表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/68

私、異世界の揉め事に巻き込まれちゃいました。その6

「あのー……できればそれ、使ってほしくないんですけど」



陽花(ひはな)はおどおどとそう懇願する。

うん。

私も使ってほしくない。

そんな物騒なもん絶対に使ってほしくない。



「使いたければ使ってもらって結構ですよ、通天教主さん」



月依(つくよ)は、のほほんとした声でそんなことを言いはなつ。



「ハハハハハ……まだ貴様の姉の様に懇願すれば見逃してやったものの……。余程死にたいらしいな月依(つくよ)よ!!」

「いや、別に死にたいわけじゃないんですけどね……。まぁ試しに使ってみてくださいよ?」

「強がりを言いおって!良かろう。まずは貴様から冥途に送ってやろうぞ!!」



そう言って通天教主は旗に何か文字を書き込む。

そして。



「我が宝貝(ぱおぺい)の呪いを食らうが良い!!宝貝(ぱおぺい)六魂幡(りくこんはん)!!」



通天教主の言葉と共に旗が翻り怪しく光りだす。

すると。



「ぎゃー……、やーらーれーたー……」



と言って、月依(つくよ)がわざとらしく倒れ込んだ。



「……」

「……」

「なにやってんだよ、このアホっ」



そんな月依(つくよ)に、刹那がおもいっきり脳天に蹴りを入れる。



「いったーーーー!!何すんの、刹那さん!!」

「いやだってよ……。あんまりにもわざとらしすぎんだろ、おまえ」

「えへへへ……そうかな♪」



そう言って舌を出して笑う月依(つくよ)



「な、何故だ!何故、六魂幡(りくこんはん)が効かぬのだ!」



明らかに狼狽えている通天教主。

まぁそうですよね……。

必殺の宝貝(ぱおぺい)が通用しなかったら動揺もしますよね。

まぁとりあえず、月依(つくよ)が呪い殺されなかったことに、私と陽花(ひはな)は顔を見合わせて安堵した。



「どうしてか教えてあげましょうか?つ・う・て・ん・き・ょ・う・し・ゅ、様?」



月依(つくよ)は意地の悪そうな顔をしてフフリとほくそ笑む。

そして。



「だって私達、異世界人ですから!この世界の文字では決して呪い殺されたりなんかしないんですよ!」



背景に強調線が入りそうな勢いで月依(つくよ)はふんぞり返る。

あ……そうか……納得。

だから六魂幡(りくこんはん)は平気だって言ってたのか。

陽花(ひはな)も私と顔を見合わせて、納得したという表情を見せている。



「な……なんだと……。き、貴様ら、異世界の民だったのか……!!」



テンプレ的な悔し気な口調でそう告げる通天教主。

そういやこのクリュウに入ってから私達が異世界の住人だって一言もいってなかったや。



「途中で二手に分かれたのはそういう事か……!」

「そうです。アカリや公主さんには六魂幡(りくこんはん)、効いちゃいますからね。途中で帰ってもらったって訳です」

「お、おのれ……っ」

「必殺の宝貝(ぱおぺい)が通じなくて残念でしたね、通天教主さん♪さぁどうしますか?まだ続けます?」

「く……」

「このまま続けてもまたお姉ちゃんの暴発カムイの餌食になるだけですよ」

「クソ……分かった……。このギフト……回収することを認めよう……」



忌々し気にそう口にする通天教主なのであった。

なんかちょっと小娘にいぢられるボロボロのおじさんの姿を見て可哀そうになってきた。



「それじゃ刹那さん。回収しちゃってください」

「あいよ。すまねーな通天教主のおっさん。これは返してもらうぜ」



そう言うと刹那はギフト……小岩に近づき手を添える。

するとギフトは塵となって刹那の中に溶け消えた。



「回収するとはそういう意味だったのか……」

「ああ。そういうこった。俺は天の使い『(とき)の番人』なんだ。それでギフトはそこのアホ奏のせいで散らばった俺の欠片だ。んで、それを一年以内に回収しなけりゃ世界が滅ぶ」

「そうか……ならばお前に返すの筋であったな……悪かった」

「分かってくれれば良いって事よ、なあ月依(つくよ)

「はい。それでもう一つお願いがあるんですけど、良いですか?通天教主さん」

「……分かっておる。兵はコンロンから引かせる。戦場で陽花(ひはな)のようなカムイを使われたらこちらは大損害だ」

「ありがとうございます、通天教主さん」



月依(つくよ)はそう言うと満面の笑みを浮かべるのだった。

はぁ……なんていうか。

月依(つくよ)は絶対に敵に回したくない相手だと確信させられたひとときだった。


月依(つくよ)はまず自分で通天教主の力量を図ってそれで、その後暴発カムイの姉をけしかけたんだろうな。

でなけりゃ大好きな姉をわざわざ敵地に送りだすなんてしやしないだろう、コイツの性格的に。

あーまったく……怖い怖い。



「それじゃ、奏さん。もう一芸、通天教主さんに見せてあげてください」

「何?まさかまた翼の生えた岩竜(がんりゅう)出せって言うの?」

「はい。そのまさかです。お願いできますよね」



月依(つくよ)はそうニコニコと私に笑いかけてくる。

その笑み止めてよ。

逆に怖いのよ、あんたの場合!

はぁ……。

これやるとお腹減るのになぁ……。



「しょうがないわね……」



そう言って私はネタ帳から翼の生えた岩竜(がんりゅう)を召喚する。



「何と……。翼の生えた岩竜(がんりゅう)だと……。どういうカムイなのだ、それは」



その光景を見て通天教主は何故か愕然としていた。



「これが奏さんだけの力なんです。カムイとかじゃないんですよ」

「フム……そうか……お前達が異世界の民というのは真のようだ」

「だから言ったじゃないですか。異世界人だって」



言いながら私達は岩竜の背に乗り込んだ。



「それじゃ、また会う事があったらお手柔らかにお願いしますね、通天教主さん」

「ああ……その時は力になることもあろう……。さらばだ異世界の者たちよ」



そして私達は霧に包まれたクリュウの島を岩竜(がんりゅう)で飛び出したのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ