私、異世界の揉め事に巻き込まれちゃいました。その9
連休明け。
「ふぁ~……おはようございまふ、奏さん」
いつもと違い覇気もなくすごく眠たそうな表情の月依。
ああ……ホントに昨晩はお楽しみだったんですね。
そう言おうかどうしようかと悩んだけど、ちょっと可哀そうだから言うのをやめておいた。
私はこれでも気遣いが出来る方なんですよ、本当に。
まぁどうせテラスちゃんあたりが突っ込むだろうし。
とか思ってたら。
「昨日は三人で薄い本みたいな事してそんな楽しかったのか、月依」
と、刹那が言わなくて良いことを言ってしまった。
「えっと……あははは……。そ、そんな事ないよ?」
そう答える月依の声は明らかに狼狽えていた。
「なんだよ、そんなに照れなくても良いんだぜ、別に。俺たち別にお前ら姉妹がアレな事してても気にしなモガガ」
「ちょっと、刹那!」
私は慌てて刹那の口を手で塞ぐ。
はぁ……まったく。
この子はデリカシーの欠片も無いのかね……。
「月依。刹那のいう事は別に気にしなくて良いからね」
「はい……。ありがとうございます、奏さん」
いつにも増してしおらしい彼女の姿に少しドキリとしてしまった。
なるほど……陽花はこんな姿の妹に落とされたってわけだ。
まぁ確かにこんな妹がしょっちゅう好き好きアピールしてきたら手をだしちゃうわな。
納得。
そして皇照宮の応接室にて。
「元始のジジイから、この動力源の代わりに使える宝貝が届いた」
いつも通りの皇帝の正装に身を包んだテラスちゃんが小さめの段ボール箱くらいの箱を私達に渡してそう告げる。
おー……意外と早かったな。
もっと時間がかかるものかと思ってたけど。
「使い方は定期的に誰かがカムイを補給してやることで半永久的に動作する宝貝らしい」
「ふーん。そうなんですね。ふぁぁぁ」
言いながら月依は大きなあくびを一つ。
「まったく。休み明けでたるんでおるぞ、月依」
「すいません、テラスちゃん。でも仕事はしっかりとこなすんで」
「ならよいが。ほどほどにしとけよ、陽花やサクヤとイチャつくのも」
「な!だから、そうじゃないですってば!」
「はぁ……学園時代からバカップルだったのに何を今更言っているんだ、おまえは」
「うー……」
「まぁ仕事に支障をきたさなければ別にいいさ。何をしてもな」
そう言ってテラスちゃんはフフリとほくそ笑む。
テラスちゃんも性格悪いなぁ……。
「……テラスちゃんのいぢわる!」
「陽花には日頃から頭を悩まされているからな。その仕返しだ」
「私でストレス発散しないでよ、もう!」
やれやれ……。
陽花もテラスちゃんに何をしてるんだか。
まぁ妹好きの幼女好きな陽花の事だ。
テラスちゃんにもちょこちょこちょっかい出してるに違いない。
同じ幼女好きの私としてもちょっかい出したいとこだけど、テラスちゃんは仕事の上司なわけで。
機嫌を損ねられたらたまったものじゃないから自重しているというのに。
「それじゃ。この宝貝届けに行ってきます」
「ああ。ついでに余裕があればシエルに行ってギフトを回収してきてくれ」
「分かりました」
そんな訳でコンロンから届いた宝貝を持ってリュウグウの乙姫様の元へとやってきた。
「ほほう。ギフトの代わりになるものを持って来たとそう申すのだな」
「はい。コンロンの宝貝です。カムイを定期的に補給することで半永久的に動作することができます」
「ふむ……そうか。ならばついてくるがよい」
そうして通されたのはリュウグウの中心部。
リュウグウの動力機関のある場所だった。
「あれがギフトだな。まったくこんな無茶な使い方しやがって……」
動力機関の真ん中にはまっている岩を眺めながら苦々しく刹那はそう呟く。
「さて……それではその宝貝ためさせてもらおうか」
「はい。どうぞ、試してください」
そう答え、月依は宝貝を衛兵に手渡す。
そして衛兵たちはギフトを動力炉から取り外し宝貝を取り付け始めた。
「ほほう……流石、千里眼の宝貝を持つという元始天尊じゃな。リュウグウの動力についてよく分かっておる」
「ほへー……元始天尊様ってそんなものも持ってるんですね」
だからクリュウの接近も探知できたのか。
その割には私達がコンロンを裏切ったとか疑いをかけてきたけど。
まぁその辺の細かい所までは分からないのかもしれない。
そんな話をしているうちに動力炉に取り付けた宝貝が起動し始める。
「宝貝の起動を確認しました。出力もギフトの時より数倍安定しています」
動力炉を管理している人の報告が私達の元に届けられる。
ホ……良かった。これで無事にギフトの回収ができそうだ。
そう思ったの束の間。
「ふふふ。はははは!これで。これでやっと我らが念願を果たすことが出来ようぞ」
そんな乙姫の高笑いが部屋中に響き渡る。
「は?」
「これよりリュウグウの進路をコンロンへと向ける!」
「ははっ。かしこまりました、乙姫様」
ちょっとちょっと何言いだしてんのあんた達。
「あのー……何をされる気なんでしょうか。乙姫様」
月依は恐る恐るそう尋ねる。
「何をだと?分かっておろう。これからコンロンに攻め入るのだ」
はぁ?コンロンに攻め入るだぁ?
何言ってんのこの婆さんは。
「さて……この宝貝を持ってきてくれたこの者たちに褒美をとらさねばな」
「えっと……ギフト回収させていただいて、このままタカマガハラに返して欲しいんですが……」
「ならぬ!衛兵達よ、この者たちを捕えよ!」
その言葉と共に私達は衛兵たちに取り囲まれる。
「ちょっと……どうしよう月依?」
「んー……荒っぽい事はしたくないんですけど……」
言いながらカードを構える月依。
「なら、今回は俺の出番か?」
そう言って刹那が私達の前に進み出る。
そして。
「奏、月依、俺につかまれ」
「あ、うん」
「はい」
刹那が差し出した手に私達がつかまったのと同時に刹那は何かしら呪文を唱え始める。
と同時に刹那の体が発光し始めて。
周囲の時が完全に止まった。
誰一人としてピクリとも動かない。
「よし手を放して大丈夫だ。今のうちにギフト回収してとんずらするぞ」
「ほえー……あんたの時間を止める能力ってすごいのね」
「別に大したことねーよ。五分程度しか止められないからな」
「いやいやそれでも充分でしょ」
「それはともかく、さっさと回収して逃げちゃいましょう。話はそれからで!」
「おう」
「うん」
月依の言葉に同意するとともに私達はギフトを持つ衛兵の元へと近寄る。
「わりーな。これは回収させてもらうからな」
そう言った後、刹那がギフトに手を添えるとギフトは塵となり刹那の中に溶け消える。
「あ……これはまじい……」
そう刹那が呟くと刹那は意識を失ってしまった。
げ、おまえまじか。
刹那が意識を失うと同時に周囲の時間が再び動き出す。
「な、貴様ら何処から現れた!」
「アハハハ……何処からでしょうね?」
「お前達、大人しくした方が身のためだぞ?」
流石に倒れ込んだ刹那を抱えては逃げられそうにない。
「どうする?月依?」
「ここは大人しくしましょうか……逃げられそうもありませんし」
そんな訳で私達は捕まってしまい。
リュウグウの地下牢へと拘留されることになってしまった。




