかりならどうだ?」
「……正直な所、分からないです。……それでも勝てる見込みは薄いと思います」
「……そうか。月依がそう言うなら本当に勝てる見込みは薄いんだろうな」
「とりあえずよー、アイツが俺の命を狙ってくるのは最後だって言ってるんだ。それまではギフトの回収に専念しようぜ」
「まぁそうだな……刹那が永久に対抗できる力を持つことを願うしかないか……」
「そう言うこった。まーホントにやべー時はアンタのタカマガハラ一位の強さとやらも必要になるかもしれんがな」
「……分かった。準備だけはしておこう」
「テラスちゃんっ。あなたはこの国を預かる皇帝陛下なんですよっ」
テラスちゃんの言葉にキクリ先生は叱責する。
「世界が崩壊するかもしれんのに皇帝もクソもなかろう、キクリよ」
「ハハハハハ。流石、民を預かる皇帝陛下様だ」
刹那は大きな声で笑いながらテラスちゃんの事を喝采する。
「はぁ……もう……しょうがない子ですね……」
「……そうだね……世界が崩壊するかもしれないんだよね……。……私もお姉ちゃんに頼んでみる」
ポツリポツリと月依はそう呟く。
「良いのか?月依」
「うん。だって……世界が崩壊するかもしれないなら、お姉ちゃんの力にかけるしかないよ……」
「そうか。わりいな。お前の大切な姉ちゃんを俺の面倒に巻き込む事になっちまってよ」
そんな感じで私達の永久対策会議は終わりを告げた。
皇照宮からの帰り道、私はふと思い立ち二人に先に部屋に帰ってもらうことにした。
私も早く何か強い力を探さないと駄目だ。
関係ない陽花やテラスちゃん頼みじゃなくて、私だけの力をみつけないと。
そう決意して再び皇照宮へと歩を進めるのだった。




