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私、異世界の揉め事に巻き込まれちゃいました。その7

クリュウの島を飛び出してしばらくして。



「あ、やっぱり月依(つくよ)達だった。おかえりー」



アカリと桜花(おうか)が二人で疾空迅風(しっぷうじんか)を使いながら公主さんと共に岩竜(がんりゅう)の背にやって来た。



「うん。ただいま。よく分かったね、私達だって」

「だって翼の生えた岩竜(がんりゅう)なんてこの世界には居ないもの。だから奏さんだってすぐわかったよ」

「流石、アカリだね」

「で、ギフトは無事回収できたの?」

「うん。ついでに通天教主さんも倒してきたよ」

「え゛……。なにそれ詳しく!!」

「それはもういつものお姉ちゃんの暴発カムイでザックリと」

()っちゃったの?」

「殺してないからね!体中血まみれにしただけだから!」



アカリの言葉を即座に陽花(ひはな)は否定する。



「いや、それでも十分だし……」



言いながらアカリは何か物思いにふけるように呟く。



「はぁ……冗談で名付けた『恐怖の殺戮少女』だったけど。……遂に本物になっちゃったかー……」

「なんかすごい失礼なこと言ってませんかね、アカリさん?」

「いやいや、そんなことないよー、陽花(ひはな)さん」

「あははは。でも今日のお姉ちゃんの暴発ぶりも凄かったよ。奏さんが貰ってた宝貝(ぱおぺい)なかったらこっちも危なかったもん」

「そうなんだ。それはありがとね、奏」

「ん……それは私じゃなくて元始天尊様に言っといてよ。これ元始天尊様に貰ったものだし」



言いながら掃霞衣(そうかい)を振り振り陽花(ひはな)に見せる。



「あー!!良いなぁ……。私も宝貝(ぱおぺい)欲しいなぁ……」

「アカリは良いでしょ別に。それにアカリが宝貝(ぱおぺい)なんかもったら私の日常が大変だよ……」



そう言って今度は陽花(ひはな)が物思いにふけったような重いため息をつく。



「む……それはどういう意味かなぁ?陽花(ひはな)さん?」

「言葉通りの意味だよ、アカリさん」



陽花(ひはな)は言葉にしながらフフンと微笑む

仲いいなぁホントに。

この二人の学園生活は毎日がこんな調子なんだろうな。

こんなに親しい友人もいなかった私にはちょっと眩しい光景に思えた。



「うん?どうしたの奏?」



私の視線に気づいたのか陽花(ひはな)が聞いてくる。



「ううん。なんでもない。ちょっとお腹空いたなーって」

「そっか。じゃあ、はい。黒砂糖飴良かったらどうぞ」

「何でこんなもん持ってるのよ……」



言いながら陽花(ひはな)から受け取る。



「お姉ちゃん、テラスちゃんを餌付けする為にいつも持ち歩いてるんだよ」

「餌付けって……。仮にも皇帝陛下でしょ、テラスちゃんは」

「でも、その黒砂糖飴を舐めてる時のテラスちゃんってホント幸せそうな顔してるんだよ」

「へー……そうなのね。ん……確かに美味しいわね、これ。それに……」

「ほー。そんな美味いなら俺にもくれよ」

「はい、刹那さんにもお裾分け」

「どれどれ……。おお……確かに美味いなこれ」

「じゃあ、今度部屋に持っていきますよ一箱」

「何でそんなに持ってんのよ……」

「だってこれ日本製ですから。通販して取り寄せてるんです」



なるほど……。

そういうことか。

だからどこか懐かしい味がしたのか……。

私が口の中で飴を転がす姿を見ながら陽花(ひはな)達は微笑んでくれている。


あーあ……。

同じ日本人の仲間が。

私の為にこんなに優しくしてくれている事に。

私の為に力になってくれていることに。

ちょっと幸せを感じてしまっていた。

私は死んでも幸せにしてますなんて言ったら、日本にいる両親に怒られるだろうな……。

見上げた空はこんなにも吸い込まれるように青くて。

舐めている黒砂糖飴がちょっとほろ苦い味がしたのは……気のせいじゃないだろう。



―――


そろそろ元始天尊様の宮殿近くにさしかかった頃。



「奏さん、時間、大丈夫ですか?」



そうアカリが問うてくる。



「ん?時間?」

「そうです時間です。そろそろ効果時間切れるんじゃないですか?」



あ……そうだ。そういえばそうだった。

ちょっとらしくもない感傷に浸っててすっかり効果時間のことを忘れていた。



「……ごめん、忘れてた」

「……忘れてたって……ええええええ!」



私の回答にアカリが慌てだす。



「ん?なんでそんなにアカリは慌ててるの?」

「奏さんのこの絵を実体化させる能力は制限時間があるんだよ!月依(つくよ)は知らなかったの?」

「へ……?そうなんですか?」

「うん……」

「俺は知ってたぞ」

「刹那さんが知ってるのは知ってますよ!ていうか、だったらもっと慌ててください!」



そうこうしているうちに段々と翼の生えた岩竜(がんりゅう)の色が褪せていく。

げげ……、まずいっ、効果が切れ始めた。

早く脱出しないとっ。



「えっと陽花(ひはな)、私達全員を疾空迅風(しっぷうじんか)で地上に降ろしてっ」

「へ?でもまだ……」

「でももへちまもないの!良いから早くしてっ!!でないと皆真っ逆さまだよ!!」

「んー……そこまでいうなら。どうなっても知らないからね、奏」

「え……?それってどういうこ……とおおおおおおお」



私がそう言い終わらないうちに、陽花(ひはな)はカードを淡く緑色に輝かせ疾空迅風(しっぷうじんか)を発動していた。



「ちょ……陽花(ひはな)っ!!これどういうことおおおおお」



荒ぶる風に包まれながら私達の体は猛スピードで地上を目指す。



「だって、まだあれから一時間経ってないないもん、奏……」

「それを早く言いなさいよおおおおおおお!!!」

「はぁ……。アカリ、桜花(おうか)さん。地上に激突する前にこのスピードを相殺するよ」

「はいはい、何か陽花(ひはな)がいつも通りの陽花(ひはな)でちょっと安心したよ」

「ほんとほんと」



そう口々に告げながら月依(つくよ)とアカリと桜花(おうか)はカードに力を込める。

そしてコンロンの宮殿に突っ込みながらも、なんとか無事(?)着地することに成功するのだった。

着地した衝撃で元始天尊様の宮殿の一部が半壊したけれど。

まぁ結果オーライ……かな。

アハハハ……。

……絶対後でテラスちゃんに怒られるやつだ、これ。


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