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私、異世界で天使に会っちゃいました。その1

リュウグウとの争いから一週間が過ぎた。

あれから私と月依(つくよ)と刹那は一日二個のペースを守り、今週最後の一個のギフトを回収するために、シエルへとやって来た。

この国は天国に限りなく近い国と呼ばれているのだそうだ。


シエルの道を歩く人達の姿も金髪碧眼の人だらけだ。

流石に背中に白い羽が生えた人はいなかったけれども。

時折道を駆けまわるめっちゃかわいい幼女達に目を奪われる私。

あー……目が幸せなんじゃー。



「なんていうか、どっかのヨーロッパの国にでも来た気分ね」

「そうですねぇ……。天国のモチーフってここのことらしいですよ」

「へぇ……そうなのね……」

「なぁなぁ、それはともかくさっさとギフト回収しちまおうぜ」



『輪廻の守護者』が刹那の記憶の欠片を回収しているという話を聞いてからというもの、刹那はどことなく焦っているように感じる。

『輪廻の守護者』に記憶を欠片を回収されると何かまずいの?と本人に聞いたのだけど。

何となく嫌な予感しかしないんだ、という言葉しか返ってこなかった。

んー……まぁ自分の記憶の欠片を奪われて焦るのは分かるんだけどさ。

もしかしたら親切心で手伝ってくれてるのかもしれないじゃないの。

それにあれからギフトが奪われたって報告はタカマガハラには入ってないわけだし。

もうちょっとのんびり行こうよ。

私はそう言って刹那を落ち着かせるのだけど、それでも刹那の気は急くばかりだった。

急いては事を仕損じるっていうのになぁ。

どうやったら落ち着いてくれるのやら。


そんな訳で刹那に急かされるようにシエルの宮殿を訪れ。

いつも通りお偉いさんに謁見して私達はギフトの回収の許可をいただいて私達はギフトの元へと向かっていた。



「とりあえず今日も何事もなく無事に二個回収できそうですね」

「うん。これで久々の休みが迎えられるよ……」

「ですねぇ……」



あの時、週一の休みを懇願しなければ本当に毎日二個、無休のペースで回らされそうな勢いだったもんね。

ホント、無茶な皇帝陛下を持つと部下は苦労するよね。

やれやれだ。

ま、テラスちゃんもキクリ先生と学園を休んで日々各国と交渉してくれてるそうなんだけどさ。


明日は何しようかなぁー。

とりあえず、元始天尊様から貰った宝貝(ぱおぺい)のデータから使えそうなやつをまたスケッチしようかな。

あと、非常用の携帯食も作っておきたいし。

あれは美味しかったし、お腹にも溜まるしで良いものだった。

材料はタカマガハラでも調達できるものらしいから買い物にもいかないとだ。

うん。明日はそうしよう。


そんなことを考えているとシエルのお偉いさんに教えてもらったギフトの近くへとやって来ていた。

ギフトはこのシエルの街の中心部で祭られているのだそうだ。



「おー……あの小山くらいある大きな岩がギフトっぽいですね」

「そうみたいだね」

「……なぁ……なんか様子がおかしくねぇか?」



刹那の言葉で私達も異変に気付く。

確かにおかしい。

さっきまで人の往来があったのに、急に人がいなくなった気がする。


というか。

ギフトの方角からくる人の姿が全くない。

私達は顔を見合わせギフトに向かって駆け始める。


そして私達はその姿を見た。

黒髪の真っ白な服を着た美少女が小山程あるギフトの前でぼんやりとこちらを見ている姿を。

その周囲にはうめき声をあげ血にまみれた人達が横たわる姿を。

少女の真っ白な服は所々血のりで朱色に染まっていた。



「ちょ、ちょっと!!あんた、何やってんのよ!!」



私はその少女に向けて、そう言葉を発する。



「……」



その私の問いかけに少女はただ黙って冷たい視線を送るのみ。

その間に月依(つくよ)は近くで横たわる人の様子をうかがう。

刹那は少女を見つめたまま黙ったまま凍り付いたかのように動かない。



「良かった……まだ助かる。ちょっと待っててくださいね」



そう告げると月依(つくよ)は横たわる人々に次々に癒しのカムイをかけ始める。

そうして月依(つくよ)の手によって回復した人達は少女に怯えるように私達が来た道の方へと向かって走って逃げ去って行く。

その様子を無感情に眺めている黒髪の少女。



「ちょっと、そこのあんた!!何してんのかって聞いてんだけど!!」

「……」



私の声がまるで届いていないかのように少女はギフトの方へとゆっくり振り向いた。

そして私と月依(つくよ)はその姿を目にしてぎょっとした。

何故なら少女の背中には真っ黒な翼が生えていたのだから。

少女が何か呟くと小山程あるギフトが塵となり少女の中へと消えていってしまったのだから。


まさか……。

まさかこの女の子が……。



「……もしかしてあんたが『輪廻の守護者』ってやつなの?」



そう私が問いかけると少女はピクリと反応し。

こちらに向かって振り返ると同時に、背中の羽を翻し宙を舞う。



「……そうか……。それぐらいの記憶は戻っているのか、刹那」

「……ああ……覚えてるぜ、その面もな」



刹那の言葉にクククとこちらを嘲笑うかのように笑みを浮かべる。

そして少女はこう告げる。



「……私の名前は永久(とわ)。『輪廻の守護者』と呼ばれる天使」


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