私、異世界の揉め事に巻き込まれちゃいました。その8
私達がコンロンの宮殿に不時着した後。
クリュウから停戦和睦の申し出があったらしい。
始めは何かの罠かと疑っていたらしいが、その申し出はすぐに受け入れられ、クリュウの島は何処へ去って行ったそうだ。
そんな話を聞いたのは私達が地下牢から出された後の話だ。
どうして私達が地下牢に入れられたかというと。
クリュウに寝返ってコンロンに殴り込みに来たのかと疑われていたからだ。
……はぁ……。
ほんと、慣れない感傷に浸っていたからこんなことになってしまった。
やれやれだ。
もう二度とこんな過ちは繰り返すまい、うん。
地下牢に入れられてから、私と陽花はアカリや桜花にボロクソに文句を言われてしまった。
しかし月依に言わせれば、
「こんなのお姉ちゃんに付き合ってればいつものことじゃないの」
だそうだ。
あんた達、いったいどんな生活してるんだ、まったく……。
それでも言い足りないのかアカリと桜花はギャーギャーと五月蠅かったわけだけど。
なんて言うか、こんな事態に巻き込んでしまった公主さんにはちょっと申し訳なくなってしまった。
本当にごめんなさい、公主さん。そう念入りに謝るしかない私と陽花だった。
一夜明け。
私達は無事地下牢からだされると、元始天尊様と謁見をした。
「此度の働き、真にありがたく思うぞ」
「いえいえ……こちらこそすいません。宮殿の一部に穴をあけてしまって」
月依がそう言うのを聞きながらチラリと天井を見ると真っ青に染まった空が見える。
……あー……ここも穴開けちゃってたかー……。
はぁ……。
この応接室を謁見の場にしたのも元始天尊様なりのちょっとしたイヤミなのかもしれない。
「まぁ若い時には失敗も有ろうて……」
「……本当にすいませんでしたっ」
私と陽花は声を揃えて平謝りするしかないのだった。
「ともあれ、リュウグウの動力源の件、引き受けることとしよう」
「はい。ありがとうございますっ」
「リュウグウの動力源となる宝貝は完成次第、タカマガハラにおくる事にする」
「はい、お願いします」
はー……やれやれ。
これで三日ぶりに自室に帰れる。
そんな訳で元始天尊様との謁見を終えた後、転移門まで公主さんは見送りに来てくれた。
「月依様、陽花様、奏様、刹那様、アカリ様、桜花様……。今回の件……、本当にありがとうございました……」
「いえいえ、こちらこそ。公主さんには変な疑いがかかっちゃって申し訳ないです」
「ふふふ……。二度と無いような経験が出来て、楽しかったですよ……」
「そう思ってくださるなら良かったです……」
言いながら陽花は苦笑いしながら頬を掻く。
「奏様……」
「はい?」
公主さんに不意に呼びかけられ変な声が出た。
やっぱり様付けで呼ばれるのは慣れない、うん。
「貴方様のお力はきっともっと強大なもののように思えます……」
「はぁ……。ですかねぇ……」
この描いたものを実体化させる能力が?
しかも使ったらお腹がへるようなポンコツ能力なのに?
うーん……とてもじゃないけどそうは思えないんだけどなぁ……。
「今はまだ、眠っている力があるように感じます……。ですからご自分の力を過小評価されぬよう……」
「はぁ……ちょっと実感わきませんけど、心にとめときます」
「はい……。それでは皆様、また、会う日まで」
「ありがとうございました公主さん」
口々にお礼を述べて、公主さんと別れを告げる。
―――
そしてタカマガハラに着いてさぁ家に帰ろうかといったところで私達六人は衛兵に皇照宮へと連行されてしまった。
……えっと……またなの?またなんですかーーー!!
アカリや桜花に口々にブーブー文句を言われながら私達は皇照宮にやって来た。
で、応接室に入るなり、ブスッとした顔のテラスちゃんが椅子に座っているのが見えた。
「……よく帰ったな、お前達」
「あ、あははは……ただいまー……テラスちゃん。飴ちゃん食べる?」
そう言って明らかに飴で餌付けしようとする陽花。
「いらぬわっ!だいたいそれはこの部屋に常備されておる!」
……どんだけその黒砂糖飴気に入っとんねん、テラスちゃん。
「それはそうと、お前達、コンロンの宮殿を破壊したそうだな……」
「はい……すいません……」
「おかげでこっちは元始のジジイに平謝りしまくったぞ」
「本当にすいませんでした……」
破壊した元凶の私と陽花はテラスちゃんにひたすら謝るしかなかった。
「まぁ通天教主のオヤジがとりもってくれたから良かったようなもんだがな」
「え゛……通天教主様が?」
思ってもみない名前に私と陽花の声がハモる。
「ああ……。なんかしらんが、えらく気に入られたもんだな、陽花に奏よ」
「はぁ……」
「さいですか……」
そっかー……気に入られてたのか……。
陽花はともかく、私もなのはなんでだろう。
やっぱ公主さんと同じで私の能力が気になったんだろうか。
でも陽花と違って、こんなポンコツ能力なのになー……。
「それにしても……そのなんだ……。遂に殺ってしまったのか、陽花よ……」
「私はそんな教え子に育てた覚えはないのに……」
なんだか哀れんだような目を向けるテラスちゃんと、よよよと崩れ落ちるキクリ先生。
「いやいや!殺してませんから!それにさっき通天教主様が仲介してくれたって言ったじゃないですか!!」
「はっはっは。まぁ言ってみたかっただけだ。気にするな」
「私もちょっとからかってみたかっただけですよ。陽花ちゃん」
「ほんと、それ洒落になってないですからね、もう」
皆の笑いに包まれながら、陽花は頬を膨らませる。
「……しかしそのうち本当に誰かを殺ってしまいそうだがな……」
「……ですね……」
そうテラスちゃん達が小さく呟くのを私は聞き逃さなかった。
テラスちゃん達もあの陽花の暴発カムイは身に染みているらしい。
まぁ……あれは実際に体験してないと実感わかないよね……ホント。
暢気に笑ってるアカリや桜花は今の陽花の『恐怖の殺戮少女』ぶりを体験したことが無いのかもしれない。
知らないって幸せだね……。
……本当に。




