のんびり過ごす異世界生活(連休二日目)
ピンポーン。
うーん……まだ寝てたのになー……。
ピンポーン、ピンポーン!
無視、無視。
ピンポーンピンポーンピンポーン!
それでも鳴りやまないインターホンの音……。
うーるーさーいー!!
「やかましいわっ!!!今。何時だと思ってんのよ!!!」
ベッドから飛び起き玄関の入口でインターホンを連打する少女達にそう告げる。
「あ、やっと起きた!おはようございます、奏さん」
「おっはよー、奏」
目の前には燃えるような赤い髪と赤い瞳の少女アカリと、フリフリの格好をしたツインテールの少女・桜花が居た。
「こんな朝早くから何の用なのよ、アカリ、桜花」
「いやー、連休最終日と聞いて、タカマガハラ観光でもしませんかとお誘いに」
「ぶっちゃけ興味ないから良いわ、そんなの」
そう冷たく言い放って扉を閉じようとすると、アカリは足を扉に差し入れ扉を閉じるのを阻んでくる。
「まぁまぁそう言わずに。きっと楽しいですから」
「……私は一時の楽しさよりも一時の睡眠の方が良いの」
「えー……。行こうよー、楽しいからさー」
桜花も私の服を引っ張って懇願してくる。
寝間着が伸びるじゃないのよ、やめてよね。
それに嫌だって言ってんじゃないのよ。
まったく、めんどくさい奴らだなぁ。
「明日からまたギフトの回収に奔走しないといけないのよ。それともアカリと桜花が代わってくれる?」
「それは遠慮しときます。めんどくさいですし」
「私もパースっ。普通に授業有るしー」
……こ、コイツ等は……。
「ゴチャゴチャうっせーなぁ……目がさえちまったじゃねーか」
私の背後から刹那の機嫌の悪そうな声が聞こえてくる。
「あ、刹那さんも一緒に遊びに行きましょうよー」
「きっと楽しいですよー」
刹那の姿を見つけた二人は刹那に向かって口々にそう声をかける。
私じゃ埒があかないと思ってか、二人はターゲットを刹那に代えたようだ。
「んー?何処か行くのかアカリ」
「ちょー楽しいとこですよ!だからさっさと出かける準備して遊びに行きましょう!」
「それにテラスちゃんも誘ったから、いわばこれは仕事の一環だよ、奏!」
「何その無茶苦茶な論理は……」
「さぁもう目もさえましたよね、だから準備準備っ」
「私達が朝食作ってあげるから、さっさと準備だよ、奏、刹那さん!」
そう言ってドカドカとアカリと桜花が勝手に部屋の中に上がり込んでくる。
そして。
「あーっ!奏さん、こんなにいっぱい薄い本買いこんでるし!」
「どれどれ?うわっ!もしかして奏も陽花と同じ趣味なの?」
アカリ達が覗き込んでいたのは昨日、陽花に借りてきた同人誌(しかも妹物)だった。
「ちがうの!私が好きなのは幼女なの!それは昨日、陽花に借りてきたものなの!」
そう声を大にして否定する私。
それはそれでどうかと思うけれども。
「そっかそっか。幼女好きなんですね……知ってたけど」
「まぁ出してた同人誌もそっち方面だったし、奏の死因が死因だからねぇ……」
「ああ……そういえばそうでしたね……知ってたけど」
「その哀れんだ視線はやめなさいよ、あんたら!」
ほんと我ながら間抜けな死に様だって思ってるんだから!
いまだに時々恐る恐るスレを見返しては死にたくなってしまうという思いを繰り返しているというのに。
「まぁまぁ。人生そんな悪いことばっかりじゃないよ、奏さん」
「そうそう。今元気で生きてるじゃない。それだけでもみっけものだよ」
「うう……なんで私がこんな年下の子達にいぢられなきゃなんないのよーーー」
「お前が俺の記憶を星にして飛ばしたからだろうが」
私の叫びに寝間着の着物で胡坐をかいてそう答える刹那。
そうですね。
ホント、その通りでございますね。
あーもう、私の馬鹿馬鹿、馬鹿野郎ー。
―――
で、桜花が作ってくれた朝食を胃袋におさめ(意外と美味しかった)私達は皇照宮の前へとやって来た。
あー……仕事以外でここに来たくないんだけどなー。
すっかり顔馴染みになってしまった衛兵さんにも、今日はお休みなんじゃないんですか?って聞かれてしまった。
やれやれだ。
「あ、来た来た。テラスちゃんー」
「はぁ……連日の雑務で疲れているというのにお前らは……」
皇照宮の門から出てきたいつもと違うラフなスタイルのテラスちゃんは何処かで聞いたような恨み言を呟く。
「まぁまぁ、良いじゃない。たまには外で遊ぶのも必要だよ」
「それはそうと今日は月依達はどうしたんだ」
私達を一通り見回した後、テラスちゃんはそう問うてくる。
「ああ……月依とサクヤは今頃、陽花をめぐってしっぽりとやっちゃてる頃じゃないかな。昨日二人してはりきってたし。お邪魔するのは野暮ってもんだよ」
しっぽりとやっちゃってるってどういう意味よ。
しかもはりきってたって。
まさかあんなことやそんな事しやっちゃってるってわけ?
怪しい雰囲気の姉妹+1だとは思ってたけどまさかそこまでとは。
「……そうか」
「ん?なにかな、なにかなー?今の間は。もしかしてテラスちゃんも月依達の方に混ざりたかったの?」
「そ、そんなわけなかろうがっ!そもそも私は皇帝だぞっ!そんな破廉恥なことできるかっ」
……。
どうやら私の想像は当たっちゃってるらしい。
そうかー……しっぽりやっちゃってるのかー……。
明日、月依に会ったら、『昨晩はお楽しみでしたね』って言ってやろう。
どんな反応を返してくるか楽しみだ。
「それじゃ、奏さんと刹那さんのタカマガハラ観光始めるよー」
「おー」
アカリの元気な音頭に桜花が楽しそうに声を合わせる。
しかし、この二人も何が楽しいんだか……。
「はぁ……お前らも良い具合にダシに使われたな」
そうテラスちゃんは私と刹那に呟いてくる。
「どういうことだ?」
ダシに使われたってどういうこっちゃ。
「あいつ等は他人の事をダシにして遊ぶのが何より好きなんだよ」
なるほどね……。
確かにアカリはそんなトコあったけど、桜花もそういう子なのね。
納得。
結局その日はタカマガハラ観光とは名ばかりで。
アカリと桜花が行きたい所……ゲーセンみたいなとこの中を巡って私と刹那とテラスちゃんは手を焼かされることになった。
まったくもう。
陽花が普段はこの二人に手を焼かされてるんだろうなぁ……。
そしてきっと陽花も明日この二人に会ったらこう言われるに違いない。
『昨晩はお盛んでしたね』と。




