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私、異世界の揉め事に巻き込まれちゃいました。その12

『でだ……なんでお前達が帰ってきてるんだ』



いらだったようなテラスちゃんの声が通信室に響く。



「どうも入れ違いになっちゃったみたいで」

『まったく……そうと分かっておれば、無駄な手続きなどしなくてよかったのだ……』

「ともかくこれから私達はお姉ちゃん達を助けに向かいますので」

『まぁそれは良いが……変な気は起こすなよ?』

「えっと……なんのことでしょう?」

『お前のことだ、乙姫のババアを説得しようとか考えておるだろう』

「バレましたか」



そう言ってペロリと舌を出す月依(つくよ)



『お前の表情は分かりやすいんだよ、まったく……止めはせんが無理はせぬようにな』

「ありがとう、テラスちゃん」

『あと、元始のジジイに兵は送っておいたと伝えてくれ』

「わかりました」

『それじゃ、無事に帰って来いよ、月依(つくよ)

「うん」



答えると共にブツリと通信が途切れる。



「という訳で、私達、乙姫様を説得してきますんで、自爆は待ってください」

「お主本気でそのように申しておるのか?」

「本気ですよ、ね、奏さん」



え゛。

そこでなんで私に振るかな。

まぁそもそもこの戦は私達が原因だし?

それで自爆スイッチポチーじゃ私達が何のためにクリュウに行ったのか分かんないし。

何より一般人が犠牲になるのは寝覚めが悪い。



「まぁ……私もそう思ってた」

「異世界人の倫理観は分からんのう……」

「そうかもしれませんね」

「正直俺にも記憶が欠けててよう分からん」



言いながら刹那は手に持った携帯食を頬張る。



「とにかくリュウグウにさっさと向かいましょう。もう無駄な犠牲は出したくないです」

「うん。わかった。刹那は今回は留守番ね」

「まぁいいけどよ。無事に帰って来いよな奏、月依(つくよ)

「ありがとね」



そして私達は外に出ると月依(つくよ)疾空迅風(しっくうじんか)で大空を舞う。

眼下にはコンロンとリュウグウの争いに介入してきたタカマガハラの兵の姿があった。



「これでもまだ五分五分って感じですね……」

「そうみたいね……」

「リュウグウへ急ぎますよ」



そう言って月依(つくよ)はリュウグウへ向けて加速する。



「さて……リュウグウの人達も馬鹿じゃないですからね。また新しい穴を開けちゃってください、奏さん」

「はいはい。それじゃ」



私はメモ帳を開くと一つの宝貝(ぱおぺい)に実体化するように念じる。

その宝貝(ぱおぺい)は番天印。手のひらサイズの印鑑型宝貝(いんかんがたぱおぺい)だ。

でもそれでもコンロン最強の威力を持つとも言われているらしい。



宝貝(ぱおぺい)・番天印!!」



そう私が告げると共に番天印は飛んでいきリュウグウの壁に接触したかとおもうと大爆発を起こし壁に大きな穴を開ける。



「お見事です、奏さん」

「あはは……そうでもないよ」



言いながら手元に戻ってきた番天印を元の絵に戻す。

そして腰につけた布袋から携帯食を取り出し口にする。

はぁ……ほんと難儀な能力だわ、これ。

そう思いながらも、月依(つくよ)の役に立てていることにちょっと幸せを感じていた。


―――


「無事に潜入できましたね」

「ん……まずはどうするの?」

「とりあえずお姉ちゃん達と合流しましょう。乙姫様のとこはその後です」

「分かった。それじゃ、今度はこれ使うわね」

「そうですね」



私が選んだ宝貝(ぱおぺい)霧露乾坤網(むろけんこんもう)

公主さんの宝貝(ぱおぺい)だ。

それを手元に実体化させる。



宝貝(ぱおぺい)霧露乾坤網(むろけんこんもう)!!」



その声と共に指にはめた霧露乾坤網(むろけんこんもう)から水があふれ出す。

その水を霧になるように念じると水は蒸発していきリュウグウは霧で満たされていく。



「やっぱりその能力便利ですよ」

「お腹が空かなけりゃね……」



霧露乾坤網(むろけんこんもう)をネタ帳にしまい、再び携帯食を口にしながら私はそう告げる。



「ともかく。先を急ぎましょう」

「うん」



宮殿へと向かう道すがら。



「奏さん、奏さん?」



そんな声が頭の中に響いてきた。



「と……月依(つくよ)ストップ!アカリから連絡がきたよ」

「こっちも桜花(おうか)さんから連絡が来ました」

「とりあえず宮殿の近くにいるみたいね」

「そうみたいですね。それじゃ、そこまで一気に行っちゃいましょう」



探索のカムイでアカリ達の位置を把握したのか月依(つくよ)は私を抱えて疾空迅風(しっくうじんか)を発動する。

程なくして。



「あ、いたいた」



私達は物陰に隠れていた陽花(ひはな)達の姿を見つける。



「なんだよ、もう。ちゃんと脱出してるんじゃん月依(つくよ)

「ホントホント。心配して損したー」

「えへへ……ごめんごめん」



アカリや桜花(おうか)が能天気な声で文句を言ってくる。



「ほんとに……心配したんだからね」



言うと同時に陽花(ひはな)月依(つくよ)を抱きしめていた。



「心配かけてごめん、お姉ちゃん……」



月依(つくよ)も姉を抱く手に力を込める。

はぁ……まったくお熱い事で……。

こっちまで火傷しちゃいそうだよ。



「それにしても、この霧は何なのですか……?」



陽花(ひはな)達の後ろで控えていた公主さんが疑問を口にする。



「ああ……それは、奏さんの能力で霧露乾坤網(むろけんこんもう)をコピーしてもらったんです」

霧露乾坤網(むろけんこんもう)をコピー……ですか……」

「奏さん、すごいんですよ。他にも番天印とかも使えちゃうんですから」

「それは……本当にすごいですね……。それが奏様の真の力……」

「まぁ相変わらず使った後にはお腹すくから携帯食必須なんだけどね」



腰につけた携帯食を見せながら私は苦笑いする。



「で。月依(つくよ)、これからどうすんの?」

「ん?これから乙姫様を説得しに行こうかと」

「はぁ……まぁそう言うと思ったよ……」



言いながらアカリは苦笑する。



陽花(ひはな)桜花(おうか)も乙姫様を説得しようって言ってきかないんだもん」

「そっか……」

「奏さんも賛成なんでしょ?」

「まぁそうね。一般人が塵になるのはかなり寝覚めが悪いしね」

「おっけーおっけー。その案にのったよ」

(わたくし)も、つきあわせていただきますよ……」



そんな訳で私達は宮殿にいるであろう乙姫の元へと向かうことになった。

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