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私、異世界漫遊始めちゃいました。その6

皇照宮(こうしょうきゅう)の応接室で待つこと十数分。

テラスちゃんがキクリ先生を伴って部屋へと入ってくる。

心なしか二人共日焼けをしているような。



「あのー……ちょっと聞いても良いですか?」

「なんだ?」

「何でお二人は日焼けなんてしているんでしょうか……」

「それは、あれだ……柚木(ゆずき)の手伝いをさせられたのだ……」



ユズキの手伝いって……もしかして即売会?



「毎年この時期になると日本に行って売り子のお手伝いしてるんですよ」



そう言ってキクリ先生は微笑む。

あー……あの顔はお目当ての本をゲットできてほくほくの顔だ。

間違いない。



「私達が世界の為に苦労してる中、お気楽ですね……」

「そうひがむではない。こっちだって今回はあまり気乗りしなかったのだ」

「あーあ。私も行きたかったなー……」

「おまえ、柚木(ゆずき)に欲しい本は頼んでおったのだろう。それぐらいの情報は得ておるぞ」

「チ……ユズキめ……」

「まぁそれはともかくホウライの件、お疲れ様でした」



言いながらキクリ先生は何か書かれた資料を私達の前に置く。



「とりあえず、もうホウライとは付き合わんことにした。あんな不届きな態度をとるような奴は好かぬ」

「え゛……いいんですか?本当に?」

「ああ。別に構わぬよ。ホウライなぞ、このタカマガハラに比べたら小国にすぎぬからな」



さいですか。

まぁいいけどさ。



「で、次の回収先なんですけど、コンロンにしてもらおうかと思ってます」

「コンロン……ですか」

「まぁコンロンの元始天尊のじじいは人格者だから今回のような事にはならんと思う」

「それはいいんだけどよ、このペースで一年以内に集まんのか聞きてえんだが」



今まで黙っていた刹那が急に(やから)口調で話し始めたものだからテラスちゃんとキクリ先生は顔を見合わせる。



「あー……どうもホウライのギフト回収したらこんな性格になっちゃっただけなんで気にしないでください」

「いや、気にするなって言われても……なぁ……」

「まぁそうですね……そこは刹那さんの言われる通りです。今まで友好国を一日として算出してましたけど行けるところは一日二つくらいのペースで進まないと不味いかもしれませんね」

「……やっぱりそうなりますよね」

「とりあえず今日はこれからコンロンに向かってもらって余裕があればセイテンに向かってください」



一日二個回収かぁ……。

なんか忙しい毎日になりそうだなぁ……。

そう思わずにはいられなかった。


―――


「で、ここがコンロン?」

「そうみたいですね」



転移門をくぐると辺り一面山だらけの光景が広がっていた。



「今日はあと一か所残ってるんだしさっさとすましちまおうぜ」

「うん。えっと……元始天尊様が居る宮殿はあっちだね」



宮殿に向かいながら街を観察していたけれどタカマガハラやホウライとは違って古い中国の田舎街って感じの街並みだ。

同じ異世界でも国ごとにこんなに違うんだなぁ。

宮殿に辿り着き応接室に通されてしばらくするとかなり歳をくったお爺さんがやって来た。

この人が元始天尊様らしい。

同じお爺さんでも天の神様とは全然雰囲気が違うなぁ。

まぁあのクソジジイがクソ過ぎるんだけども。



「話はテラス陛下より聞いておる。このコンロンにあるギフト、回収していってくだされ」

「ありがとうございます」

「ギフトはこの宮殿の庭にある。ついてくるがよい」



そう言って歩を進める元始天尊様の後に続く。

そして。



「これが、このコンロンのギフトじゃ」



元始天尊様が指さしたのは岩……というかちょっとした小山くらいあるものだった。

こ……これはまた刹那の性格変わっちゃう系なんではと心の底でハラハラする。

ま、まぁ心配してもしょうがないしちゃっちゃとギフト回収してもらおう、そうしよう。



「刹那。ギフト回収しちゃって」

「おうよ」



そう言って刹那は小山に手をかざす。

すると、小山と刹那が光り始めて小山は塵となって刹那の中へと吸収されていった。



「これで、目的は達成かの?」

「はい、ありがとうございます」

「ありがとな、じいさん」



どうやら刹那の性格は今回は変わらなかったみたいだ。

ほっとしたやら、ちょっと残念の様な。



「それでは少し時間を頂いてもらってもよろしいかな」

「え、はい。すこしぐらいなら」



元始天尊様の申し出に私達は頷く。



「コンロンではの、カムイをカードによって引き出すのではなく、宝貝(ぱおぺい)という特殊な道具を使って操るのじゃ」

「へー……そうなんですね」

「例えば儂の持つ三宝玉如意(さんぽうぎょくにょい)は空中から敵を打つことができるカムイが封じられた勾玉じゃ」



……えっと……なんかちょっと物騒なんですけど、その宝貝(ぱおぺい)

それ、めっちゃ戦闘用の宝貝(ぱおぺい)ですよね。



「奏よ。聞けばお主はカムイを操る事が出来ぬそうじゃな」

「はい。絵を実体化させる能力を授かったくらいです」

「じゃからお主にこれからの旅の為に、この掃霞衣(そうかい)を授けようと思う。掃霞衣(そうかい)は刀剣や攻撃用宝貝から身を守るカムイが込められた衣じゃ」



そう言って元始天尊様は私に薄い布みたいなものを手渡してくれた。



「え……いいんですか、そんなものもらっちゃって」

「これからどんな危険があるともわからぬであろう。世界を救うためには必要になろうて」

「ありがとうございますっ!」

「この掃霞衣(そうかい)は自分の意のままに伸縮自在に身を守る事が出来る。試しにやってみるがよい」

「えっと……こう、かな」



持ってる布に自分を包み込むようなイメージを伝えると体全体を覆うように布が広がって行く。

すごいすごい。

うわー……すごい良いものもらっちゃった。

さすが元始天尊様。

どっかのホウライの色ボケオヤジや天の神様のクソジジイとは格が違うね!


で。

元始天尊様に深々とお礼を言った後。

その日は時間的に余裕がまだまだあったのでセイテンまで行き。

セイテンのギフトも無事回収。

無事一日二個回収の目標を達成することができたのだった。

よかったよかった。

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