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私、異世界漫遊始めちゃいました。その2


「それじゃ、ちょっと刹那さんと一緒にギフト回収してくるんで、奏さんは待っててください」



そう言って月依(つくよ)は刹那を手招きする。



「は?どうやって?」

「それはカムイを使って飛んで行くに決まってるじゃないですか」

「……」



やっぱ私の絵を実体化する能力なんかより、カムイの方がよっぽど実用的な能力な気がする。

クソジジイめ……今度会ったらまた墓石で押しつぶしてやる。



「それじゃ、刹那さんしっかり捕まっていてくださいね」



月依(つくよ)の言葉にコクンと頷くと刹那は月依(つくよ)の腰に手を回す。

それを確認して、月依(つくよ)がカードを構えて何かしら念じ始めたかと思うとカードは淡い緑色の光を発し始めて二人の体は浮遊する。



「じゃ、二時間くらいで帰って来るんでー」



その言葉を残し月依(つくよ)と刹那は山の方角へ猛スピードで飛んで行ってしまった。

まじで何なのよ、カムイって。

あんなのチート以外の何物でもないじゃない。



「あの若さで、しかも異界の者が疾空迅風(しっぷうじんか)を使えるとはな……」

「それってすごいんですか?」



なんか感心した風に呟く国王陛下にそう尋ねる。



疾空迅風(しっぷうじんか)は空を飛ぶカムイの中ではかなり高位なカムイだ。そんなことも知らぬのか?」

「私、カムイ使えないんで……」

「ほう……では何故この世界におるのだ。異界の者はカムイの資質が無いとこの世界に招かれることはないはずだが」

「それはその……色々ありまして」

「それがギフトを回収するという事に繋がっているというわけか」



……なかなかするどいなこのおっさん。



「ギフトが世界中に散らばっちゃったのって私のせいらしいんですよ」

「ほほう……それは初耳だな」

「だから天の神様に回収しろって言われてこの世界に来ることになってしまったわけです」

「なかなか面白い経歴だな」

「で、その天の神様ってのがクソジジイでして私にもカムイを使えるようにしてくレれば良いのにクソの役にも立たない能力をくれたわけですよ」

「ほうほう。その役にも立たない能力とはどんな能力なのだ?」

「カムイに比べたら全然役に立ちませんよ。描いた絵を実体化させる能力なんですけどね。能力使ったらお腹すくし」

「はっはっは。それはまた面倒な能力を与えられたものだな」

「そうなんですよ。こんどあのクソジジイに会ったらぶん殴ってやるって心に決めてます」

「ふむ……とりあえず、おまえの能力この目で見てみたい。試してみてもらっても構わぬか?」

「良いですよ、減るもんじゃないんで」



お腹は思いっきり減りますけどね。

と付け加えて、私は犬の絵を描いて実体化しろと念じる。

すると絵の中の犬が飛び出してきてその辺の庭を駆けまわり始めた。



「ふむ……なかなか面白い能力ではないか」

「面白いだけですよ。実用性全くないですから」

「カムイは召喚等の使役などはできるが生あるものを作り出すことはできないのだ。しかしお前の能力はそれが出来る。それだけでも面白い能力だと思うのだがな」

「ふーん……そういうもんなんですね」



言いながら、走り回るわんこを元の絵に戻す。

そして『ぐ~っ』っと腹の虫が音を鳴らす。



「それが能力の副作用か」

「ほんと、困ったもんですよ、この能力は」

「面白いものを見せてもらった礼に何か御馳走をとらせよう。しばらく応接室で待つがよい」

「すいません。本当に」



しばらく応接室で待っているとやたら豪華な料理が次から次に運ばれてきた。

え……これ全部食べちゃって良いの?

いやー……月依(つくよ)や刹那に悪いなぁと思いつつも腹の虫の要求には勝てず箸をすすめる。

そしてお腹が満腹になった頃。

私は突如として強烈な睡魔に襲われるのだった。

まぁお腹いっぱいになったら眠くなるって言うし、しょうがないよね。



で、目が覚めたら、私は牢獄の中に居た。

何故か牢獄の中に居た。

大切な事なので二度言いました。



「え、え、……どういうこと?」



何が何やら混乱しているところにギシリギシリという音共に人がやって来る音がする。

姿を現したのは、国王陛下だった。



「あのー……これはいったいどういうことなんでしょうか?」



とりあえず、今の私の現状をたずねてみることにする。



「おまえの能力は面白いと感じた。だから、おまえを私のものにしたくなった。それだけだ」

「はぁ……ってそれってどういう意味でしょう」

「言葉通りの意味だ。お前の能力、これはこの国の未来に必要なものだ」

「……それって私、実験動物扱いなんでしょうか?」

「はっはっは。さすがにそうとまでは言わないが。お前が望むなら私の妃にしてやらんでもないぞ」



……ああ、サクヤが『気を付けてください』って言ってたのはこのことか。

この色ボケおやじめ。



「サクヤを知っているのか。あれは惜しい事をした。妻になれば可愛がってやったものを」

「誰があんたみたいなクソオヤジに可愛がってもらいたがるもんですか」



そう言って私はあっかんべーをしてやる。



「くっくっく。まぁこれからお前の能力をたっぷりと研究させてもらうことにしよう」



ほくそ笑みながら国王もといクソオヤジは元来た道を引き返していった。



「はー……まずったなぁ……。まさかこんなことになるとは」



ホウライとタカマガハラは友好国じゃなかったんかい!

いきなりとっ捕まってしまってるんですがっ!!

これからどうしようというよりも先に、身に降りかかった災難に頭を抱える私だった。


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