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私、異世界で知り合いに会っちゃいました。その1

私と刹那はユズキに連れられ、彼女の勤めている会社の事務所とやらに案内されて。

受付では私がさっき声をかけた言葉の通じないスーツの女性が微笑んでいた。

で、通された応接室で私はユズキにトラックにはねられてあったことを全てかいつまんで説明した。

その話をユズキは怪訝な顔もせず澄ました顔で聞き終え。



「ふーん……そんな事になってたんだ」



そうのたまうのだった。



「ユズキ。あんた、これまでの話、全部信用してくれるの?」

「そうだね。ボクは奏さんの話は全部本当の事だと思ってるよ。それに刹那さんみたいな子を見るのも初めてだしね」



そう言ってニコリとユズキは微笑む。

そりゃ刹那みたいな女の子見るのなんて初めてでしょうよ。

和服に天使の翼生えてる素っ頓狂な恰好なんだもの。


それにしてもなんだコイツ。

まるで女の子を口説くような男みたいな口調と笑い方しやがってと思いつつ。

けれども、ちょっとどこか安心している自分が居た。


なんだこれ。

女の子相手なのに少しドキリとしちゃったじゃない。

変な感覚だなぁ……まぁいいや。



「そう。それはありがたい話ね。じゃあクソジジイが言っていたその記憶の星……流れ星について何か心当たりないかしら」

「んー……この世界で流れ星って言えば『ギフト』くらいしか思い当たらないんだよね」



ギフト?

ギフトって贈り物のこと?

何じゃそれ。



「この異世界では『ギフト』……『天からの祝福』と呼ばれている流れ星が降ったことが有ったんだよ」

「それでそれで?」



ユズキの話に思わず身を乗り出し私は先を促す。



「で、その『ギフト』を授かった人たちの手によって、この異世界の科学なんかが発達したんだよね」

「へー……じゃあそれが刹那の記憶の星なんじゃないの?」

「でもそれって、千年も昔の話なんだよね」

「……駄目じゃん」



私、千年も昔から存在してませんからーーー!

残念っ!!!



「なーんかやっぱあのクソジジイがテキトーな嘘こいてる気がしてきたわ……」

「んー……そうでもないんじゃないかなぁ。この異世界はその『ギフト』が降る前は神様の言う『剣と魔法が統べる世界』だったらしいし」

「そ、そうなんだ……?」



じゃあ、あのクソジジイが言ってたこともあながちデタラメじゃないってことかぁ……。

私が死んだのはつい数時間前の話だと思ったのに、こっちの世界じゃ一年経過していたりもするし。

剣と魔法が統べる世界の千年前に降った『ギフト』っていうのが刹那と何か関係してないとも言い切れない……のかなぁ……。



「それはそうと。何であんたはこの異世界に居るの?私みたいに死んじゃったわけじゃないんでしょう?」

「ん……?だってこの異世界、割と自由に現世……日本と行き来できるんだけど」

「はぁ?そうなの?」

「うん。ボクも含めて今この街には日本人が何人かいるよ」

「そ、そうなのね……」

「ついでに言うなら、こっちの世界から日本に行ってる人もいるよ」

「へ、へぇ……」



し、知らなかった。

いつの間にか日本はラノベのような世界感になっていたなんて。

こりゃ宇宙人や未来人も日本にいますわ、確実に。



「じゃあ、ここから日本に帰ることもできるってことなのね」

「うん。そういうことになるね。でもあまりお勧めしないかなー。日本に帰るのは」

「なんでよ」

「だって、奏さんのご両親は自分の娘は一年も前に死んだものだと思ってるんだから」



う……確かに。

いくらオタ趣味に許容のあるうちの親でも、死んでしまったはずの娘が現れて実は異世界に転生してましたとか言っても信じてもらえなそう。

娘そっくりの他人がからかい半分で現れたとしか思ってくれないだろう。

ここは現世に帰るのを諦めて、あのクソジジイの言葉に素直に従って刹那の記憶の星とやらを探すしかないかー……。

でもなー。

刹那の記憶の星っていうのも『ギフト』が関係してるかもって程度が分かっただけだし。

はぁ……やっぱ私の新しい人生、詰んでない?



「とりあえず、奏さんに刹那さん。二人の身柄はうちの会社、高千穂(たかちほ)で保護させてもらう形で良いかな」

「そうね。こんな言葉も通じない異世界に放り出されてどうしようかと思ってたからありがたい話ね」



ほんと、ユズキの申し出は願ったり叶ったりだ。



「あ、そうそう言葉の事なんだけど。このヘッドセット使ってもらえば通じるようになるから」



そう言ってユズキは小さなヘッドセットと眼鏡を二セット戸棚から取り出してテーブルに広げる。

え……。

そんな便利なもんあるのこの異世界。

あのクソジジイ、これも見越してたんだろうか……。

いや、無いな。

絶対その辺考えてなかっただけだ。



「えっと、これを付ければ良いのね」



私はテーブルのヘッドセットと眼鏡を一式受け取り身に着ける。

刹那も私に習いヘッドセットと眼鏡を身に着ける。

そして私は辺りを見回してみると戸棚にあったよく分からない文字で書かれていた文字の本の背表紙が瞬時に翻訳されて読めるようになっていた。

おお……すごいなこれ。



「ちょっとさっきの事務員さんと話してきていい?」

「うん。ご自由にどうぞ」



じゃ、お言葉に甘えて。

応接室を後にし私は受付の事務員さんの所へと向かう。



「あのー……」

「はい。あ、ヘッドセット受け取られたんですね」



おー……ちゃんと翻訳されてるじゃんこれ。



「はい。さっきは急に逃げ出しちゃってすみませんでした」

「いえいえ、良いんですよ。それにしても運が良かったですね」

「そうですねー。あなたに声をかけたおかげでユズキに会えたんですから。ユズキを呼んでくださってありがとうございました」

「いえいえ。それも仕事の一環なんで」



そう言ってニコリと微笑む事務員さん。

うーん、これもまた天運とでもいうんだろうか。

あんまりあのクソジジイのことをありがたいとは思いたくはないのだけどね。

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